表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
215/248

バベルの世界「誤解」

ヒャッフーヽ(*´∀`)ノまた、評価&ブクマしてくれた方が居ました!

うーれしいーヽ(;▽;)ノ

これからも、宜しくお願いしますー(^O^)

アトランティス…欲望渦巻く楽園。

元は国だったが犯罪組織によって滅ぼされ

今では人種は勿論、他国の貴族や指名手配犯まで

入り乱れている場所。

そんなアトランティスの正門はいつも

賑わっていた。


しかし、今日だけは別の賑わいを見せている。


「此処がアトランティスなんですね…。

 私達が召喚された頃に比べて随分、様変わり

 してしまいましたが」


私達は今、アトランティスの正門前に

来ています。

あっ!申し遅れました。

私、クインケ教ホーリーナイツ魔法隊隊長の

九龍院 麗奈と申します。


「随分と賑わっているな」


「デュフフ…そんな事…より周りに見られてる」


零斗の言う通り随分賑わっていますし、

周りの方々から物凄く見られてますね。

ですが、100人のホーリーナイツが急に

現れたら当然、驚きますよね……。

皆さん、驚かせて御免なさい。


「俺達に見惚れているのだろう!がっはっはっ!」


「はんっ!お前じゃなくて私を見ているのだ!」


カツヤさんもレンさんも相変わらずです。

私も人目に付く仕事や立ち位置でしたが、

やっぱり少し恥ずかしいですね。


「お前達、馬鹿な事ばかり言っているな。

 俺達はラド・バベルに会いに来たんだ。

 要は敵地に来てるんだ。気を引き締めろ」


零斗の言葉に、やや不満気だがしぶしぶ

頷く二人。


そうですよね。私達は、あのラド・バベルに

会いに来たんですものね。

気を引き締めないといけません。

だって今から会おうとしている人物は国を

潰す程の強大な暴力を持っていて、どんな

残虐な事でも平然でやってのける人なんですから。


今でも夢に出て来ます…。

あのDVDから流れた映像と断末魔の様な

叫び声。そして、そんな状況を心底楽しんでいる

笑い声。まさしく狂人です。

ちょっと……いえ、かなり怖いですね。


そんな私に気付いたのか零斗が優しく私の

肩を抱き寄せる。


「麗奈。心配するなよ。何があっても

 俺が守ってやる。俺は麗奈の騎士なんだからさ」


「零斗…////」


もう!零斗ったら不意打ちで、そんな事言うんだから!

身体が熱くなっちゃうじゃない!恥ずかしい!

けど……少し…嬉しいか…な。


「お熱い中、悪いが来た様だぞ!」


カツヤさんが言うと、武装した人間と獣人……

それに、あれはどう見たって魔物の様な者達が

私達に近付いてくる。

それを見たホーリーナイツ全員が身構えた。


「クインケ帝国の者達とお見受けしますが、

 本日は、どの様な御要件ですか?」


その中のリーダーと思われる魔物が私達に対し

声を放つ。


「急な訪問すまない。俺は、クインケ帝国クインケ教所属

 ホーリーナイツ隊長のレイト。

 アトランティスを仕切っているラド・バベルと言う男に

 会いに来たんだ」


ラド・バベルと言う名前とクインケ教の

名前を言った瞬間、魔物達の眼付きが鋭くなる。


「バベル様は御多忙だ。それに敵国の者達を

 簡単に会わせると思っているのか?」


「敵と言う認識の誤解を解く為に来たんだ。

 暴れる為に来た訳じゃない」


零斗が、そう言うと少しの間、魔物が沈黙し

近くに居た獣人に指示を出す。

その指示を受けた獣人は敬礼し門の中に凄い

速さで入って行った。


「今、報告に走っている。少し待て」


魔物が言うと零斗が頷く。


そんな遣り取りを私は呆然と見ていた。

だって魔物が喋ってるんですよ!?

喋る魔物なんてオーガの上位種ぐらいしか見た事ありません。

その上位種だってカタコトの言葉だったのに

今、私達の眼の前に居る魔物達は流暢に喋っているんです。

信じられない……噂は何度か聞いた事がありますが

本当だったなんて。

カツヤさん達も同様に驚いています。


そんな事を考えて10分程経過したぐらいでしょうか。

正門から先程走り去った獣人の方が戻って来て

魔物に耳打ちします。


「バベル様が会うそうだ。正門で受付をした後に

 別の者達が案内する。こちらに来い」


私達は全員、正門で厳重なチェックを終えて

アトランティスに入る。

その先には、門の警備をしていた魔物とは

違う魔物達が立っていた。


「中央広場まで案内致します。閻魔と申します」


「山王でやんす。バベル様がお待ちでやんす」


2体の魔物を見た瞬間、私達の顔が引き攣る。

何…?何よ…あれ。

さっきの魔物達も手強そうだったけど今、私達の

前に立っている魔物達は次元が違う。

2体とも迷彩服のズボンと軍人が履く様な

靴を履いて腰には大きな刃物。

閻魔と名乗った魔物の身体ははち切れんばかりの

筋肉で着ている服が今にも破れそう。

頭には大きな角と口から除く牙。


もう一体の魔物は異様に長い腕と猫背が

特徴的だが、この魔物もしっかりと筋肉が

盛り上がっており私達を品定めするような

鋭い眼付きで睨んでいる。

明らかに格上の魔物達だ。

私達が今まで対峙したどの魔物達とも

レベルが違う。異次元の強さだと私でも

解る。

こんな……こんな魔物達がバベルと言う人間の

下に付いているの?


