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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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ファルシア大国「報告」

「担架を早く持って来て!!」


「治癒魔法を使える者は大至急来てくれ!!」


ファルシア大国 王都「フンケルン・ヴォルフ城」に

叫び声に近い声が響き渡る。

皆、額に汗を掻きながら走り回っている光景は、

まるで野戦病棟のようだ。

何故このような事になっているかと言うと、今から

1時間前に兵士12名が右腕を切り落とされた状態で

担ぎ込まれたからだ。

それを見た門番が大慌てで応援を呼んで現在に至っている。

治癒療法士達や他の兵士達は、最初あまりの凄惨さに

言葉を失っていた。中には気絶してしまう者まで居たくらいだ。

しかし、それも当然の事と言えるだろう。

ファルシア大国は、獣人の国で身体能力が並外れている為、

諸外国から侵略や大きな戦争が無かった。

なので、凄惨な光景に慣れている者達が少ないのだ。

多少の小競り合いは、有ったかもしれないが此処に居る

王都の者達は、全員、貴族出身や金持ちのボンボン、

箱入り娘等、争い事には無関係の者達ばかりだった。

そんな中、必死で治癒魔法で傷を癒す女性が居た。


「こっち急いで!そっちは、止血よ!!」


彼女の名は、ルシアーナ・アルバトロス。

此処、王都「フンケルン・ヴォルフ城」騎士団専属の

治癒魔法士だ。

名家のアルバトロス一家の長女にも関わらず騎士団

専属の治癒魔法士になる為に治癒魔法訓練学院を首席で

卒業し類稀な才能を発揮した令嬢である。

そんな彼女でも、この阿鼻叫喚を最初見た時は、気が

動転しそうになった。

それだけ悲惨な光景だったが何とか気を引き締め

治療にあたっている。


「騎士の皆さんも手伝って下さい!

 一刻を争うのですよ!!!」


忙しなく動く治癒魔法士達と対象的に騎士団の者達は

顔を青くして動けないでいた。


「ルシアーナ、私も手伝わせてくれ。」


ルシアーナの隣に来たのは、見事な装飾を施され

光沢が光る鎧を装着していたシュトラール・ヴォルフ騎士団

団長のリヒトだった。


「団長!遅いです!!もっと速く来て!!」


「す、すまない、こちらも色々立て込んでいてな。

 少し遅れてしまったのだ。」


もう!と言いたげなルシアーナは頬をプクっと膨らませる。

しかし、シュトラール・ヴォルフ騎士団団長と言えば、

この国の特権階級である。そのリヒトに、これだけの事を

言えるとは、流石である。


「ルシアーナ!!リヒト団長に失礼だぞ!」


「あなたは口を動かさず手を動かしなさい!!」


リヒト団長に対しての非礼を咎めるレスタであったが、

ルシアーナに一蹴され、ぐぬぬ、と唸っている。

まぁ、唸りながらも仕事をしてくれるのはレスタらしい。


「お前達も、何を呆けている!この者達を死なせるな!」


リヒトの言葉に騎士団達も急いで治癒魔法士達の手伝いを

行う。そのかいあって死者は出なかった。

出なかったのだが。


「傷は大丈夫ですが…皆、腕を切り落とされています。

 その再生は不可能ですので…。」


「隊の復帰は、絶望的だな…。」


一通り処置が終わり、地面に腰を下ろすリヒト達。

一国の騎士団団長が地面に何も敷かず座る光景は、

前代未聞な事だが、そんな事は一切リヒトは気にしない。

ルシアーナは、リヒトの言葉を聞き申し訳無さそうに頷く。


「私に、もっと力が有れば…。」


「そんな事は無い。ルシアーナは良くやった。

 おかげで、死者を出さずにすんだのだ。」


リヒトは、真っ直ぐルシアーナの眼を見て功績を

称えた。その言葉に小さく、はい…と呟く。

それを聞き、リヒトは軽く頷いた。


「しかし…あの者達の傷は只事では無いな。」


「はい。私も確認しましたが、あれ程の傷口は

 初めて見ました。」


「えっ?どういう事です?」


キョトンとした顔で話について行けないルシアーナに

レスタが説明する。


「ルシアーナも知っての通り、リヒト団長は

 剣技の最高峰に居る御方だ。

 私も団長程では無いが腕に覚えがある。

 だから私達は、切り傷を見ただけで相手の力量が

 解るの。」


「そうなの?」


「うむ。解る。そして今回の騒動の輩は相当な

 手練だな。

 普通、剣を振るう者は何かしら迷いを持っている。

 だが、あの者達に傷を負わせた者は一切迷い無く

 斬っているのだ。

 訓練をして、どうこう出来る技では無い。」


ルシアーナは、絶句した。あの団長が、そこまで言うのだ。

そして、迷いとは多分…罪悪感や相手を殺してしまうかも

等の事を言っているのだろう。

それが、一切無いなんて考えられなかった。


「ルシアーナ、今回の件で兵士は何か言って

 いなかったか?どんな事でも良いんだ。」


ルシアーナにとっては思い出したくない出来事だった

かもしれないが、相手を特定する為に少しでも情報を

聞いておきたい。


「…御免なさい、団長。あの時は私も必死で…。」


「そうか。嫌な事を思い出させた。許せ。」


重宝されている治癒魔法士とはいえ一介の者に

頭を下げる団長に慌ててルシアーナは声を掛ける。


「だ、団長!?御顔をお上げ下さい!!

 私のような者に、そのような事をしては品格を

 疑われます!!」


「品格など私には、どうでも良いのだ。

 私が勝手にしている事だ。気にするな。」


「団長…。」


感動の涙を浮かべるルシアーナに対し、レスタは

ハンカチを手渡した。


「ホント、ルシアーナは私生活と仕事の差が

 激しいわね。」


「私の仕事は、命が掛かってるの!

 ホワホワなんて出来る訳ないでしょ!」


涙を拭いながら、レスタに反論する。流石に

命が掛かっていると言われてしまうと何も言えない。

暗い顔をしていたルシアーナの顔が元に戻った所で

何かを思い出したのか、あっ!と小さく呟く。


「…リヒト団長、そーいえば兵士さん達が

 口々にうなされていたわ。化物って…」


「化物?魔物か?」


「解らない…けど、あの兵士さんに聞けば

 何か解ると思うんだけど…。」


「あの兵士とは、どーゆう事?」


「うん…実は一人だけ無傷の兵士さんが居たの。

 ただ……切断された12名の右腕を両手に抱えてて…

 かなり精神に異常が出ているの。」


リヒトもレスタも一気に顔が曇る。


「その兵士さんね…泣いてるのに顔が笑っていたの。

 ずっと、逆らえない、化物、報告ってブツブツと

 喋っていて…それで、連れて行かれちゃったのよ。

 その後は、大忙しで…。」


「……団長。」


「すぐに調べてくれ。すまんが、ルシアーナ、

 君も来てもらいたい。」


「解ったわ。」


久しく見ていなかった鬼気迫るリヒトの顔を見て

レスタもルシアーナも、すぐに行動した。

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