バベルの世界「反省」
バベル達は、冒険者ギルドの騒動の後、
元他種族刑務所『パーガトリー』に戻っていた。
元々、野盗達のアジトになっていたが、バベル達が
乗っ取り現在の拠点となっている。
周りは、深い森と魔物の巣窟になっており
建物の後方は、断崖絶壁になっている為、刑務所時代
脱獄不可能とまで言われていた建物らしいが
何でも唯一、脱獄に成功した奴が、たった一人だけ
いると聞いた事がある。
こんな魔物が蠢く森を、どうやって抜けたんだろうな?
それとも、この絶壁を登ったとか?いやぁ…無理じゃね?
まぁ、そんな場所をアジトにしていた野盗共は
苦労したんじゃないか?
いくら攻めにくいからと言っても相当な覚悟がいる筈だ。
バベル達が、此処を襲撃した時は何人か魔物に
襲われた後なのか怪我して寝込んでいる奴らも
いたぐらいだしな。
勿論、そいつ等も排除されていたな。少しだけ
同情してしまったが、野盗なんかやってっからだ。
…俺も、それなりに悪さしてたから、あんまり言えないが。
最初は、此処を拠点にする事で色々苦労すると思ったんだよ。
主に、魔物関係で。
この森に生息している魔物は、刑務所時代脱獄防止で
連れて来られた魔物だ。
動いてる物に突っ込んでくる巨大猪『ブラッド・ボア』
大木や石などを武器にして襲う2mの猿『バブーン』
集団で行動し野盗の真似事をする子鬼『ゴブリン』
その他、諸々。
刑務所が廃墟になって、すぐに野生化しちまって国でも
対処に苦しんでる。
冒険者ギルドにも討伐依頼なんかも出てるみてぇだけど
結構、上位級のランクじゃないと受けれない。
『ブラッド・ボア』は、とにかく凶暴な為、Bランク。
『バブーン』は、知能も魔物の中じゃ高く武器も使用
するので、Aランク。
『ゴブリン』単体でなら、Eランクだが常に50~200で
行動している事から数によってランクが変わる。
一昔前に、ゴブリンが大量発生し1500匹の集団に
なった時は、Sランクに認定され騎士や兵士が
駆り出されてたな。
そんな場所に、人間が住むんだぜ?
苦労すると思うじゃん!
でもさ……全然、苦労しねぇーんだ!此処の人間は!!
いや、もう魔物殺しまくりなんだよ。
ゴブリン共は、ボスが作ったえげつねー罠や
ガストラが仕掛けた地雷に引っ掛かりまくるし、
ブラッド・ボアは完全に食料と化してるし、
バブーンなんて京香一人で、軽く30匹は殺してる。
魔物だって馬鹿じゃない。いや、馬鹿かもしれないが
これだけ殺られれば本能で避けちまうんだよな。
たった数日で、森の頂点になったんだぜ。人間が。
スゲェー前置きが長くなっちまったけど
実はな、森の頂点になっている人間共は、今、
俺の前で正座してるんだよ。
何でだって?ハハッ、簡単だ。
冒険者ギルドで馬鹿やったからだよ!!
「こっの、馬鹿野郎共がぁぁ!!」
元刑務所内でガルの怒号が響き渡る。
そこには、バベル、ボス、京香、ガストラの面々が
正座させられている。
「そんなに怒る事無いじゃーん。」
「そうだよぉ~、別にぃ良くなぁい?」
「………」(コクッコクッ)
「俺、関係なくないか?」
各々、反論するが全然こいつ等わかってねぇ。
自分達が、どれだけの事をしたのか!!
「やっかましぃわ!!阿呆共!テメー等、
自分達が何やったのか解ってんのか!!」
「あのコーネルとか言う、むさいオッサンに
攻撃した事でしょー?
別に良くない?そもそも、何で、あんな
オッサンにケモ耳生えてんの?
あれ見たら、ぶっ殺したくもなるでしょー。」
「それにぃ、ガル君もぉ、助かったしぃ~。」
「………」(コクコクコクコクッ)
「いや、何故、俺まで正座…」
こいつ等、いけしゃあしゃあと…全然反省してねぇな!
確かに、俺が助かったのは事実だ。
そこは認めてやるが、如何せんヤリ過ぎな事に
気付いてないのが大問題なんだよ!
「それと、これとは別問題だ!!ボケッ!
