バベルの世界「決着」
セリフの前に名前を入れてみました。
テスト的な感じですので後々、名前は消す予定です。
読みづらいかもしれませんしねヽ(*´∀`)ノ
ヴォン!と風を切る音がアテゴレ地区に響く。
そこでは、バベル達と騎士達の一騎打ちが行われていた。
「だーーーっ!!クッソ!ちょこまか逃げんな!」
大斧が幾度と無く空を切る事にイラついたのか、言葉に怒気が混じる。
その一方で、ガストラは涼しい顔をしながらウィンザーの攻撃を
避けながら間合いを空けたり詰めたりしている。まるで楽しんで
いるかのように。
「なぁ、さっきのスーパーなんちゃらって何だ?」
「スーパーコンセントレイションな。簡単に言えば
異常なまでに集中する事だ。」
「?…それが、あると攻撃が当たんねぇのか?」
「らしいな。ガストラ曰く、相手の動きや周りがスゲーゆっくりに
見えるらしいぞ。
そうだな…例えば、何かに夢中になってる時や好きな事を
している時は時間がアッと言う間に過ぎる事って無いか?」
「……ある」
「だろ。それは物事に集中しているから起きる現象だ。
だが、ガストラの場合は逆。時間の流れが遅く感じてしまう。
もっと楽しみたい!もっとスリルを味わっていたい!
それが極限にまで達した異常な集中で脳が誤作動を起こしてるんだよ。
一種のトランス状態とも言うがな」
スゲェな!そんな事あんのかよ!スリルは味わいたくねぇけど、
楽しい事が長く続くって最高じゃん!
「それ良いな!俺も努力すれば出来っかな!?」
「無理だな。ガストラはな、スナイパー……狙撃手って職種
で長距離から相手を一撃で仕留める兵士なんだ。
狙撃手って仕事は相当過酷で相手を仕留める為に何時間、
下手したら何日も同じ姿勢で集中力を切らさないように
殺す瞬間を見極めなければいけない。
一流の狙撃手の中で希にガストラみたいな奴がいるが、
かなり特殊だな。ガルに同じ事出来るか?」
「…出来ない」
「それが普通だ。狙撃手ってのは体力と精神力を磨り減らし、
尚且つ磨り減らした精神で相手を殺すんだ。
並の人間じゃなれねぇ。それに加えて破壊工作や
爆弾制作までやってのけるんだ。
どうだ?ガストラの優秀さが解ったろ?」
スゲェ…ガストラって普段、温厚で結構ボーッとしてる
印象だったけど、とんでも無く優秀だったんだな。
尊敬した眼差しで、ガストラの戦いに眼を向ける。
「ち、くしょ!ハァ!ハァ!何で当たんねぇん、だよ!
ハァ!ハァ!オラァ!!」
ウィンザーは相当疲労しているのか、さっきまでの勢いが無く、
大粒の汗を掻きながら肩で息をしている。
勢いが無くなった攻撃を軽く避け、ウィンザーの足を払う。
「キャ!?」
不意を突かれ足を払われたせいで、何とも女性らしい声を
上げながら前のめりに倒れる。
「可愛い声っすね」
不意に出てしまったからなのか、ガストラに、それを指摘されたのか
解らないが、みるみるウィンザーの顔が紅に染まって行く。
「う、うるせぇ!!」
大振りの攻撃をするが、全く当たる気配が見えない。
「信じられない…あのウィンザーが、手も足も出ないなんて…」
「私は、夢でも見ているのか……人間が、誇り高い我々騎士団を
翻弄するなんて…」
騎士団の連中、茫然としてやがるな。でも、当然だよなぁ。
人間って言えば、この国の最下層の種族だし。
その人間が騎士団隊長と対等…いや、もう対等じゃねぇな。
ガストラの奴、完全に遊んでるし。
「良い攻撃っす!はい!そこで大振りになっちゃ駄目っす!
そうっす!段々動きが良くなって来たっすよ。」
ガストラは、ウィンザーの攻撃を避けながら助言をする始末。
これは、あれだ…新人冒険者に戦いを教えている教官って感じだな。
「ゼェ!ハァ!ゼェ!ハァ…こ、この、馬鹿に…ハァ、
してんのか!?何で、攻撃してこねぇ!!?」
「…だって、勿体無いじゃないっすか。一撃で死んじゃうかも
知れない攻撃してくる獣人さんって貴重だと思いますし。
そんな、獣人さん簡単に壊したく無いんすよね」
あぁ…ガストラよ、騎士相手に、そんな事言うなよ。騎士ってのは
プライドの塊みたいな奴が多いんだぞ。悪気があって言ってる訳じゃない
けど結構な仕打ちだぞ。
「でも、そろそろ決着付けますか。バベルさん達も
飽きてきてますし。」
バベルは戦いに飽きたのか、大きな欠伸をして既に戦いを
見もしない。京香も眠そうに眼を擦っている。
「ぐっ!!こ、の野郎ぅ!」
ウィンザーも戦いで此処まで馬鹿にされた事が無いのか瞳から
ポロッと涙が落ちる。それでも向かっていくのは騎士の意地だろう。
ガストラは、半身になりウィンザーの懐に入る。そして腰に腕を
回しウィンザーの攻撃の勢いを利用してブン投げた。
しかも、背中を強打しないように配慮すると言う余裕っぷり。
投げられた事自体無いのか、尻餅を着いて眼を丸くしている
ウィンザーにハンカチを差し出す。
「可愛い顔に涙は似合わないっす。
女性は笑った顔が一番っすからね」
「か!かわ!!?へっ!?」
ボンッと音がしたんじゃないかと言う程、一気にウィンザーの顔が
真紅に染まっていく。そして、あうぅ…とハンカチを握り締め
下を向いてしまった。
「決着か…しかし、ありゃあ」
「さすが、天然のスケコマシだわー」
ガストラは、優しくウィンザーを立たせ汚れまで落としている。
そんなガストラを真っ赤な顔で見つめているウィンザー。
完全に雌の顔になってるじゃねーーか!!
何だ!?あれ!恋する乙女みたいになってる!!
ガストラ、恐ろしい子!!
「痛む所は無いっすか?」
ウィンザーの顔に着いた泥を優しく落とし頭を撫でる。
完全に殺しに行ってるな。あれ。
「は…はい/////」
はい!殺しましたー!落ちましたー!
まさか、こんな殺伐とした場所で始まる恋があるとは…。
そんな光景を茫然と立ち尽くしながら見る騎士団とスラムの
住人。
誰も、こんな展開予想してなかっただろうな。
ハハッ…。




