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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「対峙」

広場には未だ、肉の焼ける匂いと強烈な刺激臭

が漂っている。

此処に集まったスラムの住人は皆一様に青ざめ、

嘔吐し、腰を抜かす者達までいる。

少しの間だがバベル達と共に居た

ガルでさえ胃液の逆流に耐える事が出来なかった。

今、この場所で平然としているのは下等生物と

言われていた人間3人だけである。

バベルは、そんな光景を眺めながら

煙草に火を着ける。


「フッーー…さて、門出も終わった事だし飯でも

 食いに行くか」


「おーー!良いね!私、肉が食いたいな!!」


「そっすね」


「…お前ら…やっぱ、イカれてるよ……こんな状況で

 肉なんて……ウップッ」


こいつ等…頭の何処かが完全にイカれてる。生きたまま

獣人を焼き殺して宣戦布告紛いな事までやったんだぞ。

なのに平然と飯なんて……食える訳ねぇだろ。


「イカれてるとは失礼だな。俺達は全員、正常だぞ?

 それに一日3食バランス良く食べないと健康に毒だ」


ああ…もう、何も言えない…駄目だわ、こいつ等。

うっ!気持ち悪い…胃の中は空っぽなのに、

まだ吐きそうだ。

何か、こう、シャキッとなれる物とかねぇかな…。

口元を手で押さえながらヨロヨロとバベル達の

後ろを付いていこうとした時、

住人達が何やら騒ぎ始めた。


「うわっ!何で、此処に!?」

「ちっ、ずらかるぞ!こいつ等はヤベェ!!」

「すっげぇ…白狼まで居るぞ…」


一体、何なんだよ…俺は今すぐにでも

不貞寝したいんだよ!

大体、白狼って騎士団団長の………

んんっ!?騎士団!?


「待たんか!!そこの人間!!」


「ん?」


バベル達は、足を止め呼び声がする方角に振り向く。

そこには、細かな装飾が施された鎧と武器を手にした7人の

女性騎士が防具を身に付けた真っ白なユニコーンに跨っていた。


「……ま、マジで…?何で、スラムに…こんな面子が

 居るんだよ…」


いやぁー!シャキっとしたわー!!ヤバイわー!

これ、死んだわーー!アハッアハハハハ!!

ガルは、既に精神の許容範囲を軽く超えてしまい遠い眼をして

笑うだけであった。

そんな事を知るよしも無く騎士達はユニコーンから降り

一際、美しい女性が前に出る。


「私は、ファルシア大国騎士団シュトラール・ヴォルフ

 団長リヒト・アルバーニ!

 その者達に聞きたい事がある!

 この騒ぎの首謀者は、お前達か!?」


腰の辺りまで伸びる白銀のような髪。

透き通るような白い肌。

身体は、日々の鍛錬で引き締まっているが女性らしい箇所は

損なわれておらず男なら必ず眼が行ってしまう豊満な胸。

くびれた腰に鎧の上からでも解る臀部。

顔は絶世の美女と言っても過言では無い程美しく、

頭には、ピンッと立っている白銀の獣耳にキラキラと

艶がある尻尾が風に靡いており神秘的な光景だ。

その光景に、住人達は眼を奪われた。


「騎士?…ガル、何だアレ?……んっ?おい、ガル!」


バベルの声にハッと我に返るガル。


「…この国の最高戦力だ。白狼のリヒト団長……俺みたいな

 小悪党…いや、この国に住んでいる奴なら知らない奴は

 居ない程の実力者だよ。

 その後ろに居るのが、副団長と騎士隊長達だ。

 もう完全にお尋ね者だよ…俺達。」


「フーーン。美人揃いだな」


いや!フーーンって!!今、最高戦力って言ったよな!!

何そんな悠長にしてんだよ!!馬鹿なの!?もう知らん!!


「で?美人さん方達も祝いに来てくれたのかな?」


「誰が祝うか!!この無礼者共!!我々は貴様等を

 捕縛しに来たのだ!!」


「捕縛?何故?」


バベルは、何故自分達が捕縛されなきゃいけないんだ?と首を

傾げる。


「バルダットファミリー襲撃、ギルド施設の破壊及び殺人、

 兵士達の殺人未遂、そして今回のコーネル殺害容疑。

 お前達が関わった事件で一体何名の犠牲者が出たと思っている?」


キッと鋭い眼つきでバベルを真っ直ぐ睨む。


「あーー、あったな。そんな事!すっかり忘れていた。ハハッ!

 しかし何故、捕縛されないといけない?

