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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「売手」

今回から3話程、人によっては大変胸糞悪い内容になっています。

駄目な方は無理しないでください。

ですが、現実で起きている事だと頭の片隅にでも残ってくれれば幸いです。

毎回、此処を歩くと胸糞悪くなる。

悪臭たちこめる此処は、アテゴレ地区貧困街だ。

街を歩けば、怪しげな客引き、店を持たないフリーの

売春婦、ゴロツキばかりだ。

勿論、人間も住んでるが殆どガリガリに痩せて

残飯を貪っている。

建物も朽ちていたり、ぶっ壊れてたり様々で

まともな住処じゃない。

皆、今日を生き抜く為に必死だ。

騙し、盗み、奪い、殺す。

そんな連中ばかりの街を、まるで見下すかのように

王都がそびえ建っている。

子供の頃、此処から見える王都が大嫌いだった。

装飾が施された立派な家、男も女も綺麗な服に

身を包み優雅に歩いている。

俺達が、腐った飯を食ってる中、王都の連中や

他の街の奴等は豪華な飯を食べ、腹一杯になると

捨てている。

そんな光景を俺は見て来たんだ。

絶対、見返してやると思い犯罪の道に進み、

人間を売ったりして金を稼いだ。

けど、結局は、端金だったんだよな。

もっと金がいる。金が欲しい!そして、俺は、今日

一線を超えるかもしれない。


「どうした?顔色が悪いな。」


今日は、バベルの仕事の為、貧困街を案内している。

貧困街の連中は、皆、バベル達をギラギラした眼で

様子を伺っている。


「あんまり此処に、良い思い出ねぇからな。

 それより今日は……仕事すんだよな?」


「勿論だ。宝の山を見過ごす程、お人好し

 じゃないからな。」


宝の山か……俺には全然そう見えないけど、

こいつからしたら、宝の山なんだろう。


「今日は、いくつか目星を付けていた場所に

 行くぞ。少し交渉すれば売るだろうな。」


一体、いつの間にと思ったが確かに気付いたら居ない

時もあった。多分、その時だろう。

でも、そんなに上手くいくか?獣人は少なくとも

人間より誇りを持っているんだ。

そんな簡単に身内を売るだろうか。


「そ~いえばぁ、此処~貧困街なのにぃ

 物乞いが居ないねぇ~。」


バベルの右前方を警護しながら、ボスが

話掛ける。今日の警護メンバーは、ボスとガストラだ。

京香は拠点にて警備中。


「物乞い?そんな奴等いねーぜ?残飯を

 漁ったりすれば飯は多少食えるからな。

 お前達のスラムは居るのか?」


そもそも、俺達の世界より発展している世界に

スラムが有るって事自体、信じられなかった。


「居るな。基本的に子供が多い。

 そして元締めが存在しビジネスが成り立ってる。」


「ちょ、ちょっと待て!ビジネス?元締めって

 何だよ!?物乞いって食い物を貰ったり

 小銭貰うだけじゃねーのか!?」


「確かに、そうだが、こっちと違ってフリーじゃない。

 俺達の世界の物乞いは、完全に組織化されている。

 売られた子供達が路上に出て、物乞いをし

 集めた金を元締めが徴収する仕組みだ。

 金を沢山、集める事が出来る子供は多少優遇

 されるが、ノルマを達成出来ない奴は、

 足を切り落としたり、眼を潰したりされる。」


淡々と喋るバベルに、憤りと怒りを感じた。

確かに、俺も人間を売っていたが子供だけは、決して

売買しなかった。

それなのに、バベル達の世界は、俺達の世界と比じゃない

ぐらい冷酷だ。

そんな、仕組みを作る奴の気が知れない。


「そんな…いくら何でも、ヒデェよ…。

 必死に集めたのに、奪われて…

 金を集める事が出来なったら、足を切ったり

 眼を潰すなんて…。」


こんな事、絶対シドや他の子供達に聞かせられない。

多分…泣いちまうよ。


「物乞いのビジネスは、哀れみを利用した

