バベルの世界「腕試」
おっす!
少年少女学生社会人諸君。
イケメンのラド・バベルだ。
元気にしてたか?
俺は元気で魔国で営業をしていたぞ。
んっ?営業は、どうなったかだって?
はははっ!愚問だな。
しっかり契約してきたぜ。
奴隷を、先ずは5万人。
ゲヘナの戦闘員ランクCクラスを100人。
ランクBクラスを50人。Aランクを25人。
そして、Sランクを2人。
お支払いは、魔族金貨100万枚と
宝飾品と金塊で頂く予定だ。
中々、素晴らしいだろう?
まぁ……条件付きなんだがな!!糞メンドクセェ!
条件ってのは、あれだ。
様は奴隷達と戦闘員達の性能が見たいんだと。
言ってる事は解らんでも無いがよぉ。
要塞を一つ奪還して欲しいなんて言いやがった。
何でも、グアタナモ前線って所が一番の激戦区
らしいんだが、その前線から北に120キロ程
進んだ場所に要塞があるらしいんだわ。
そこが、つい先日に陥落して多数の捕虜と
一緒にクインケ帝国の連中が占拠しているらしい。
んで、白羽の矢が立ったのが俺達。
「ファルシア大国を支配する程の腕前なら朝飯前じゃろ?
それに、我等に売り込むチャンスと言う奴じゃ」
だとよ。
性能次第では追加注文ってのは嬉しいがな。
しこたま売ってやるぜ。
そんで、北の方にある要塞に向かう準備を
してんだけどよ。
「ラド・バベル!見損なったぞ!
魔王様や王妃様に対する無礼の数々!
そして、奴隷達に対する非道な物言い!
私を謀っていたのか!?」
ヴァレンティーナが大きな声で俺に怒鳴る。
謀るって何だよ。
勝手に騙されてただけじゃねぇか。
後、声量少し押さえてくれねぇかな。
常に声がデケェよ。
「だっはっはっ!そんなに怒るなよ。
美人が台無しだぞ~。
おー、よしよし」
「でぇい!!頭をナデナデするな!!無礼者!」
いかん、何か面白いな。この女魔族。
なんつーか、小動物がイキってるみてぇ。
まぁ、キャンキャン騒いでるヴァレンティーナは
別に良いとして問題は向こう。
いや、別に問題って事は無いんだろうけど
面倒事には変わらんけどな。
そこには、ボス達と案内役の兵士達が
睨みあってて、そこの一番先頭に居る偉い方が
腕を組んで仁王立ちしている。
見るからに頑固親父って感じの軍人だな。
「今から向かう場所は、戦場!
戦場とは漢の園だ!危険と死が付き纏う場所に
女子を連れて行く事など出来ん!!」
……あの、おっさんは何言ってんだ?暑苦しい。
ピトーは確かに可愛いが実戦経験も豊富だし
ファルシア大国内戦でも充分活躍した。
間違いなくテメェの後ろに立っている筋肉達磨より
強ぇよ。ボケッ。
京香は言わずともだ。
歳は、あのおっさんより下だけど戦場経験や
実戦ならテメェ等なんか足元にも及ばねぇよ。
後、京香にあんまり女だからとか言うなよな。
スゲェ機嫌悪くなるんだよ。
ソルは……まぁ、確かに戦場は危険だな。
一番先頭で腰に手を当てて踏ん反り返ってるけど。
誰に似たのかしら?
「剣崎様、あの方ですが殴って良いですか?」
「待って!私が殴るから!!」
「京香お姉しゃ!ピトーお姉しゃ!
やっちゃえーーーーーーー!!」
ほらな。京香とピトーの機嫌が最悪だ。
どさくさに紛れてソルが煽ってるのは笑うが。
本当なら止めた方が良いんだが、面白いから
もう少し見学していよう。
「けど、一応バベルの客だから殴るのは
不味いかしら。そうねぇ…なら」
京香は、暑苦しい筋肉の塊に手を差し出した。
「何のつもりだ?」
「力比べしましょ。お互いの手を握って力を
入れるの。それで痛くて我慢出来なくなったら負け。
どう?簡単でしょ?」
京香の提案を聞いて露骨に顔を顰める筋肉男。
「くだらん!女子相手に力比べなど意味など無い!
