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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
239/248

バベルの世界「誤算」

遅くなり申し訳無いっす(T_T)

バベルが炊事担当になってからと

言うもの監獄の食事は一変した。

新鮮な野菜、肉汁滴る焼肉、

ふわふわのパンに具材がゴロゴロ

入っている濃い味付けのスープ。

おまけに、果汁ジュースまで。


最初は、当然驚愕した。

囚人も看守もだ。

犯罪を犯して投獄された囚人なのに

貴族でも食べれない様な食事が

食堂に並べば誰でも驚く。


そして、漂う良い匂い。

今まで残飯の様な飯しか食っていなかった

囚人達には到底我慢出来る匂いでは無かった。


我先にと飛付こうとする囚人達に

バベルが一喝する。


「並ばない奴には、食わせんぞ?」


現金な者でバベルの言葉を聞いた

囚人達は綺麗に並び、子供の様に

涎を流し今か今かと我慢する。


そして、待ちに待った食事を手にし

席に座り、先ずはスープから。

分厚く切られたベーコンと芋。

後は、見た事の無い野菜が入っている。


そんな熱々のスープを囚人達は、

口に掻き込み咀嚼する。

スープを目一杯吸った野菜から

旨味が出てベーコンの塩気が堪らない。


これがスイッチになったのか囚人達は

皆、誰一人喋らず無言で、ただただ

食べた。

貪ったと言う表現が正しい。


ある者は、食事の旨さに驚愕し、

また、ある者は感涙した。


そんな様子を呆然として見ている

看守達。

今まで見た事の無い光景に驚き、

そして悔しかった。


何故なら、囚人達の飯はバベル率いる

炊事班が作っている。

看守達とは、別なのだ。

囚人達は、自分達が今まで食べた事の

無い未知で豪華な食事をしているのに

自分達の食事は何だ!?


固い黒パンとチーズに塩味しかしない

魔物の肉。

たまに、ワインが出る質素な食事だ。


当然、面白く無い。

いや、腸が煮えくり返る思いだった。

バベルが投獄されて6日が経った時に

大事件が起こる。


アビス監獄長がバベルの炊事班を

解任したのだ。

理由は、不正に手に入れた食材を

本来、厳罰に処されている

囚人達に与えたと言う理由だった。


この決定が下された時に看守達は

大いに喜んだ。

ざまぁみろ!と。


しかし、これが大きな大きな間違いだった。


囚人達は毎日食事を楽しみにし

懲罰房に入らない様に規律を

守り問題行動も起こさなかった。

例え理不尽な看守の暴力にも我慢した。

我慢すれば美味しい食事が食べられると

思ってだ。


なのに、バベルの炊事班解任。


あの食事はバベルが混沌の指輪を

身に着け自腹で買っていた食材だ。

だから、バベル以外に作る事は

出来ない。


食べれないのだ。

あの、美味しい!涙が流れた食事を!


囚人達は爆発した。

地上階に居る全ての囚人がだ。


後に【アビス監獄魔の7日間】と

語り継がれる程の大暴動に発展する。

囚人達の殆どが隠し持っていた

手製のナイフや鈍器で次々に襲撃。

応戦しようにも看守が何人も殺され

鍵を奪われているので次々に

凶悪犯が監獄外に出てくるのだ。


建物は破壊されていき火も

放たれた。

事の重大さに監獄長のヴァイオレットも

精鋭を引き連れ鎮圧しようとしたが、

囚人達の勢いが全く止まらない。


暴動鎮圧に参加した精鋭の一人は

こう証言している。


「正直、恐ろしかったよ。

 あの光景は忘れられない……

 俺達が何人も斬り捨てたのに

 一向に勢いが無くならないんだ。

 一人……また一人仲間が死んでいった。

 地獄だったよ。たかが飯だろ!?

