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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
231/248

バベルの世界「侵攻」

時間は、吟遊詩ギルド爆破直後に遡る。


「これは、一体どーゆう事だ!!」


僕達は、ヴァレンティーナ率いる魔国軍に

完全包囲されていた。

元騎士団に所属していた僕も、ウィンザーも

セシルも当然ながら兵士達に剣や槍を

向けられている。


やぁ、僕はグレイ。

元ファルシア大国騎士団隊長だ。

今から何故、僕達が取引相手の魔族達に

包囲されているか説明するよ。


簡単に言えば、ガストラが吟遊詩ギルドのせいで

ブチ切れちゃってね。

吟遊詩ギルド魔国支部を跡形も無く爆破したんだ。

当然、そんな事が起これば憲兵達では対応が

出来ないので軍が介入。

状況をバベルが説明したら見事に包囲って感じさ。

当たり前だよ。

国に存在する重要なギルド支部を

吹き飛ばしたんだから。


「貴様等!やはり我々の国を侵略しに来たのか!?」


「断じて違う。だが、今回は俺達に非がある事は

 認める」


ヴァレンティーナさんが、僕達の事を侵略目的で

訪れたのかと怒鳴る。

確かに、そう思われても仕方ない。

なんせ今回の爆破事件でギルド施設は完全に

瓦礫と化し、死傷者が現段階で数十人出ている。

それだけじゃなく爆風で近くに建てられた建物も

倒壊してるんだ。


「貴様等、全員監獄行きだ!衛兵!連行しろ!」


「待て。今回は俺達にも責任がある。

 尻拭いとしてガストラ拘束を協力する。

 とゆーか俺達が協力しねぇと拘束しに行く

 連中が皆殺しにされるぞ」


「ふざけるな!ギルド施設を爆破した奴の人間共など

 信用出来る訳が無いだろう!!」


うん。御もっとも!

僕がヴァレンティーナさんの立場なら絶対に

信用なんかしない。

だけど、今回ばかりは嫌が応でも無く信用

して貰わないと困る。


「信用出来ねぇのは解る。だが相手が相手だ。

 お前達だけなら間違いなく死ぬぞ。

 これ以上被害を出したくなけりゃ信用しろ」


流石にバベルも非があると思ってるので

強い口調では言わない。

けど、此処でヴァレンティーナさんが

バベルの協力を拒否したら死人の山だ。

彼等、魔族軍やヴァレンティーナさんは

ガストラと言う相手を全く知らない。


バベルの護衛でありゲヘナの大幹部のガストラは

そんじょそこらの兵士じゃないんだ。

魔法の類は使えないし、剣の腕前は僕達より

下の方だ。

それだけ聞くと大した事が無いと思うが

それは僕達の世界での戦闘に照らし合わせた時だ。


実際のガストラは、狙撃銃と言う武器を使用するし

1000m~2500m内であれば確実に

相手の頭を吹き飛ばせる事が出来る。

彼の最高記録は3000m離れた敵を狙撃して

殺害してるんだ。

考えてもみたまえ。

敵が全く見えないのに隣に居た兵士の頭が

いきなり吹っ飛ぶんだよ?

恐怖でしか無いだろう?


それだけでも脅威だと言うのにガストラは

爆弾や爆破のスペシャリストときている。

ガストラの狙撃も怖いが爆弾も心底怖い。

まず、魔力が通じて無いので探知が不可能と言う点。

僕達の世界でも炸裂魔法なんてものや術式が

彫ってある魔道具が存在する。

これは少なからず、魔力を用いるので僕達みたいな

魔法を使える者達なら多少探知は出来る。

けど、ガストラが使用するのは機械工学や

科学技術で作成された爆発物なので

一切魔力が通っていない。

そのせいで、ファルシア大国内戦時に

多くの市民、兵士、騎士が犠牲になった。

しかも安価で金貨一枚程度でガストラは、

辺り一面を火の海に出来る爆弾も作製出来るんだ。

質が悪いったら無い!


