バベルの世界「追撃」
毎度、毎度遅くなりスイマセン!(T_T)
「皇帝陛下が襲撃されたぞ!」
「兵士達は検問箇所に集合!騎士達は
城の周りを固めろ!急げ!」
クインケ帝国の城内は騒然としていた。
騎士も兵士も怒号の様に声を荒げ
周りに指示を出し、執事やメイド達も
バタバタとせわしなく行動している。
コッコッコッ。
一人の執事が速足で真っ赤な絨毯が
敷かれている城内の廊下を歩く。
何処を見てもメイドや騎士が慌てた
顔で動いているにも関わらず、その
執事は顔色一つ変えずに周りを確認しながら
手洗い場の個室に入る。
執事は鍵を閉めると壁の隙間に内ポケットから
取り出した鋭利な刃物を取り出し挿しこんだ。
ゴリッゴリッと煉瓦を少し削りガコッと
一つの煉瓦を取り出す。
その後も幾つかの煉瓦を取り出した。
すると、壁の向こう側に少しの空間が
出現し執事は空間に手を伸ばし
一つの麻袋を取り出した。
流石ですね。
準備万端じゃないですか。のっぺら坊の奴。
どうも、皆さん。
名無しの権兵衛です。
現在、騒然としている城内に執事として
潜入しています。
えっ?何故って?
いや、皇帝殺そうかな…と。
なので、準備しているんですよ。
執事に扮した名無しが麻袋の中身を
取り出していく。
H〇416カスタム一丁。弾丸300発。
HK〇5ハンドガンサイレンサー付き。弾丸60発。
コルト〇5サイレンサー付き。弾丸30発。
M6〇グレネード。6発。
プラスチック爆弾。2㎏。
チェストリグ。一着。
中々色々と入ってますね。
チェストリグは……今は紳士な執事なので
後で着用しましょう。
コルトはサイレンサーを外してベストに
入れておいて、と。
ガチャ!ジャキッ!
チャキッ!
手際よく名無しが個室で準備していると
外から気配を感じる。
「やっべぇよ…魔族かなぁ?」
「いや…噂ではゲヘナって聞いたぞ」
「マジかよ…逃げてぇ」
「もし攻め込まれんで来たら俺達みてぇな
兵士は最前線だぜ…俺も逃げてぇよ」
ふむ。如何やら此処の兵士諸君が
お花摘みに来たようですね。
その会話を聞いてる限りゲヘナが
攻めて来たと思っていると。
正解です。
とゆーか、貴方達の後ろに居るんですけどね。
よし!
ご挨拶しましょうか。
ガチャリと扉を開けて花摘み中の2人の
兵士に声を掛ける。
「こんにちは!いやぁ、大変な事になりましたね」
執事姿の私が姿を現すと一瞬ビクッと
肩を震わせるが「私も避難したいですよ…」と
悲壮感を漂わせて口に出すと兵士達は
ホッとした様に溜息を吐く。
「あんた等、執事やメイドは良いだろ?
城内に籠ってられんだからよ」
「いえいえ!私達も戦々恐々ですよ。
皇帝陛下の機嫌次第で首が飛びますし…。
ましてや、襲撃された後ですよ?
正直、膝が笑ってしまいます」
執事が此処までハッキリと答えた事が
意外だったのか兵士達は眼を丸くした後に
小さく「……確かに、そうだな」と呟く。
「所で、今陛下は?」
「いや…俺達みてぇな下っ端は知らんな。
けど多分、部屋で護衛達と一緒に居るん
じゃないか?」
「あぁ、3階の部屋ですか?」
「違う、違う!陛下の部屋は4階だろ?
何言ってんだよ。新人か?」
「実は…まだ日が浅くて…」
「そうなのか。出身は何処なんだ?」
「ゲヘナです」
そう答えた瞬間にサイレンサー付きの拳銃を
向ける。
ドシュ!ドシュ!
2人の頭を撃ち抜くと糸が切れた操り
人形の様に兵士達が倒れる。
即死だ。
死体を個室に隠し手洗い場から素知らぬ顔で
出る。
目標は4階ですか。
確証は無いですが行く価値はあるでしょうね。
行きますか。
名無しは麻袋を持ちながら廊下を
歩く。
もし麻袋の事を聞かれたら食材とでも
言っときましょう。
コッ、コッと歩いて行くと目の前に豪華な
階段が見えて来たので上がる。
上がっている最中にガチャガチャと鎧を
装着した騎士達が何人も降りて来たので
右に避ける。
特に怪しまれる事は無かった。
騎士の後ろ姿を確認し階段を上り切り
長い廊下を歩いて行く。
此処は何やらメイドや執事が多く
動いている。
もしかしたら、声を掛けられるかも
知れないですね。
「おい、君。待ちたまえ」
早速フラグ回収です。早い回収ですね。
私は気付かないふりをして歩きを止めない。
「待てと言っている!」
そう言って肩を掴んできた。
一芝居打ちましょうか。
「探しましたよ!何処にいらっしゃったのですか!?
大事なお話があるのです!
