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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「売手③」

『パーーーーンッ!!』


聞き覚えがある音が辺りに響いた。

この人間達と、一緒にいるようになってから

何度も聞いた音。銃声だ。

銃声が響いたと同時に、クーレ達の父親が

足を抑え倒れる。


「ギャアアア!!」


クーレ達は、いきなり倒れた父親を見て何が起こったのか

全く解らない顔をし、茫然としている。

銃声がした方向に眼を向けると銃を手にした

バベルが居た。

そして無言のまま、男の方に歩を進める。

まさか…、あの光景を見て少ない良心が刺激されて

あんな行動に出たのか!?

いや!バベルの事だ、そんな感情に任せて

行動するような奴じゃない!!

でも…何で…?

その答えは、すぐに解った。


「お前、うちの商品に何してる?」


声のトーンが下がり、さっきまでの笑顔が嘘のように

眉間にシワを寄せ鋭い眼付きで見下している。

男の方は、バベルの代わりように顔が真っ青に

なり地面に水溜まりを作っている。


「ひっ!しょ…商品って…コイツ等は俺のガキじゃ…」


「お前の子供じゃない。もう俺の物だ。

 とっくに酒と交換し成立してるだろ。

 誰であろうと俺の商品に傷を付ける奴は許さん。」


男の後ろには、いつの間にかガストラとボスが

立っていた。

ボスに至っては、鉈のようなナイフを抜いている。

殺す気満々だ。

今回ばかりは、何とも思わない。自業自得だ!

バベルの口車に乗って欲を掻いた結果だ。

ただ…子供達が見ている前でってのは気が引ける。


「ま、待て!助けてくれ!!おい!お前等も

 何とか言ってくれ!!」


何とも見苦しい。

自分で売った子供達に助けを求めるなんて完全に

終わってやがる。

当然、子供達は何も言わない。

とゆーか、クーレとレオーネはバベルに完全に

気圧されて喋れる状況じゃないし、グラッドは、

怒りの眼で父親を睨んでいる。


「別に、殺しはしない。ただ、そうだな…」


バベルは、そう言うと一瞬何かを考えてから、

クーレとレオーネに顔を向けた。


「二人共、怪我は大丈夫かな?」


いつもの、薄ら笑いを浮かべながらクーレに

聞く。


「は、はい…大丈夫…です。」


クーレは、レオーネを守るようにギュッと腕に抱き

バベルに答える。

レオーネは小さな手で、ボロボロのクーレの服を

掴み小刻みに震えている。


「なら良い。じゃあ…はい。」


「えっ!??」


バベルは、おもむろに手にしていた拳銃を

クーレに手渡した。

いきなり手渡された拳銃にクーレは眼が点になり

どうすれば良いのか解らずにいた。

当然、俺も驚いた。

あんな物騒な物を、いきなり女に渡すなんて

何考えているか解らなかった。

解らないが…間違いなくロクでも無い事は確かだ。


「今まで、散々煮え湯を飲まされて来ただろ?

 それで復讐したら、どうだ?父親に。」


「えっ!?え!?」


「ほらっ、これを向けて、そうだ。後は、

 ここの引き金を引けば非力の女性でも

 殺せるぞ。」


マジかよ、実の子供に父親を殺させる気か!?

いくら何でも…いや!この子達からしてみれば

自分達を酒と交換なんかした奴、父親だと思わないだろう。

多分、殺しはしないだろうが脅すぐらい良いと

思う。しかし、このバベルって奴は、本当に

嫌な事を考えるな。


「ッッ……」


カチャっと銃口を実の父親に向けるクーレ。

それと同時に、飛び跳ねるように驚く男の父親が

喚き散らす。


「お、お前!今まで育てた恩を忘れたのか!?

 俺は、ち、ち、父親だぞ!!待て!

 それを向けないでくれぇ!!」


「今まで…親らしい事、した事無いクセに。

 レオーネやグラッドまで暴力奮って!

 こんなお酒なんかと!!」


憎しみに近い眼で父親を睨み、引き金に掛かった指に

力を込める。


「わあああぁぁあぁあああぁぁ!!!」


「ひぃぃいぃ!!」


『パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ!』


クーレの悲痛な叫びと、乾いた銃声が辺りに何度も響く。

カチッカチッと弾が無くなった拳銃の引き金を引き続けて

いるが、我に返りペタンッと地面に腰を落とす。

そして父親は………生きていた。

正確には、口から泡を吹いて気絶しているがな。

クーレは、父親を撃たなかったらしいが、代わりに

バベルと交換した酒が数本割れていた。


「フフッ、最高の復讐だな。」


バベルは、割れた酒を見ながら機嫌良さそうに

笑っている。残りの割れていない酒は、バベルが

回収した。

何でも商品を傷付けた罰として没収するそうだ。

これで、バベルとの初めての仕事は終了だ。

しかし……此処まで胸糞悪い仕事になるとは、

思っても見なかったし現実を突き付けられた気分だ。

まさか、こんなに簡単に自分の子供を売る獣人が

居るなんて…ショックがデカ過ぎる。

俺…耐えられるのかな…そんな事を思いながら、

帰路につくのであった。

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