バベルの世界「異変」
使役している魔物の名付けと役割が終わり
今日は、アテゴレ地区に来ている。
目的は買い物。
大分、大所帯になって来たからな。
色々と武器や防具など揃える為だ。
前に京香が閻魔に鍛造の短刀を渡し、
山王には、刃が鍛造製の鎖鎌なんて
見た事も聞いた事も無い武器を渡していたんだが、
流石に全員には渡す事は出来ない為に
緊急措置として武器屋で揃えるそうだ。
京香的には、後々全員に自分の国の刃物を
渡すつもりらしい。
何で、そこまで?と思ったが
鬼には京香の故郷の刃物が
一番似合うと言っていた。
その言葉を聞いた閻魔や他のゴブリン達は、
我が主は偉大なり!!!と言ってぜ。
なんやかんやで店を物色しているんだが、
何かアテゴレ地区の様子が変だ。
特に獣人の態度。
「チワッス!!」
「チワッーース!!」
「コンチャッス!!!」
名も知らぬゴロツキ共が、バベル達を
見かけると全員頭を下げて挨拶して来るのだ。
それだけでは無い。露天商や屋台の親父、
娼婦まで声を掛けてくるし
奴隷として働かされている人間までもが
頭を下げて挨拶して来る。
ボス達は手の平を返した様な変わり様に苦笑い
していたが、バベルだけは軽いノリで
挨拶や会話を楽しんでいた。
まぁ、住人の態度は解らなくも無いがな。
「ガルくぅん~、何かぁ皆ぁ変じゃないぃ?」
「あ?あぁ、住人達の態度か?そりぁ、あんだけの事
しでかしたんだから当然だろ。全員、恐怖と尊敬で
胸が一杯なんだろうよ」
「う~ん?恐怖は解るけど何で尊敬すんのー?」
「ほら、前にコラトス達って居ただろ?アイツ除隊に
なったんだよ。他の部下共々な。
アイツ等、何かと難癖付けて金巻き上げてたから
相当、煙たがられてたからさ」
「あー!それでかー!!」
パンッと両手を叩き満足そうに笑う京香。
「それだけじゃねぇぜ、最近、騎士共と
殺り合ったろ?
それが一番の理由じゃねぇかな」
ガルの話によると、元々大国の騎士達と
アテゴレの住人達は対立関係らしいのだ。
リヒト団長や他の隊長は別だが、
その他の騎士連中はスラムの住人達に対し、
威圧的で、ただでさえ貧乏なのに
国から法外な税金を徴収され、
貴族と言う身分を使用し、かなり横暴な
事をしていたらしい。
だから、その貴族の象徴とも言える騎士達に
勝ったバベル達は自分達のウサを晴らしてくれて
騎士に喧嘩を売った英雄みたいな事に
なっていると説明してくれた。
「良い事したんすね」
「何だか恥ずかしいわねー」
「だねぇ」
アハハと恥ずかしながら笑っている
ボス達に青空の下で酒盛りをしている獣人の
男達が話掛けてきた。
獣人達の後ろには人間の奴隷が3人程見える。
「よう!あんたら騎士に喧嘩売って、コーネルの馬鹿
ぶっ殺した人間達だろ?
いやぁー!あんたらのお陰でスッキリしたぜ!!
最初は、人間なんて大した事ねぇと思ってたんだが、
あんた等は違う!!
おっかねぇし、つえーし、馬鹿やるしで最高だ!
知ってるか!?コーネルはな、国の税金以上に
ショバ代要求してたんだぜ!!
それを、あんた等が潰してくれてよ。人間のボスが
支配するようになってからショバ代免除だぜ!!
