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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
33/248

バベルの世界「手配」

残酷な表現がありますので、お気を付け下さいまし。

現在、露店街は騒然となっている。

皆、買い物の手を止めて俺達をニヤニヤと

嫌な笑顔を向けている。

住民達からして見れば、楽しい見世物に見えるだろうな。

兵士達も剣を肩にポンポンと当てて余裕ぶってやがる。


「俺等はなぁ~、このアテゴレ地区の平和と

 安全を守っている騎士団直属の兵なんだよ。

 なのによ~、人間の癖に悪い事してよ~、

 余計な仕事増やしてよ~。

 どうしてくれんだよ!!」


「へっへっへっ!おい!人間!

 大人しくお縄につきな!コラトス様を怒らせ

 たら全員、生きて帰れねぇーぜ!」


コラトスの後ろで揉み手をしながら吠えている。

あんの爺!!コラトスに媚び売る為に、

俺達を売りやがったのか!!


「俺ぁ~な!金の徴収で忙しいんだよ!

 なのに、余計な仕事増やしやがって!!

 おい!オメー等、多少、遊んでも良いが

 さっさと捕まえろ!!」


その言葉に、兵士達は剣を構える事もせず

歩み寄ってきた。

所詮、相手は人間と若い獣人。剣なんて使わず余裕で捕縛

出来ると思ったんだろう。

馬鹿が…。


『ズダダン!ダン!ダン!ダダダン!!』


耳を劈くような音が露店街に響き渡った。

同時に、先程まで余裕ぶっていた兵士達が倒れる。

コラトスも店主も何が起こったのか、何故、急に

兵士が倒れたのか全く解らない顔をしている。

当然、見世物として見ていた住民も口を開けて

固まっていた。

やっぱり…こうなるよな。

ただ、今回は、いつもと違うんだよ。

何が違うって?兵士達が全員まだ生きてるんだよ!

兵士達は、全員、足を打ち抜かれており死に至るような

致命傷では無い。

外したのか?いや…いやいや、それは絶対に無い!!

これだけは断言出来る。

だってよ、今まで殺された連中は、それは見事に

頭を吹っ飛ばされてたんだぞ!

そんな、絶対殺すマンみたいな連中が外すか?

答えは簡単。ワザと外した。

でも、何でだ?


「な…なな何が!?えっ!?オメー等?

 何で足から血ぃ流してんだ!?」


完全に引き笑いで、テンパっている。その横では、

口が外れるんじゃないか?ってぐらい口を開けて

固まっている店主が居た。


「おおお前等!!何、何しやがった!?

 こんな訳解んねぇ事……はっ!!

 魔法!魔法か!?きたねーぞ!!

 いきなり魔法を使うなんて!!」


こいつ…大分テンパってんな。人間で魔法を使える奴なんて

この国じゃー数えるぐらいしか居ないってのに。

しっかし…こんな奴を部隊長にしてよ…。

大丈夫か?この国は。


「黙れ。」


バベルが放った一言で、一瞬で…本当に一瞬で辺りが

静寂に包まれた。

あれだけテンパっていた馬鹿も騒然としていた

住民共も全員がだ。

正直…怖かった。いつものバベルの声じゃない。

なんつーか…頭の中に直接、命令されているような

感覚だ。

もっと怖い言い方しようか?

「死ね」と言われたら何の躊躇も無く自害する…

そんな理不尽な事も実行してしまう感じなんだよ。

プレッシャーが凄いとか…そんなんじゃない。

ただ逆らえない。

今のバベルの声は、そんな声なんだ。


「正直…かなり不快だ。何だ?お前の兵士は?

 捕まえる気があるのか?

 殺す気はあるのか?

 危機感を持っているのか?

 いつまで、搾取する側だと思っているんだ?

 ……お前達のようなゴミはウンザリだ。」


一言一言が重い。バベルが言葉を発するごとに重く

伸し掛ってくる。


「倒れている馬鹿共、こっちに並べ。」


その言葉を聞いたコラトスの部下は、鬼気迫るような顔で

コラトスの前に横一列に並び始めた。

足を撃たれている為、全員這いずるような形で。

全員、並び終わった兵士達の顔に、さっきまでの余裕は

無い。あるのは、これから何が始まるのか解らない

恐怖に怯えた顔だ。


「ボス。」


「あぁ。」


ボスの手には、あの血生臭い刃が欠けている刃物が

握られていた。

待て…待て待て!何する気だ!!?

冗談だろ!?相手は、腐っても騎士団直属の隊だぞ!

それに、こんな公衆の面々で殺ったら言い逃れ出来ない!

そう思ったから足を撃ったんじゃないのかよ!!?

考えれば考える程、血の気が引いてくる。


「これから、一本ずつ腕を切り落としていく。」


この言葉に、全員息を飲んだ。

マジで…今から…?