 そんな事の為に………クソッタレ!」


彼が言う様に、たかが飯だ。

しかし、されど飯。

生きて行く為に絶対に必要な食事だ。


貴族出身のヴァイオレットや精鋭達には

理解出来なかったのかもしれない。

だが、食い物の恨みは海より深い

なんて言葉がある程だ。

一度知ってしまった甘美な食事を

奪われれば我慢など出来る筈が無い。


結局、ヴァイオレット達では止める

事が出来ず軍が投入される事態にまで

発展し双方、多大な被害が出る事に

なった。

今回の事態を重く見た魔王は監獄の

食事改善と言う名目でバベルを炊事班に

戻す事になる。


「ヴァイオレット、大丈夫か?」


「大丈夫そうに見えるかしら?」


ヴァレンティーナがヴァイオレットを

心配し監獄長室に足を踏み入れ声を

掛けるが本人は一杯一杯の様だった。


「あの人間……バベルが投獄されて

 たった数日で100人以上の看守が

 死んだわ…」


「そう…だな…」


ヴァイオレットはバベルの事を

調べ上げて、どんな奴か知っていた。

スラムを支配し我々が住まう魔国

より強大な大国を滅ぼしゲヘナと

呼ばれる最悪の犯罪組織のトップ。

しかし、監獄に入れば如何なる

凶悪犯でも心が折れると信じていたのに。

とんでも無い過ちだった。


「知ってるかしら?今のバベルは

 地上階の監獄を好きに闊歩してる。

 周りの囚人達も逆らわない……

 たった数日よ!?たった数日で

 アビス監獄は一変したわ!!!

 何百年も犯罪者達の恐怖の象徴だった

 アビス監獄が今では犯罪者達に

 とって楽園になりつつあるの!!

 馬鹿げてる!

 処刑すべきよ!!!」


バンッ!と机にヒビが入る程、強く

拳を叩き付ける。


ヴァイオレットも理解している。

あの男を処刑出来ないと言う事を。


「すまない…ヴァイオレット」


「………ごめんなさい。私も取り乱したわ」


ふぅ…と深い溜息を吐く。


「処刑なんて無理なのは知ってる。

 もし彼を処刑したら私達の国が

 消されるものね……」


そう、消される。

間違い無く消される。

魔国は煤塵と瓦礫になり山の様に

国民達の屍が積み重なる。

バベルの組織は、それが出来るのだ。


「あの人間は災害と耳にした事が

 あるが本当だな」


「ただの災害じゃないわ。意思を

 持ってる災悪の災害よ」


ヴァイオレットは冷めた紅茶を

口に含み喉を潤す。


「そっちは、どうなの?ヴァレンティーナ」


「良く無い。あの魔王様が倒れそうだ」


「ゲヘナと契約、取引している国は

 かなりあるみたいだしね」


「あぁ…信じられん事だがな」


ゲヘナの影響力は凄まじい。

小国は、こぞってゲヘナの庇護に

入ろうとし他の大国ですら迂闊に

手が出せない。

アトランティスと呼ばれる場所には

各国裏組織の大物や盗賊団、傭兵、

指名手配されている犯罪者までも

傘下に入っており、そーした者達は

少なからず国の暗部を知っている。

だから、尚更手が出せないのだ。


「それと、バベルが手配した数千の

 奴隷達が我々の国に向かっている」


「規模がデカ過ぎなのよ……」


「それだけじゃない。七大厄災と

 呼ばれている魔物2匹と5万の

 ゲヘナ直属の兵士が向かっていると

 情報を掴んだ」


ヴァイオレットは、その言葉を聞き

頭を抑える。

七大厄災と言えば一匹で国を

滅ぼしかねない程の力を持っている

魔物だ。それが2体も?

しかも5万の兵士?

冗談では無い。


ゲヘナ直属の兵士と言えば

強者ばかりと聞いている。

小国程度なら下手をすれば5千人

規模で制圧出来る化物集団で

人間の兵士達などバベルの為なら

喜んで死ぬまで戦う狂人だ。


「本来なら40日程掛かる道のりを

 見た事の無い乗り物に乗り大軍で

 押し寄せている。

 多分、後、10日も掛からん」


「正直、逃げ出したいわ……」


「相手の出方次第だけどバベル釈放の

 準備をしておいて」


「悔しいけど……解ったわ」





9日後。




私、ヴァイオレットとヴァレンティーナの

前に屈強な身体付きをしている2体の魔物が

立っていた。



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