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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
247/248

閑話 ソルの冒険

遅くなり申し訳無いっす・ω・

クインケ帝国皇帝が住まう城の地下には

巨大な牢獄が存在する。

皇帝の政策に意を唱えた者、暴動を扇動した者、

中には愚痴を言っただけで拷問され投獄された

者達も数多く居る。

牢獄内は劣悪で10人程しか入れない牢獄に

30人以上が収容されまともに横になる事も

出来ない。

糞尿は桶が一つ置かれただけで中身が溢れ

蠅や蛆が沸いている。

食事も固いパンと水が一日2回。

拷問されても怪我は汚い布を巻いて終わりと言う

最悪な状況だ。


そんな大人でも耐えられない様な牢獄に一人の

少女が連れて来られる。


ドサッ!


「あうっ!?」


ガラララッガッシャーーン!!


帝国兵士は、まだ年端もいかぬ少女を物の様に

牢屋に突き飛ばし重い扉を閉める。


おうぅ…顔が痛い…。

久しぶりに大人に殴られて顔だけじゃなく

全身が痛い。

けど、それ以上に辛い事があるの。

バベルお兄ちゃん達に迷惑を掛けてしまった事。

私はクインケ帝国と言う国を潰す戦争に着いて行き

帝国の勇者と言う人に攫われてしまった。

その時に一番偉い人が私を人質にして攻撃を

止めるようにバベルお兄ちゃんに交渉した。

私は攻撃を続行して欲しいと伝えたけど……

今、現在攻撃が止んでいる。

私のせいだ……。

私のせいで、優しいバベルお兄ちゃん達の

お仕事を邪魔しちゃった…。

そう思うと殴られていた時には出なかった涙が

溢れてきそうだった。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」


「えぅ?」


涙が出そうになった所で頭の上から声がする。

その声の方向にソルは振り向いた。


「だぁれ?」


「此処の先住民で死にぞこないさ。

 んっ……お嬢ちゃん…眼が…くそっ!

 こんな幼い子供までっ!」


眼?眼は昔から見えないんだけどな。

もしかして私が拷問されたと思ってるのかも。


「違うよ。昔から見えにゃいの!」


「そうなのかい?でも随分殴られた後も

 あるじゃないか。君みたいなお嬢ちゃんを

 殴るなんて鬼畜めがっ!」


「爺さん、声を抑えな。また痛めつけられるぞ?」


憤慨している声とは別に野太く低い男の声が

ソルの耳に届く。


190…ガッチリとした体型で筋肉質な声なの。

足運びが普通の人じゃない感じ…騎士様か兵士様かな?

もう一人の怒っていた人は60歳ぐらいで

随分痩せている感じ。


ソルは声を聞いただけで相手がどんな人物かを

想像した。

そして、それはピタリと的中している。


「ふんっ!先代の皇帝の犬が偉そうにっ!」


「はっ!今では殺処分待ちの野良犬だがな。

 しかし…嬢ちゃん、お主は何をやらかしたのだ?」


憤慨していた男が吐き捨てる様に言った言葉を

気にもしない男がソルに声を掛ける。


「だぁれ?」


「おっと!申し遅れた。私は元帝国騎士団隊長の

 ファベーラと言う。と言っても先代に仕えていてな。

 今の皇帝になってからは投獄された身よ」


「お嬢ちゃん、儂は、ロックスじゃ。

 これでも高位の魔法使いなんじゃよ。

 まぁ…帝国魔法旅団の誘いを断ったせいで

 投獄されたんじゃがな」


ロックスとファベーラと名乗った二人の男は

自己紹介と何故投獄されたのかをソルに伝えた。


「わたちは、ソル!お兄しゃんと一緒に

 帝国に来ちゃら捕まったの……」


自分で言っていてシュンと肩を落とすソル。


「ご兄弟と帝国に来ただけだと言うのに

 捕まえて殴った挙句に投獄なんぞしおって!

 あの悪魔めがっ!!」


「爺さん、落ち着けよ」


「落ち着けるかっ!先代の皇帝も糞野郎じゃったが、

 今の皇帝は鬼畜以下の塵虫じゃ!!

 国民を気分次第で処刑するわ、拷問するわで

 やりたい放題じゃろうが!!

 帝国民が、どれだけ犠牲になったと思うとる!」


「……それに関しては申し訳無いと思っている」


ファベーラは奥歯を強く噛みながら俯く。


ロックスお爺ちゃんが怒っているの。

声だけじゃなく色も真っ赤。

多分、沢山酷い事をされたんだと思う。


「五月蠅いぞ!塵共が!」


急に響く怒鳴り声。

声の持ち主は、如何やら牢獄を監視していた

兵士の様だった。


「塵はどっちじゃ!民が餓えて苦しんでると言うのに

 貴族や皇族は贅沢三昧!