兵士達は、泣きながら許しを請うている。「止めてくれ!」

「許してくれ!」等言っているがバベルは、絶対に止めない。

よく居る「これだけ脅せば良いだろう」なんて温い事を

絶対に言わない男だ。


「全員、右腕を横に上げろ。」


異様な光景だった。あれだけ許しを請うていたにも関わらず

全員、腕を上げ始めたのだ。兵士達は、「何で!?」、「どうして腕が

勝手に上がるんだよ!!」と泣き叫んでいた。

その光景を目の当たりにして何故、ボス達みたいな猛者を

部下に出来るのか解った。

バベルが、それ以上の化物なんだ。

多分…バベルは、言葉で人を殺せる。

もう、人間じゃない。


「落とせ。」


「クーレ!レオーネ!!グラッド!!!

 見るな!!!!」


クーレ達に叫んだと同時に嫌な音がした。

一度だけ、聞いた事がある嫌な音だ。


『ジッ!』


兵士の腕が、ポトリっと地面に落ちる。

そして聞こえる断末魔。

その、断末魔が聞こえないようにクーレ達は必死に耳を

手で抑え眼を強く閉じガタガタと震えている。

そんな事を気にする素振りを見せずに次々と

切り落とすボスに住民達は本気で恐怖した。


『ジッ!』 「ぎゃあああああ!!」


『ジッ!』 「腕がぁああ!!俺の腕ぇぇええ!!」


『ジッ!』 「いてぇよぉぉお!血が止まらねぇぇえ!!」


悪夢だ…俺達は悪夢を見せられているんだ。

泣き叫ぶ者、気絶する者、胃の中身をブチ撒ける者…

悪夢以外考えられない光景に俺も眼を背ける。

バベル達は、誰も殺したりしていない…してないけど、

これなら殺されていた方が幸せなんじゃないかと

思う程、凄惨な光景だった。


「さて、お前の部下達が地面にゴミを落としているぞ。

 一つずつ拾え。」


バベルは、コラトスに無慈悲な言葉を投げかけた。

その言葉に、コラトスは泣きながら指示に

従っている。

一通り、自分の部下達の右腕を両手一杯に抱えるコラトス

の顔は憔悴しきっていた。


「何だ、その顔は?笑え。」


「ひゃいぃ、はひぃいぃい!」


コラトスは、涙と鼻水と涎を垂れ流しながら

笑った。


「良い笑顔だ。そのまま今日の出来事を報告しろ。

 勿論、笑顔でな。」


ひでぇ…、確かに今日は腹が立つ事があったけど、

まさか、此処までするとは思っていなかった。

兵士達の腕を切り落とし、それをコラトスが拾って

笑顔で報告なんて地獄すぎる。

兵士達は、全員這いずったり他の住民に運ばれていったり

し姿を消した。

残っているのは、地面に水溜りを作り今にも気絶

しそうな店主だけだ。

その店主にバベルは問いかける。


「何故、俺達を売った?」


「ひぃぃぃ!勘弁、勘弁してくだせぇ!!

 懸賞金が賭けられてたんですぅぅ!

 だ、だから…つい…。」


ピラッと1枚の羊皮紙を差し出した。

そこには、こう書かれている。

『人間4人組と獣人ガル 賞金首金貨500枚』

そこには、人間の特徴と俺の名前が書かれていた。

最悪だ…遂に、賞金首の手配書に乗っちまった。

しかも、金貨500枚なんて大金を賭けるなんて、スラム

だけじゃなく賞金稼ぎや冒険者からも命を狙われる。

絶望すぎる……どうすんだよ、これから。


「懸賞金、安っ!!」


「舐めてるねぇぇ~。」


「……納得出来ないっす。」


「呆れすぎて笑ってしまうな…。」


おいおい!!マジかよ!!手配書が廻ってるんだぞ!?

何だよ、その余裕は!!金貨500枚なんて

人間に賭けられる額じゃねーんだぞ!!

店主が言うには、懸賞金を賭けたのは、コーネル・ガウン

だと言う事が解った。

やっぱり生きてやがったのかよ…もう敵しか居ねぇじゃねぇか。

しかも、騎士団も間違いなく動いてくる。

どーすりゃ良いんだよ!!!


「さて、どうするかな。」


「あ、あの!あっしは、もう行っても良いですよね!?」


「あぁ、もう逝って良い。」


『ドガッ!ドガッ!!』


ボスは、見る事無く店主の頭に2発ブチ込んだ。

ドシャっと地面に倒れこみ血溜りが徐々に広がって行く。


「よし!決めた。」


何かを決心したかのようにパンッと両手を合わせ、

露店街が一望出来そうな少し崩れた建物を一瞬見て

声を上げる。


「懸賞金を賭けた連中は、皆殺し。

 縄張りを乗っ取って仕事がしやすい環境にする。

 そーなれば、皆、ハッピーだ。ハッハッハッ!」


満面の笑顔で何っー事を言うんだよ…。

さっき手配書を見たばかりで何で、そんな物騒な考えに

なるんだ…。

ガルは、今まで感じた事の無い胃痛に苦しむのであった。






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