 ビジネスだ。

 だから特に子供が使用されるし、その子供が

 怪我をしていたら尚更、哀れんで金を

 恵むって感じだな。」


バベル達の世界は、確かに発展してると思う。

けど、こいつ等の世界は何か大事な物が欠落している

感じがする。何て言えば良いか…解んねぇけど。


「ガルは、人間を何処に売っていた?」


「俺は、魔光石の採掘場に売っていた。バルドは、

 色々、手広くやっていたからな。

 他の連中も大体一緒だし、後は売春館とか

 ぐらいしか無いぞ。」


因みに、俺は売春館に売ったりはしていないぞ。

だってよ、好きでもねぇ奴に抱かれるなんて

辛いだろ?


「随分、レパートリーが少ないな。

 新しい事業も起こしやすくて助かるが。」


「新しい事業って…そっちの世界は他にも

 有るのか?さっきの胸糞悪い仕組み以外に?」


眉間にシワを寄せ、バベルに質問する。


「大まかに分けて7つある。

 1つ、物乞いさせて金の徴収。

 2つ、肉体労働、主に炭鉱や危険な場所でだ。

 3つ、犯罪要因の育成。

 4つ、性奴隷。

 5つ、売春の強要。

 6つ、臓器を売る。

 7つ、子供に恵まれない家庭が育てる。

 ざっくり、言うと、こんな感じだ。

 7つ目が一番、恵まれている。」


こっちの世界にも多少、似たような事があるが…

子供に恵まれない家庭が育てるってのが一番

幸せかもな。ただ…ゾウキって何だ?


「なぁ、ゾウキって何だ?売り物なのか?」


この質問に、一瞬ハァ?って顔をしたバベルだが

しっかり説明してくれた。


「臓器を知らないのか?今度、基本的な事から

 叩き込んでやるが…まぁ、良い。

 臓器ってのは、ガルの身体の中にある物だ。

 勿論、俺や他の連中も持っている。

 要は、生命を維持するのに必要不可欠の

 物が臓器だ。簡単に言うとな。」


へぇーっと思い、自分の腹を摩る。

そして、それと同時に最悪な事に気付いた。


「…さっき、生きる為に必要って言ってたよな…?

 それを、売ったら……どうなんだ…?」


心の何処かで祈っていた。そんな最悪な結果だけは、

あって欲しく無いと。

だが、バベルの言葉は、最悪の結果だった。

いや、それ以上だった。


「基本的に、死ぬな。その為だけの商品だし

 その為に生まれ育てられる事も多々ある。

 臓器ってのは、金になるんだ。

 お前達の世界と違って魔法なんて一切存在しない。

 だから、死に直面する病気になったり怪我をしたり

 すると喉から手が出る程、欲しいのさ。」


「………犠牲の上に成り立っててもか?」


「そんな事、百も承知だ。誰だって死ぬのは

 嫌だろ?だから金を出す。

 肺、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、小腸、角膜

 あらゆる臓器が売れるのさ。

 俺達の世界では、単純な事だ。

 金が有れば、生きれる。

 金が無ければ、死ね。これだけだ。

 ただ、この世界では駄目だな。医療技術が

 違いすぎる。」


「…………。」


今、俺の顔は、どんな顔になっているだろうか。

悲しみ?怒り?諦め?もうグチャグチャだ。

あんまりだ…あんまりじゃねーか!!

死ぬ為に生まれ、死ぬ為に育てられる!

そんな、ヒデェ話あるかよ!!

向こうの世界の話だと考えれば、それで良いかも

しれねーけど、こっちにも子供達が居るんだ!!

そんな簡単に線引き、俺には出来ないし、

俺と一緒に歩いている人間は向こう側の人間だ。

こっちでも、どうなるか解らねぇ…。

そんな一線超えちまったら俺…どうなっちまうんだろう…。

そんな事を考えている内に、バベルが声を掛ける。


「着いたぞ。」


その声で顔を上げたガルの目の前に、崩れ掛けの

建物が見えた。

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