そして最も最悪なのがガストラが精鋭中の精鋭で

戦争のプロと言う点だ。

ハッキリ言って、僕達の世界でボス、京香、ガストラに

並ぶ戦争経験者は居ないと思っている。

場数が全く違うんだ。


何度か模擬戦を経験した事があるけど

勝てる気がしないよ。

確か、僕を含めた騎士団とボス達の元で訓練を

積んだ兵士達50名でガストラ一人と戦うと言う

内容だったのだけど、あっと言う間に全滅だ。

殆ど、狙撃とトラップで倒された。


そんな化物を訓練じゃなくて実戦で相手するんだ。

間違いなく、ボスと京香の協力が無ければ

ガストラを拘束するなんて不可能だ。


バベルも、今僕が考えていた事に近い事を

ヴァレンティーナさんに説明していた。


「……本当に、それ程脅威的な男なのか?

 あのガストラと言う男は」


「脅威だ。ハッキリ言って手加減出来る相手じゃない。

 それに、ガストラの懸賞金だけ見ても只者じゃない事

 ぐらい解るだろ?

 あの懸賞金でも俺は過小評価してると思っている」


バベルの言葉にヴァレンティーナさんの頬から

一筋の汗が流れる。


「良いだろう。但し貴様等は我々の監視下の元

 行動してもらう!

 勝手な行動は許さん!それと今回の事件の首謀者

 ガストラ・ラベラを拘束したら監獄行きだ!

 当然、貴様等も重い沙汰が言い渡されるぞ!!」


ガストラが監獄行きと言われウィンザーが悲痛な

表情をする。

そうだよね……恋仲に近いウィンザーは今回の件で

かなりショックを受けている。


「解った。ガストラは勿論の事、責任者の俺と

 ボス、京香の監獄行きで勘弁してくれ。

 他の連中は俺達が脅して連れてきているから

 マジで無関係だ」


「良いだろう!」


バベルが連れて来た兵で無関係な者達は居ない。

これは、魔国軍が来る事前に相談した嘘だ。

大分、ピトーが揉めたが今では納得している。

しかし……ゲヘナのトップと幹部達を監獄に

収監とはな。

諸外国に激震が走るぞ。

只………バベル達が監獄に入った所で…と言う

事なのだがね。




それから、あれよあれよとガストラ拘束作戦の

準備が行われた。

魔国軍は別で準備している。

僕達も、しっかり準備しないといけない。


カチャ!…ジャキッ!!ガコンッ!


チャキッ!シュッ!ジャコッ!


ボス達を含め50名がフル装備だ。


「グレイ、セシル、ウィンザー。

 お前達は鎧を外して軍用の防弾チョッキを着ろ。

 それと今回は剣より短剣だ。

 後、これを使え」


ボスが、そう言って僕達にAK突撃銃を渡してくる。


「………僕達も使って良いのかい?

 それに、鎧は…やっぱ駄目なんだ?」


「緊急事態だからな。使い方はガストラから

 訓練されていたろ?

 それと鎧なんて論外だ。艶を消した奴なら

 未だしも反射する鎧なんて良い的だぞ。

 そもそも、この世界の鎧なんて意味など無い。

 ………それと、ウィンザー」


「お、おう!?」


「意識が乱れてるぞ。気持ちは解らんでも無いが、

 戦場に集中しろ」


「……おう…」


ウィンザー…大分、精神的に追い込まれてる。

本当なら僕達、元騎士団が何か良い言葉でも

掛けてやれれば良いんだけど正直、僕達も

余裕が無い。

普通に怖いよ……ガストラの強さを知っているから

尚更ね。見る人が見れば自殺しに行く様なもんだし。


そして、全員が準備を整えボスの元に集まる。


「今回はターゲットはガストラ・ラベラ元中佐だ。

 知っての通りガストラは俺達同様戦争のプロ。

 今まで戦って来た相手で最も凶悪と言っていい」


ボスの言葉に全員がゴクリと喉を鳴らす。


「お前達は今まで俺達の訓練を

 経験し、場数も踏んで来た。

 それでもガストラの足元にも及ばんだろう。

 だがな、もし今回の任務を成功させれば

 間違いなく、お前達も精鋭の仲間入りだ!

