表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
70/248

閑話 上司

よぉ~。お前達、元気にしているか?

俺は元気だ!特に異世界に来てから更に気分が良いな。

おっと、俺の事は、もう知っていると思うが改めて自己紹介だ。

ラド・バベルと言う。

偽名だと思っているか?ハッハッハッ、勿論、偽名だ。

まぁ、いくつも名前があるが細かい事は気にするな。

男なら隠し事の一つや二つ持っている方がミステリアスで

女性にモテるぞ?


細かい事で思い出したんだが俺の部下で非常に繊細な奴が

居てな~。仕事が終わってから元気が無いんだよ。

んっ?仕事の内容か?ハハハッ!簡単な仕事だ。

何人かブチ殺して人妻と子供を攫って来いって言う仕事だな。

それはハードだって?そんな事は無い。

俺達の世界なら日常茶飯事だ。このぐらい出来て貰わないと困る。

ただ、まぁ、自分の部下が悩んでいるなら手助けするのも

上司の努めだ。


俺の優秀な部下で長い付き合いのボスから聞いた話だと、

初めての殺しで動揺しているらしいな。

ふむ…確かに何事も初体験と言うのは緊張するし動揺もするな。

しっかし、剣と魔法のファンタジーで俺達の世界より

命が軽いのに随分とウブな奴だ。

仕方ない。励ましてやるか。


バベル「よう!初体験は、どうだった?」


………メッチャ睨んでくるな…。

掴みを間違えたか?上司として此処まで部下に睨まれると

若干凹むぞ。


ガル 「何だよ?」


何だよって…部下が凹んでいるから励ましに来ただけなんだが。

そんな親の敵の様な眼で睨むなよ。


バベル「隣座って良いか?」


ガル 「……」


うむ。無言だったが肯定と見て座るか。

さてさて、どうしたもんか。女とかの悩みや仕事の

悩みなら何とかなるんだが…。

初めての殺しで凹んでる奴は、どうしたもんかな。

殺しなんて、よくある事だぜ!って言って励ますか?

……いや、無いな。マジで殴られそうだし、

そもそも殺しが頻繁にあるのも不味い事だしな。


頭をフル回転させながら何とか上司の尊厳を守ろうと

考えながら煙草に火を着ける。

フーーっと口から白い煙が吐き出される。

そして無言が続く。


いかん!この状況って結構キツイな!

そもそも殺しに関する事って俺よりボス達の方が

適任じゃなかろうか?

と言っても今更か。


ガル 「バベルは…」


最初に無言を破ったのはガルだった。


バベル「ん?」


ガル 「バベルはさ…同族を……人を殺した事、あるよな?」


あるよな?って普通こーゆう場合は、あるのか?って言う聞き方しないか?

何で、もう殺した前提で質問してるんだ?この犬っころ。

ま、まぁ、今は細かい事は良いか。


バベル「まぁ、こんな仕事をしてるんだ。当然有るぞ」


ガル 「…初めて殺した時って…どんな気分だった?」


バベル「特に何も感じなかったな」


ガル 「バベルなら、そうだよな…」


何だ?俺はディスられてんのか?確かに殺人を犯して何も

感じないと言うのは由々しき自体だが。

つーか、ガルはスラム育ちだろ?足元に死体が

転がって殺しなんて当たり前の世界で良く今まで生きて

来れたものだな。


バベル「そもそも、相手が殺す気なら殺されるのも

    覚悟の上だろう?」


個人の見解だが俺は、そう思っている。

相手の人生を奪うのに自分の人生が奪われるのは嫌なんて

甘っちょろい考えは反吐が出る。

だが、残念な事に、こー言った人間が多いのも事実だがな。


ガル 「バベルも覚悟してるのか?」


バベル「当たり前だ。俺だけじゃない、ボスもガストラも京香も

    覚悟している。まぁ、碌な死に方をしないだろうな」


ケラケラと笑いながら煙草を吸い込む。


バベル「大体な、ガルは初めての殺しって思ってるが

    残念ながら初めてじゃないぞ」


ガル 「えっ!?」


バベル「食う為に動物を殺すだろ?道端にいる小さな虫も

    踏み殺しているかも知れないし魔物だって害が有れば

    殺してるだろう。

    獣人や人間と一緒にするなと思うかもしれんが、

    命は命だ。

    殺しを肯定する気なんてサラサラ無いが、

    生きる為には殺さなきゃいけない時も有る」


何度も言うが殺しを肯定する気は無いし無益な殺しはハッキリ

言って害でしかない。

だが、生きる為の殺しは別だ。

誰だって死にたくは無い。勿論、死ぬ覚悟が有るからといって

死ぬなんて真っ平御免だ。

殺されるぐらいなら殺す。至極、当然だ。

もしも、殺すぐらいなら死ぬなんて奴が居るなら

見てみたいもんだね。俺は見た事も無いがな。


バベル「お前が、やった事は生きる為の殺しだ。

    そこに善も悪も無い」


ガル 「…生きる…為か」


バベル「あぁ、生きる為だ。お前が死んだら悲しむ奴だって

    いるだろう?

    当然、殺された相手も悲しむ者がいるかもしれないが、

    仕方ない事だ。そこは割り切れ」


ガル 「ハハッ…何か雑だな」


バベル「俺は神様じゃないからな。答えなんて解らん」


ガル 「そっか…そうだよな、俺が居る世界は堅気の世界じゃ

    無いもんな。自業自得って言ったら、それまでだけど…

    生きる為か。…ちょっと気が楽になった」


はぁ~、疲れた。やっと良くなって来やがったか。

全く変な所が純粋な奴だ。

人身売買は平気で殺しが駄目とか意味が解らん。

まぁ、異世界ならではの価値観の違いと言う事にするか。


バベル「全く世話の焼ける部下だ。

    そして俺は、そんな部下を見捨てず励ますなんて

    素晴らしい上司だろ?」


ガル 「はっ!何処がだよ!ズレまくった価値観で励まされても

    嬉しくも何とも無ぇよ!!休まず働かせやがって!

    最低な上司だな!」


ハッハッ、最低な上司だとよ。全く学習しない部下だ。

あれ程、顔に出すと読まれるって言ったのにな。


クックッ。…笑ってるぜ?顔がよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