「こちらです」


閻魔と名乗った魔物が歩き始めたので

その後ろを私達ホーリーナイツが付いて行く。

その道中、私は零斗に話し掛ける。


「零斗…大丈夫かな?あんな魔物達を従えるなんて

 絶対に普通じゃないよ?」


「だな。正直、俺も驚いている。

 あの2体は間違い無くSランク以上の強さだ」


「おいおい!Sって言ったら国が滅ぶレベルだぞ!」


「それが2体とか洒落にならねぇな」


「……デュフ…俺達で勝てるかな?」


「……多分、此処に居る者達全員で戦って

 五分五分って所だと思う。ただ、あくまで

 一体を相手にした時だ。

 Sランクの魔物が2体同時は厳しいな」


零斗の言葉を聞いてゴクリと喉を鳴らす。

明らかな戦力差を見せつけられ不安な気持ちで

一杯だが、もう後戻り出来ない。


「到着です。直ぐにバベル様が来ますので」


到着した場所は広い空間で比較的清潔に

保たれていた。

いえ…まぁ、それは良いんです。

そんな事より居心地が最悪ですね。


広い広場で私達100人を囲む様に見ている者達。

全員が両腕を後ろに回し軍隊の様に整列している。

人種はバラバラなのに全員が黒い戦闘服に身を包み

完全武装しています。

その後ろには野次馬やゴロツキ。

冒険者や貴族の様な格好をしている者達もいます。


「……デュフ…レイト、あの黒服達、手榴弾と

 閃光弾を装備してる…。明らかに、この世界の

 装備じゃない」


「あぁ…解っている」


ノボルさんの口ぶりだと、どうやら彼等の

装備が明らかに、この世界の物じゃないみたいです。

やはり、私達が元居た世界の物を手に入れる事が

出来るチートの持ち主が居るみたいですね。


そんな事を思っていると空気が変わりました。

私達を囲んでいる者達が奥から歩いてくる

人間達に道を譲ります。

まるで、モーゼの様に道が開かれると黒服の

方々は一斉に軍隊で見る様な一糸乱れぬ敬礼を。

他のゴロツキやアトランティスに住んでいるで

あろう者達が両手を膝に当て腰を曲げて

頭を下げるのです。


信じられない光景です。

だって……この世界での人間は最底辺なんです。

私達は何故かケモ耳も尻尾もあるから快適に

過ごす事が出来てましたけど、そうじゃない

人間達は悲惨な目にあいます。

そーゆう世界なのに……此処に居る獣人、亜人

はたまた魔物達まで、こちらに歩いてくる人に

対し最上級の礼をして出迎えているんです。

これがどれだけ異常な事か解りますか!?

年端もいかない子供達まで、その人間が

どーゆう人間か完璧に理解しているかの様な

振る舞いなんですよ!


この異常な状況に困惑していると最初に

姿を表したのは、一人の女性と獣人の少年です。

あの子は確か手配書にあったガルと言う獣人ですね。

そして、もう一人の女性……あの人は剣崎 京香。

噂では軍神と呼ばれた豪鬼のダガールを打ち破った方。

その後ろから歩いてくる人達は……。


「遠路はるばる雁首揃えてようこそ。

 俺がラド・バベルだ」


漆黒のスーツに紫のワイシャツ、赤いネクタイに

身を包み片眼がポッカリと空洞になっている男。

その隣にはテレビでしか見た事の無い軍装備で

眼帯をしている屈強な男が鋭い眼付きで私達を

凝視している。


私達は元居た世界では荒事とは無関係でした。

けど、この世界に来て戦場を体験し

それなりに経験を積んできたと自負しています。

そんな私達から見ても彼等は……異質でした。

明らかに潜ってきた修羅場が違う。

荒事に疎い私でも見た瞬間に解りました。


「お初にお目にかかります。私はクインケ帝国の…」


「クインケ教所属ホーリーナイツなんて馬鹿みてぇな

 名前の隊長だろ。北條院 零斗君。

 確か、北條院グループなんて言う木っ端グループの

 一人息子だっけなぁ。

 で、他の連中が、九龍院 麗奈ちゃんに、

 玄龍 克也君、佐久間 登君、狭霧 蓮君だっけか」


「ッッ!?」


何で……この人…私達の事を知っているの…?

しかも、私達が元居た世界の名前じゃない…。

不安気な表情で零斗を見ると流石に零斗自身も

驚いて絶句している。

他の人達も同様だ。


「何、驚いてんだよ?俺が少し、その気になれば

 お前達の個人情報なんて洗い浚い解る。

 それに、お前達は日本で少し有名なんだろ?

