バベルの世界「対面」
京香が暴れた冒険者ギルド『ズーハー』の中は、
悲惨だった。
割れたカウンター、壊れた椅子や装飾品…
そして床に転がる15人程の冒険者達。
明らかに死んでいる者、冒険を続ける事が
不可能な程の大怪我をしている者もいる。
命があるだけ良かったと思う…と信じたい。
「受付のお姉さん、イザベラちゃんだっけ?」
京香が、先程の受付嬢…確かイザベラだったかな。
その子に話掛けている。
「ひゃ!ひゃい!!」
あまりの恐怖で噛みまくっている。
「海と山、どっちが好き?」
「えっ!?え?あああの、どーゆう…」
「だからー、海と山どっちが好きって
聞いてんの?その耳は、飾り?」
うん!京香の会話が何か怖いな。
立場が完全に逆転してる。
「わわ私は、山が…すす好きです…。」
「じゃあー、細切れにして山の肥料に
なってもらおうかな!」
満面の笑みを浮かべながら、鎌状のナイフを
イザベラの喉笛に付けつける。
「ヒッ!!ゆ…許して下さい…先程の
無礼は…謝罪致しますので……
どうか…。」
大粒の涙を流しながら謝罪するイザベラ。
それを聞いて満足したのかナイフを下ろす。
「あははー!冗談だよ、冗談!
本気で殺す訳無いじゃーん。」
ケラケラと笑いながらイザベラの肩をバシバシ叩く。
イザベラも許して貰った事に、ホッとし、二枚の
カードを差し出した。
「こちらに、必要事項を、ご記入下さい。
記入致しましたらFランクからの
スタートで御座います。」
「えっ!?冒険者になれるの!?」
「!?」
驚いている京香とガストラに対し、先程まで
震えていたとは思えない程、凛っとしている
イザベラに流石プロと思った。
「本来なら、Fでは無くAランクからでも
良いと思うのですが…依頼達成率に比例して
上がるので最低ランクからになります。
何卒、ご容赦下さい。」
ペコリっと頭を下げる。
「いいよ!いいよ!それに、いきなりAランク
なんて周りが納得しないっしょ!」
必要事項を記入し終え、木札の冒険者カードを
受け取る。
イザベラの説明によると、ランクが上がれば、
カードも鉄⇒銅⇒銀って感じで変わるらしい。
最高ランクのSランクはプラチナカードに
なると言う。
京香とガストラは、興奮しながら聞き入っていた。
「用が済んだら行くぞ。こっちが本業なの
忘れないでくれよな。」
冒険者ギルドを出ようとした時、不意に扉が
開き怒号が聞こえた。
「何じゃい!!これはぁ!!?」
声を荒げた男の獣人は、身体はデカく両腕に
鎖を巻きつけ炎のような赤い髪をしている。
ギルド職員の皆は、その男を見て固まっていた。
そして、俺も固まった。
「コ…コーネル様…。」
「イザベラァ!!これは、どーゆう
状況じゃ!!?
儂のギルドがボロボロじゃねぇか!!」
コーネルは、ギョロギョロと周りを見渡し顔が
徐々に赤くなっていく。
「あ、あの…これは…。」
明らかに、しどろもどろになっているイザベラに
同情してしまう。
とゆーか間違いなく、俺の方がヤバイ!!
「最悪だ…こんな所で、コーネル・ガウンに
会うなんて…殺される……。」
ガタガタと身体が震え始める。
「あぁん!?何で、此処に人間が
いやがる!それに…オメェは獣人だな!?
んん!?獣人一匹に人間が4匹…」
ヤッバイ!!まじで、ヤバイ!!
あれだけの事したんだ。情報が行ってない訳無い!!
絶対にバレる!!!
「テメェ等……テメェ等かあああぁぁ!!!!