 貴様等、国民を守る筈の騎士や兵士共は

 汚職で腐りきっておるじゃろ!!

 貴様等こそ塵じゃ!戯けが!」


ロックスに言われた兵士はみるみる顔を怒りに

染めて牢獄内に入ってくる。


「また痛めつけられてぇか!糞爺がっ!!」


バキッ!!


「ぐわっ!」


ロックスが棍棒で顔面を思いきり殴られ

地面に吹っ飛ぶ。


「止めちぇ!!」


更に追い打ちを掛けようとする兵士にソルが

足元にしがみつき制止しようとする。


「っ!?この餓鬼っ!離しやがれ!死神めっ!」


兵士が思いきり足を振りほどくと小さなソルは

壁に叩きつけられ倒れる。


「嬢ちゃん!?」


「あんまりだっ!まだ子供じゃないか!?」


ロックスとファベーラ以外の者達がソルを介抱

するように庇い兵士達を睨む。


「けっ!てめぇ等その餓鬼が何者なのか

 知ってて庇ってんのかよ?

 そいつはな、死神だ!国喰いバベルが率いる

 ゲヘナに所属してるとんでもねぇ餓鬼なんだよ!」


兵士が、そう告げるとロックスやファベーラ、

他の者達を眼を見開きソルに眼をやる。

ゲヘナの存在は牢獄に収監されている者達も

知っている様だった。


「けど、こいつを人質にしたら攻撃が止んでな。

 へっ!こんな餓鬼の為によ。

 とんだ変態野郎だぜ。どうせ夜な夜な相手している

 お気に入りか何かだろ。獣人も相手出来ねぇ

 短小野郎だな!がっはははははは!」


「………バベルお兄しゃんを悪く言うな」


「あ?」


ソルは自分でも驚く程怒気を含みながら

兵士に向かって言葉を発する。

多分、今まで生きて来た中で一番腹が立っていると思う。


バベルお兄ちゃんは、そんな人じゃない。

魔女と呼ばれ忌み嫌われていた私に食べ物をくれた。

暖かい毛布も自分だけの部屋もくれた。

技術も学問も優しく教えてくれた。

大きいお兄ちゃんも、お姉ちゃんも皆、

優しく迎え入れてくれた。

私を必要だと言ってくれたっ!!


「バベルお兄しゃんを愚弄しゅるなぁ!!」


ダッ!と兵士に向かって走るソル。

それを目掛けて兵士が棍棒を振り上げ降ろす。

棍棒が頭に当たる瞬間、ソルは身体を捻り

躱す。

兵士も躱されると思っていなかったのか驚愕の

顔をしている。

ソルは、そのまま全力で兵士の股間に頭突きを

かます。


「んっぐぅおおおおおっ!?」


いくら鍛えた大人でも股間は子供でも大人を

倒せる急所だって剣崎お姉ちゃんが言ってたもん!

ソルは、そのまま蹲る兵士の背中に覆い被さると

腰に差してあった短剣を引き抜く。


「…頸動脈」


ボソッと呟いた瞬間、ソルは兵士の頸動脈に

短剣を突き刺し引き斬った。

夥しい鮮血が噴き出し牢獄内を赤く染め上げる。

その信じられない光景に残りの兵士も投獄された

者達も眼を離せず固まっていた。


「な、なんて事しやがる!?この餓っっごぼぉ!?」


固まっていた兵士が我に返り剣に手を掛けた

瞬間ファベーラが兵士の頭を掴み、そのまま

固い壁に叩きつける。

致命傷だったのか兵士の頭は潰れドシャっと

音を立てて倒れた。


「ファベーラしゃん!」


「ソルよ!言いたい事も聞きたい事も山程あるが

 それ処では無いぞ!

 他の兵士達も異変に気付き直ぐに来る!」


ファベーラの言葉に頷き他の者達に顔を向けるソル。


「皆…わたちは逃げるよ!皆は、どうしゅる?」


その言葉に全員が戸惑い、どうするか迷っている。

いざ脱獄するとなっても中々直ぐに行動出来るものでは

無い。しかし……次の言葉。

少女の言葉とは思えない言葉を聞き全員が決意する。


「どうせ死ぬなら戦って死のうよ」


舌足らずでは無い淀み無く強い言葉。

これが決めてだった。

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