私の勝ちが決まっているからな!」
おいおい、お前見た目だけで相手を判断すると大怪我
するぞ。
確かに相手が女って理由で優勢だと思うかもしれんが
京香は俺の側近だ。
普通の脳味噌を持っていたら勘づくと思うがなぁ。
まぁ…見た目が完全に脳筋野郎じゃ無理か。
なら、大怪我してもらうか。
「貴方が勝てば潔く引くわ。それとも女相手に
負けるのが怖いの?」
「……良いだろう!後悔するなよ!」
筋肉男は額に太い血管を浮き上がらせ鼻息を
荒くする。
「お…おい!バベル!止めないのか!?
アンドレは、相当な怪力だぞ!!」
「全く問題ない。とゆーか京香に力で勝てる奴が
居たら見て見たいもんだ」
俺の言葉にヴァレンティーナは訝し気な顔をする。
まぁ、見てれば解る。
京香とアンドレと言う名の筋肉男がガシッと
お互いの手を握る。
「ふんぬっ!!」
アンドレがグッと手に握力を込める。
多分、成人男性なら今の段階で痛みでギブアップするだろう。
しかし、京香は薄ら笑いを浮かべている。
「全力で来なさいな。何も感じないわよ」
「舐めるなよ!!では、これでも軽口が
叩けるか!?ふんむううううううぅぅ!!」
歯を食い縛りながら全力で握るアンドレ。
しかし、京香は微動だにせず。
それに京香から表情が消えている。
多分、呆れてイラついてるんだろう。
「貴方…これ全力?冗談よね?そこにいるピトーの方が
余程、力があるわよ」
「ふんぬううぅ!!なん…何だと!?
この俺の全力より小娘の方が上だと!?」
「もう、良いわ」
京香が一気に手に力を込める。
その瞬間、クチャ!と肉が潰れる音がし、その後から
ポキッ!バキッ!ベキッ!!と何とも気持ち良い音が
聞こえる。
「おぎゃああああああ!ちょ!?待って!
待て!待て!!ぎぇええええ!!
潰れてる!!俺の手が潰れてるうぅぅ!!」
余りの激痛でアンドレは膝を着き何とか京香から手を
離そうと必死だ。
けど、全く京香は手を放す気が無い。
「何膝着いてんだ?立てや」
京香が相手の手を握った状態で無理矢理立たせると
すんごい音がした。
はっはっはっ!凄いな。
一気に手首と肘が折れて肩が脱臼したな。
後は筋肉が断裂した音か。痛そうだ。
男を見ると余りの痛みで泡を吹きながら気絶していた。
「ふんっ!根性無いわね。か弱い女性に負けるなんて」
京香が片手で筋肉男を投げ飛ばし馬車の荷台に
突っ込ませると辺りは水を打ったかの様に
静かになった。
うむ!中々、面白かったな。
京香のか弱い発言は意味が解らんが面白かった。
「な……私は夢でも見ているのか…?
人間の女性が身体強化も使わずアンドレに
力で勝つとは……信じられん」
「いや、お前、本気で言ってんのか?
あんなカスが京香に勝てる訳ねぇだろ。
ファルシア大国のダガールを殺した女だぞ。
それとも何か?此処にいる魔族でダガールに
勝てる奴って居るのか?」
バベルの言葉にヴァレンティーナは押し黙り、
筋肉男アンドレの部下達は眼を見開いて驚いている。
「居ねぇよな。この際、ハッキリ言うが
此処に居る連中で京香に勝てる奴なんか居ねぇよ。
ヴァレンティーナ。お前でも、その気になれば
俺達は瞬殺出来るぞ。
俺達のレベルってのは、そーゆうレベルだ。
長く戦争をして頭が麻痺してんのか解らんが
見た目で判断すると大怪我するからな」
俺の言葉に魔族はゴクリッと生唾を飲む。
大袈裟に言ってる訳じゃない。
実際、プー一体で此処に居る連中どころか
魔国を滅ぼそうと思えば可能だ。
それに加えてノルウェやボス達も居るんだ。
決して比喩でも何でも無い。
只、お客様だから、そんな事しないがな。
さてと、お前等そろそろ向かうか。
さっさと面倒事を終わらせるぞ。
バベル達は茫然としている魔国軍の兵達を無視して
車に乗り込むのであった。