まず、京香!オメーは、すぐブチ切れんな!
大体、オッサンにケモ耳あって、ぶっ殺したくなるって
何なんだよ!!
此処は、獣人の国だ!爺にも婆にもケモ耳
生えてるわ!!その都度、襲うつもりか!?」
「いや…でも、あれはさ…」
「アァ!!?」
京香がモゴモゴと何か言おうとしていたが、
ガルの一喝で項垂れる。
「しゅいませぇん…。」
はい!京香終わり!次!!
「ボスとガストラ!!」
その言葉に、ビクッと身体が反応し、何で俺達?って
反応している。
「オメー等は、所構わず吹っ飛ばすんじゃねぇよ!!
シバァールのアジトも最近、盛大に吹っ飛ばした
ばかりじゃねぇか!!
いやっ、吹っ飛ばしたのは京香だが、
作ったのはオメー等だろ!
命がいくつあっても足りねぇっーの!!
それに、冒険者ギルドは国や貴族連中の
息もかかってんだぞ!!
もう絶対、眼ぇ付けられてるからな!!!
少し自重しろ!!」
「ごめぇ~ん。」
「…サーセン……。」
ガストラは、反省しているようだがボスは絶対
反省してねぇな。これ以上言っても無意味だろう。
少しは、自重すると信じたい。はい!次!!
「次!顔面凶器!!」
「ブホッ!!」
「ッッ!!」
「グッ…!!」
顔面凶器の言葉に他の三人が肩を震わせている。
だが、バベルは、誰の事だ?みたいな顔して
キョロキョロしているが、お前しかいねーだろ!!
「テメェだよ!バベル!!」
「顔面凶器って、お前……俺は、渋めの
イケメンで…。」
「噛むぞ!」
「…失礼、どうぞ…続けてくれ。」
ガルの一言で、バベルは観念したようだ。
何故、この一言で観念するのかと言うと俺達の国ならではの
風習っーか儀式が関係している。
それは、甘噛みだ。
新しくギルドのパーティに入った新参者や階級が上の
者に忠誠やら畏怖やらを込めて相手の身体の一部に
甘噛みする。
因みに、噛む場所によって意味合いが変わる。
例えば、手の甲なら忠誠。
腹の一部は、敬愛。
首筋なら、信頼。
足だったら、服従って感じでな。
あと俺は、バベルの鼻を噛んだ!
鼻の意味は、嫌悪だ!!
嫌悪しているが、仕方なく仲間になってやるって思って
くれた方がいいな。
あの時のバベルの驚きっぷりは、笑えたぜ!
驚き過ぎて、吐いてたぐらいだからな。
京香は、驚いて吐いてる訳じゃないんじゃ…って言ってたが
一矢報いたから良しとする!!
すまん!話が逸れたな。
「テメェは、こいつ等の雇い主だろ!
しっかり手綱握っとけよ!!
そんなんだから、殺りたい放題になんじゃねぇのか!?
ドンっと構えるのは結構だが、構えてばかりじゃなく
少しは動け!つーか止めろ!!
そんな、コエー顔してんだから余裕だろ!?
前回は、シバァールの爆破だけだったから、
国の連中も縄張り争い程度で調べてたが、
今回のギルドの件で絶対、本腰入れて調べるぞ!
しかも、万が一、コーネルが生きてたら戦争だ!
んな事になったら、仕事どころじゃなくなるぞ!!」
「申し訳ない…。」
一通り不満を、ぶちまけられて謝罪するバベル。
「ったく!!」
こーゆう所は、逆切れしないで謝罪すんだよな。
素直に謝る所は、まぁまぁ好感が持てる。
俺も、かなり色々言ったが一応、助けてくれた訳だし。
うーん…癪だが、仕方ない。
それに、ボス以外の奴らの凹みようも半端ないし…。
「…ま、まぁ…俺も色々言っちまったけど…
その……あれだ……助かった…。
………あんがと…。」
頬を、ポリポリと掻きながら小さな声で呟いた。
その瞬間、一同ガバッと顔を上げる。
「ガルちゃんが、デレた!!」
「デレたぁ~!」
「これが、ツンデレっすか!!?」
「ク●ラが立った!間違った!ガルがデレた!!」
「ダーーッ!!そーゆう訳解んねぇノリも
自重しろ!!」
またもや、ガルの怒号が響くアジトであった。