こちらでは不味いので、こちらの部屋で!」
「お、おい!?ちょっ!?」
相手が何かを言う前に近くにあった扉を
開け2人で中に入る。
ドシュ!ドシュ!
ガチャ…パタン。
ふう!これでOKです!
んっ?さっきの方ですか?
ベッドで休んでますよ。頭と胸から大分
血が流れてましたので休ませておきました。
んじゃ、行きますか!
名無しの権兵衛が歩を進めて行くと目の前に
重厚で煌びやかな扉が現れ、その前には重騎士が
4人警護している。
「停まれ!此処から先は入る事は出来ん!」
騎士の内、一人が槍を向け制止してくる。
身内に化けてるんですから槍なんか向けないで
下さいよ。どんだけ信用してないんですか?
「すみません!これを渡す様にと!」
私は2つのグレネードを騎士に渡す。
「何だ?これは。誰からだ?」
「メイド長からです。何でも、その輪っかを
引き抜いた後に皇帝陛下に渡す様に…と」
嘘ですけどね。
この世界の連中にグレネードなんか渡しても
解らんでしょうし。
「メイド長だと?」
んっ?あれっ!?空気が変わりましたね。
あっ!これ俺やっちゃったかもしれないですわ。
騎士達4人が槍の矛先を向けて怒鳴る。
「メイド長は現在、部屋の中だ!
我々は、何も受け取るなと指示をされているし
その様な伝達はされていない!!
何者だ!?貴しゃっっばぁ!?」
一番近くにで何やら怒鳴っていた騎士の頭を
素手で掴み逆方向に捻り上げ首を折る。
その背後から、もう一人の騎士が鋭い突きを
放ってくるが半身になり避け槍を掴み
袖から仕込み針を出して喉に一突き。
喉からピュッ!ピュッ!と血が噴き出て
倒れそうになっている騎士の身体に身を
隠しつつ先程のグレネードのピンを外し
残りの騎士に放り投げる。
ズドンッ!!ドガンッ!!
耳を劈く様な爆音が響き渡り煙が立ち込める。
「ふむ。全員排除ですね。
まっ、派手に音を出したので部屋の中が
騒がしいですが……派手にやりますか」
名無しはグレネードを食らって半身が
吹っ飛んでる騎士の身体にグレネード一つと
プラスチック爆薬500gを括り付ける。
勿論、派手に殺るつもりなので紳士は
終了。チェストリグを装着しアサルトライフルを
装備した。
そして、バンッ!と扉を蹴破る。
「なっ!?誰だ!貴様!?」
「お届け物でぇーすよっと!!」
名無しは上半身だけになった爆弾付きの
騎士の身体を部屋に投げ入れ直ぐに物陰に
隠れる。
そして、3秒後。
ズドドーーッ!ガッシャーーンッ!!
大きな爆発と聞こえて来る悲鳴。
名無しは物陰から出て粉塵が舞う部屋に
向け動いている者を全て射殺していく。
ズダダダンッッ!ダンッ!ダダダダダッ!!
「ぐわっ!」
「きゃああああっ!誰かぁ!誰か助けっぐへっ!」
30秒程、動く者を撃ち続けると辺りは
静かになり粉塵も晴れてきた。
殺しましたかね?
さてさてぇ、どうかなぁ。
ザリッ…パキンッ…と瓦礫になった部屋を
歩きながら対象者が居ないか確認する。
メイドさん…メイドさん…騎士に…
また騎士。
服装が立派な奴も何人か居ますけど
皇帝の姿が見えませんねぇ。
確かに騎士爆弾を放り投げる時に
チラッと皇帝を確認したんですけど。
ふぅむ。
パキッ…ズズッ…。
首を傾げている名無しの後ろから音が響き
振り返る。
ああ、どこぞの貴族か何かですかね。
両足が吹っ飛んでて這いずって逃げようと
してる。
この方に聞いてみますか。
「こんにちは」
「ぐうぅ…うぅ…早く…早く逃げなくては…」
聞こえて無いのか無視しているのか?
名無しは溜息を吐きながら切断された
足の断面を踏みつける。
「ぎゃああああ!痛い!止めろお!!」
「いやぁ!良い天気ですね!所で皇帝は?」
「ぐあああっ!ぎっ!ぎざまっ!
何者だぁ!!この侯爵である私をおおおお!?」
戯言をほざく男の傷口を更に強く踏む。
「皇帝は?答えないと殺します」
「ぐうぅぅぅ……皇帝は…勇者と共に
逃げた……筈だ!
くっくっ…我々に、この様な仕打ちを
した事を後悔させてやるぞ!」
あぁ…転移って奴ですか。
そー言えば勇者の一人で瞬間転移なんて
チート持ってる奴が居るって聞いてましたね。
羨ましいですねぇ。
そんなチートあったら私の仕事も大分、
楽になるんですが。
「貴様!?聞いてっっ!!」 ドンッ!
名無しは相手の頭を見向きもせず
撃ち抜いた後に何事も無かったかの様に
倒れている椅子を元に戻し座る。
また探さないと駄目ですねぇ。
死臭漂う部屋でぼやく名無しであった。