 俺が認める!

 良いか?訓練を思いだせ。自分と仲間を

 信じろ!」


ボスは真剣に僕達に言う。

そして、その言葉を聞いた全員の顔付きが変わった。

ボスが精鋭と認めると言ったんだ。あのボスがだ!

それ程、今回の作戦は難しいと言う事。

けど、乗れ超えれば僕達はまだまだ強くなれるんだ!


僕は強く拳を握り締める。


「……それと最後に言うぞ。

 バベルは生きたまま拘束しろと言っていたが

 本気で殺されそうになったら………、

 ガストラを殺せ」


ボス達からしたら断腸の思いだろうね。


僕達、全員は返事をせず小さく頷いて

軍用車に乗り込んだ。






それから僕達が到着した戦場は、ラズロ魔国が

放置しゴーストタウンになっている地区。

【捨てられた土地】と言う地区だ。

此処は、相当昔に大規模な流行り病が流行し

忌み地として放棄された土地でスラムの

住人ですら不吉と言う理由で近付かない場所だ。

ボスの経験則で言うと間違いなく此処だと言う。


僕達は下車し、ボスの指示で全力で走って

物陰に隠れる。


そんな僕達を見て魔族の兵達が笑う。


「ははっ!あいつ等何してんだ?」

「ビビり過ぎだろ?たった一人相手に」


いやっ!君達、笑い事じゃないよ!

此処に来る前にヴァレンティーナさんに

説明したけど聞いて無いの!?

2500m離れていても相手を殺せる相手なんだよ!


「よし!進軍!!」


ヴァレンティーナが軍の兵士に指示を出す。


ヴァレンティーナさん!何してるの!?

こんな大通りを真っ直ぐ進軍なんて駄目だ!


ボスも声を掛けようとするが距離が離れているし

下手したらガストラに場所を感ずかれる可能性が

ある為、声を出せない。


『グレイ!あの馬鹿を止めろ!』


無線からボスの指示が来る。


『無理だよ!僕からも離れ過ぎてる!』


『仕方ない。あいつ等には犠牲になって貰う。

 様子を見るぞ!全員動くなよ』


ボスが行き成り冷徹な判断をする。

けど、こればかりは仕方ないよね…。


僕達は指示に従い待機する。

すると、直ぐに動きがあった。


ドォォーーーン!!


「ぎゃあああああ!!!」

「うわああ!腕が!?俺の腕がぁ!?」


うわっ!?もうなのかい!?


『IEDだ!そこら中にあるぞ!』


IED!?ええっと!確か即席爆弾だっけ!?

ガストラが持ち出した武器は地雷と迫撃弾と

手榴弾、Ⅽ4だよね!?

もう!最悪じゃん!ガストラなら余裕で

改造しちゃって製作しちゃうよ!!


「お、お前達、慌てず隊列を組み直してっっ!」


ダァーーーンッッ!


この音!?銃!ガストラの狙撃だ!!


「何だ!?小隊長が倒れたぞ!」

「こ、攻撃か!?」


攻撃だよ!早く隠れて!!


ダァーーーンッッ!ダァーーーンッッ!

ダァーーンッッ!ダァーンッッ!

ダァーーーンッッ!

……………。

ダァーーーンッッ!ダァーーーンッッ!


駄目だ…怖すぎて顔を出せない。

声と混乱状況を聞くと既に、結構な数の死傷者が

出ていると思う。


「こ、後退!全員、後退し物陰に隠れよ!!」


ヴァレンティーナの指示で皆が後ろに下がり

物陰に隠れる。


「ハァ!ハァ!ハァ…」


「ヴァレンティーナさん、無事かい!?」


僕達が隠れている建物にヴァレンティーナさんが

滑り込んでくる。その顔色は悪い。


「ハァ…ハァ、グレイ殿、私は無事だが既に

 十数名が死亡した!