一杯奢らせてくれや!!がははは!!」
何とまぁ、酔っ払ってベロベロに
なってるのに、よく此処まで口が
回るもんだ。
でもボス達も満更でもなさそうでスラムの糞マズイ
酒を一気に飲み干しているな。
飲みきって「マズイ!!」と言ってるのは
ご愛嬌かな。
ハハッと苦笑いをしていると奴隷の人間達が
俺に頭を下げて来た。
「あの御方達のお陰で御主人様は最近、
機嫌が良いんです。
場所代が無くなって余裕が出たのか
食事もしっかり頂いています。
本当に有難う御座います」
「お、おう!」
人間に礼なんて言われるとは思わなかったぜ。
……悪くないな。
さて、酔っ払った親父に手頃の武器屋は
無いかとバベルが聞いたら
「儂の店に来い!」と言って来た。
この酔っ払い、武器屋の店主だった。
仕事サボって酒盛りとかスラムらしいけどよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おう!良く来たな!此処は知る人ぞ知る武器屋
【ゴッド・ハンド】だ!俺は、此処の店主をしてる
ダリルって者だ!!宜しくな!ガハハッ」
スラムの武器屋だから大した事無いと
思っていたが中々造りも
立派だし品揃えも豊富だ。
と言っても武器の半分ぐらいが
中古品でボロボロだが。
それにアテゴレ地区にだって
冒険者ギルドがあるんだから
武器屋が無いと駄目だもんな。
「おう!好きな物選んでくれや!」
そー言われ各々店内を物色する。
此処は武器以外にも
防具や怪しげな道具、色が変な液体、
薬草、等などが売ってる。
武器屋っーより何でも屋みたいだ。
まっ!良い機会だから俺も何か買おうっと!
京香は、刃物系の武器が
置いてある所で物色している。
ロングソード、アイアンダガー、
短剣、バトルアックスなど
品揃えは良いのだが、如何せんボロボロだ。
一時凌ぎとは言えゴブリン達の命を
預ける武器なので京香は真剣に
見定めている。
「う~ん、これは鉄が悪いしなぁ…これも駄目…
およよ?」
乱雑に置かれ埃を被っている一本の
刃物に眼がいった。
切先から刀身の半ばほどまでが両刃で
刃長は、60cm程。
刀身は緩やかで浅い反りが入っている。
柄もしっかりとしてるし滑り防止で
ザラザラとした皮で仕上げてある。
錆びてはいるが文句無しの業物だ。
「これ…鋒両刃造?鋼もしっかりしてるし…。
完全に日本刀の造りよね。んん~?
ねぇー!おっちゃん!これ、どうしたのー?」
「あーん!?…あぁ、それか!いやぁ、実の所
俺も良く解らねぇんだよ。俺の親父の親父が
手に入れた品なんだがな~」
ポリポリと頭を掻きながら答える。
京香とダリルが喋ってる所にバベル達も加わり
その刀剣を見て眉間にシワを寄せる。
「おい、これ鋒両刃造だろ?確か小烏丸作りとも
言うよな?何で、こんな物があんだ?」
「解んない。大分、昔に手に入れたって
言ってるけど…」
バベル達が訝しげな表情を見せている中
ダリルが口を開く。
「それが欲しいなら金貨2枚で良いぞ?
実際、珍しい形だが扱いが難しくて全然買い手が
つかねぇんだよ。それに何の鉄使ってるかも解んねぇし、
刀身も細いから人気が無いんだが…。どうする?」
「買う!!絶対買う!!!」
あまりの気迫にダリルも苦笑いするが
買い手が無い品が売れて
満更でも無い顔をしている。
「これは、他にも掘り出し物があるかもしれんな」
「本気でぇ探すわぁ!」
「自分も!!」
「よ、よし!俺も!!」
最後のガルは完全に流れで言ったが皆、
真剣に探す事になり
結局、色々な品を手に入れた。
その品をアジトに持ち帰ると、
ノルウェが近寄って来て
見てやろうか?と言って来た。
何とノルウェは【鑑定の瞳】と言う
希少スキルを持っていたのだ。
バベルは聞いた瞬間、天を仰いでノルウェ連れて
行けば良かった!!と嘆いていた。
ノルウェなんか入れたらパニックだっーの!!
そして鑑定が始まった。