俺の大事な子供達を殺ったのわあぁぁ!!!」
尋常ではない声量に周りの物が震える。
とんでもなく怒り狂っているコーネルの横を
すり抜け金髪の髪を後ろに束ねた男が一直線に
ガルの方向に向かう。
『ギィーーン!!』
金属音がして気が付いた。
いつの間に、抜かれたのか解らない細長い剣。
そして俺の首ギリギリで止めてくれた京香の
ナイフ。
何が、起こったのか全然解らなかった。
ただ、京香が止めてくれなかったら、間違いなく
首が飛んでいた。
「人間に受けられるなんてショックだね。」
「ガルちゃんに粗相は、させないよー。」
京香は、瞬時にゼスの剣を受け流しホルスターから
拳銃を抜く。
「!?」
瞬時に嫌な感じに気付き京香から離れる。
『パンッ!パンッ!!』
乾いた音がした瞬間、ゼスの肩から血が滲む。
ゼスは、何が起こったのか理解出来ていないように
眼が丸くなり、汗が一筋ツーっと流れ落ちる。
「へぇぇ、よく避けたね!さっすが!!」
拳銃の銃口を、向けたままゼスを賞賛する。
「…何かな?それは…僕の眼でも見えなかったよ?
新しい魔法?それとも魔道具?」
肩を打ち抜かれたにも関わらず冷静に質問してくる。
「ゼスゥゥ!!?何やっている!!
大丈夫かぁぁぁぁ!!?」
怒鳴ってんのか、心配してんのか
全く解らないな。
「掠り傷です。問題無いですよ。」
息を一つ吐き、剣を構え直す。
「あはは、掠り傷かー!じゃあ、これは
どうかな?」
既に、京香の後ろに居たガストラとボスが
アサルトライフルを構えていた。
京香がガルを抱え射線から外れた瞬間。
『ズダダダダダダダダダダダダダ!!』
『ドンッドドンッ!ドドドドドドン!!』
「うわっ!!?」
「ぬぅ!!?」
バタバタとコーネルが率いていた部下が
倒れていくが、けたたましく続く発砲音は
止む気配がない。
『ダダダダダダダダン!ダンッ!』
『ガチッ!ガチャ!ジャキ!ズダダダダ!!』
弾が切れても一瞬で弾倉を替える。
多分、2秒くらいで交換する手際は場馴れ
している証拠だ。
そのせいで、コーネル達は全く反撃出来ないでいる。
「なんじゃあぁぁ!?あれは!?」
「何て、厄介な物持ってるんですかね!?
あの人間達は!!」
コーネルもゼスも相当な実力者だ。なのに、
人間が持っている銃に手も足も出ない。
当たり前だよな。
剣と弓が主流な世界で、こんな物騒な武器に
敵う訳無い。
でも、お陰で今回は助かる……んっ?
ボスとガストラ何持ってんだ?
何か…緑っぽくて丸い玉みたいな…おっ!小さな
輪っかを引き抜いたぞ…待て、スゲェ嫌な
予感する。
「Удалено」(吹っ飛べ)
「イザベラちゃーん!ゴメン!半分、
吹っ飛ばすわー!!」
「へぇ!!!!??」
ボスとガストラは、コーネル達が隠れている
場所に、それを放り投げた。
『ゴトンッガンッ!コロコロッ』
投げたと同時にボスに頭を掴まれ、床に顔から叩き
付けられ、伏せの状態にさせられた。
いきなりだったから、変な声が出てしまったのは、
内緒だ。
「これは…?」
「何?」
目の前に転がる緑の球体を凝視した。
『チュドォォオオォオォン!!』
でかい爆発音がした後、ガラガラとギルドの
屋根の一部が崩れ、半壊した。
コーネルとゼスの姿も見えない。
運が良ければ生きているだろうが、まぁ…
俺的には、お亡くなりになってもらった方が助かる。
周りを確認したら、ギルド職員が数名気絶。
イザベラは、耳がペタンと伏せて茫然自失。
冒険者15人程が死亡。
コーネルの部下11人が死亡。
………やりすぎだ…。
頭を抱えて俺もペタンっと座り込む。