 それと、さっきの訳解らん攻撃で17人が

 腹や足に大怪我を負って動けずに居る!

 早く助けださねば!!」


「ヴァレンティーナさん駄目だ!絶対に駄目だよ!」


「そうですわ!行っては駄目です!」


「な、何故だ!?グレイ殿!?セシル殿!?

 早く助けないと死んでしまうぞ!!」


僕とセシルの言葉で声を荒げるヴァレンティーナさん。


「もう助かりません!それに、負傷した兵は

 ガストラの撒き餌です!

 助けようと思って姿を現したら撃たれます!」


「敵の数を減らす狙撃手の常套手段の一つですよ!」


ガストラに教わった事だけどね。

わざと殺さないのは、助け様とする兵士を撃つ為と

負傷した兵士を治療する為に兵が付きっきりに

なるので兵が減る。

えげつない手段だけど実に効率的だ。


「……なんと悍ましい手段をとるのだ、あいつは」


こんなもの序の口だけどね。


「しかし、一体何処から…」


ヴァレンティーナが物陰から少しだけ顔を出す。


「駄目!顔を出さないで!」


ダァーーーンッッ!


その瞬間、発砲音がする。


「ぐあっ!!」


「ヴァレンティーナさん!?」


ギリギリ!本当にギリギリで僕がヴァレンティーナさんを

引っ張った御蔭でヴァレンティーナさんが死ぬ事は、

無かった。だけど…。


「セシル!ウィンザー!額の傷口を押さえて!

 ポーションを使うから!」


「解ってますわ!」


「おう!押さえてるから早く掛けてやれ!!」


ヴァレンティーナさんの額は銃弾が掠って

抉れていた。

出血が酷かったがパっと見、頭蓋骨に損傷は無い

みたいだ。よかったよ…本当にギリギリだった。

ポーションを降り掛けると淡い光を放ち、

傷口が塞がっていく。


「な、何が…起こって……私は…」


「大丈夫です!傷は塞がりましたから」


「あ、有難う……」


ヴァレンティーナさんの傷は塞がった。

けど、狙撃に対する心の傷は簡単には塞がらない。


『京香、スモークを使って隠れながら前進だ。

 他の連中も使用しろ。但し一瞬で手を引っ込めろ。

 撃たれて指が飛ぶぞ』


つああ!怖すぎる!


ボスの指示で渡されたスモーク弾のピンを抜き、

前方に放り投げる。

すると、色んな場所で大量の煙が上がり

視界が一気に悪くなる。


僕達は煙に紛れて少しづつではあるけど、

前進した。


「ボス、ガストラは何処から狙撃したか解る?」


『1.8キロ先にある崩れた教会の建物だ。

 その中で一番高い建物だろう』


チラッと見えたけど確かに、あの場所なら

全体を見渡せるから狙撃手のガストラからしたら

お誂え向きだね。


『今は京香が先行している。お前達は500m

 手前まで進んだら後方支援に努めろ。

 今の距離からじゃ、弾幕を張っても意味ねぇからな。

 本当なら、もっと近づければ良いが危険過ぎる』


そう指示を受け少しづつではあるけど、僕達は

前進した。

僕達が進んだ経路には地雷を改造したIEDが

2つ程あり迂回し事なきを得たんだけど、もう

心臓がバクバクさ。

訓練で見るのと、実際に殺傷目的で設置

されているのでは恐怖の度合いが雲泥の差だよ。


「ウィンザー、どのくらい進んだかな?」


「まだ、200mぐれぇだぜ」


まだ…200m……かれこれ2時間は過ぎて

居るのに、これだけしか進めていないのか。


「京香、こちらグレイ。進行状況は?」


『対象者まで、400mよ。後、少し…でっっ!?』


「どうしたの?京香?」


京香の無線から明らかに動揺が伝わった事に

不安になる。


『グレイ!この先は進めない!!

 ボス!建物の入り口にМ61バルカンを

 設置したトラックが停車して近付けない!!』


京香が発した言葉は、とんでもない言葉だった。

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