 お前達の代わりにゴミ処理をしただけだ。

 感謝される覚えはあっても捕縛される覚えは無いぞ?」


ケラケラと笑いながら答えるバベルに

嫌悪感を現わにするリヒト。


「想像以上の外道のようだな。お前のような奴は野放しには

 出来ん!…ウィンザー!!」


「おう!!」


「この者達を捕縛せよ!抵抗するなら斬って良し!!」


ヴォンと身の丈程ある重厚な大斧を振り、

肩に担ぐ姿は圧巻だ。

あんな斧を軽々と持つなんて馬鹿力なんてもんじゃねぇ。

京香より怪力かもな。

いくらバベル達でもヤバイんじねぇか?


「あんた等の中で一番強ぇ奴は前に出な!一騎打ちだ!」


成る程、抵抗する前に殺る気満々じゃん!

あんな奴と一騎打ちとか絶対嫌だ!!

しかし、この中で強い奴って…京香か?

ガストラは、ちゃんと戦ってる所知らねぇし

…うーん?


「ガル、君に決めた!」


「ガルちゃん、ファイト!」


「ガルさん、おなしゃす!」


「よし!任せとけ!って馬鹿!!瞬殺されるわ!!」


アッハハハと笑うバベル達。何とも緊張感と言うか…そーゆうのが

無いのかよ?こいつ等は。


「んじゃあ、ガストラ頼む」


「えっ!自分っすか!!?」


「ガストラなら余裕じゃん?」


「えぇ……」


おっ!ガストラに決定か。どういう戦いすんのかな?

ガタイも良いし、やっぱパワーファイター系なんかな?

やべぇ、ちょっと楽しみ。つーか、万が一負けたらマジで全員

打ち首だぞ!ガストラ頼んだ!マジで!!


「何やってんだい!?さっさと出て来な!!」


「ガストラ、レディを待たせるもんじゃないぞ?」


「………うっす…」


うん!マスクで半分顔を隠しているけど

間違いなく顔色悪いな。

大丈夫なのかよ、人選ミスじゃねぇの?


「遅いんだよ!全く!……しかし、随分デカイね?

 私よりデカイ奴なんて久しぶりだよ!」


「…宜しくお願いします…」


ペコリと頭を下げるガストラにウィンザーは驚いた。

これは、訓練じゃない。一騎打ちだ。なのに、この余裕は…と

ウィンザーは勘違いしているようだが、全然そんな事も無く

ただガストラが礼儀正しいだけだ。


「なんか調子狂うね…まぁ良い!行くよ!!」


大斧を担いだ状態で一直線にガストラに向かって行く。

しかも、かなり速い。

だが、ガストラの臨戦態勢も相当速く、目にも止まらぬ速さで

銃を構え撃つ。


『ドガンッガンッガンッガンッ!!』


「むっ!?」


ガストラが撃った瞬間に、大斧を前に構えるウィンザー。


『ガキンッ!キンッ!キキンッ!!』


「ふぅ、あっぶね!それかい?例の魔道具って?

 随分、変てこな物もってるね!」


マジで…?あれ防いだのか?ゼスだって防げなかったんだぞ。

初めて銃を防いだ獣人を見て愕然とする。

しかし、愕然としている者達は、ガルだけでは無かった。


「……団長…見えましたか?」


「…かろうじて、だな」


「私達は見えませんでした。さすが団長とウィンザーですね」


「狂戦士の称号は伊達では無いね。しかし…」


「あれは、危険すぎる。戦いの根底が覆る代物だ。

 奴らは、必ず仕留めなければ」


やはり騎士達も、アレが危険な代物だと解るようだ。

そりゃそうだ。子供でも訓練された兵士を

殺せるかもしれない物なんだから。


「……凄いっすね」


「こっちも驚いたよ!俺の武器に傷を付けるなんて

 当たってたらタダじゃ済まないだろうね」


そう言って大斧を見ると数箇所に凹みが見える。


「まっ!当たらなきゃ良いだけさ!次行くよ!!」


さっきより速く間合いを詰め斧を振り下ろす。ヴォンと振ると

風圧が凄い。どれだけ速く振っているかが解るな。

ガストラは、斧を紙一重で避け続ける。


「アハハ!どうした!?どうした!?避けるだけで

 精一杯かい!?」


「お、おい!ヤバイんじゃねぇのか!?あんなの一発でも

 当たったら即死だぞ!?」


「ハッハッ!あんなのガストラに当たる訳ねぇだろ。」


「へっ?だって、今にも当たりそうで…」


「あ~、ガストラはスリルを楽しむタイプだからね~。

 それにガストラの特殊だから心配する事無いよん」


「特殊?京香のみたいにか?」


「あぁ、ガストラはな、スーパーコンセントレイションの

 持ち主だ。簡単に言えば、異常集中力だな。」


「異常…集中?」


その聞き馴れない単語に首を傾げるのであった。

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