 それなら、尚更だ」


「…そうですか。それは光栄ですね」


「で?何の様だ。戦争でもしに来たか?

 そんな馬鹿共連れてよ」


「いえ、私達は誤解を解きに来たんです」


「あ~、誤解な。なんの誤解の件かは知らんが

 どうでもいい。

 そんな事よりウェルダンとか言うゴミと

 俺の部下に手を出した糞共を連れて来い。

 後は支払う筈だった金塊300本と慰謝料として

 国家予算の半分をよこせ。

 出来なきゃクインケ帝国を潰して終わりだ」


「…待って下さい。その誤解です。

 我々クインケ帝国は貴方達に一切手を出していない。

 敵対していないんです。我々は無関係だ。

 その事を貴方に伝えに此処まで来たんです」


「納得出来る証拠は?」


「証拠は無いです。そもそも貴方達も証拠が

 無いにも関わらず帝国の者達を殺しただろ。

 非があるとしたら、そちらでは無いですか?」


「疑わしきは黒って言うルールも解らず

 土足で俺達の世界に踏み込んだ馬鹿共を

 殺して何が悪い?

 それに例の屑共は俺達の組織を乗っ取る気だった。

 それだけでも充分過ぎる程の敵対行動だ。

 にも関わらず金塊300……間違った。

 金塊600本と国家予算半分で手を打つと

 言ったんだ。

 あぁ、例の糞共は当然連れて来いよ。殺すから」


「……アンタ…言ってる事が滅茶苦茶だぞ」


零斗の言う通り…この人の言っている事は

滅茶苦茶だ。意味が解らないよ。

確かに、クインケ帝国は奴隷を奪い支払いを

踏み倒しました。

けど、私達が襲った決定的な証拠も無いにも

関わらず、この要求は…どうなんでしょう。

いえ、確かに私達に非があるんですが…。

国家予算の半分を渡せなんて…。

しかも金塊も300から600本に増えてますし。


「滅茶苦茶?ははっ!お前達には眼の前に居る

 人間が聖人君子にでも見えるか?

 俺達は裏社会の人間だ。堅気の話し合いと

 同等だと思ってたんなら大間違いだぞ」


駄目だ…この人に話は通じない。

とゆーか、そもそも話し合いするつもりが

無い様に思ってしまう。


「零斗、こいつに何か言っても無駄だ!」


「はんっ!全くだ!所詮、馬鹿な犯罪集団!

 暴力で解決するしか出来ない奴等だ」


カツヤさんが大きな戦斧を、レンさんは槍を

ラド・バベルに向かました。

それに触発されて他のホーリーナイツの

メンバー達も剣を抜こうとします。

不味いですね…。


「馬鹿!お前達、止めろ!!」


「皆さん、落ち着いて下さい!!」


零斗と私が宥める様に声を張り上げるが皆、

武器を下ろしてくれない!


【跪け。虫ケラ共】


この声を聞いた瞬間…比喩では無く本当に

心臓が止まりかけた。

今まで味わった事の無い程の重圧と恐怖。

全員の身体が硬直し顔は真っ青になり

膝がガクガクと笑い、奥歯がカチカチと鳴る。

カツヤさんも、レンさんも皆、武器から

手を離し本能的に跪いたのです。

当然、私もです…。


【ほう、お前は凌いだか】


「グッッ!!?」


凄い…何をされたのか全然解らないけど

零斗だけは耐えてる。けど……。


【ギリギリって所だなぁ。まぁ、良い】


そう言うとラド・バベルは、レンさんの所に

歩いて行き、跪いているレンさんの頭を

踏みつ付ける。


【暴力で解決する事しか出来ないだって?

 結構な事じゃねぇか。

 暴力は全てを解決する。

 秩序や平和だって巨大な暴力があるから

 成り立っているんだ。

 決して話し合いや思いやりなんて物で

 成り立ってるもんじゃないんだよ】


バベルは煙草に火を着ける。


【そもそも、お前達は話し合いのスタート

 ラインにも立ってない。

 俺達の組織は既に10万人を軽く超える

 大企業になった。

 土地も金も帝国より有る。

 いいか?戦う以前の問題で、てめぇ等は

 既に弱者で2択しか無い。

 誠意を見せるか…死ぬかだ。

 俺が馬鹿な人間なら、お前は人間でも無い

 殺処分待ちの負け犬だ】


火の着いた煙草をレンの背中に押し付ける。


【反応が無ぇかと思ったら気絶してやがる】


「バベルの声を聞き続けたら気絶するだろ。

 普通なら発狂もんだぜ。気絶ですんでるだけ

 スゲェんじゃねぇか?」


【ガルは随分慣れたみたいだな】


「気合と根性で持ってるだけで全然

 慣れてねぇよ!つか、もう限界だから

 普通に戻してくれ!」


なん…なの…こ…の人…。

完全に異常じゃないですか…喋ってるだけで

こんな異常とも言える重圧と恐怖を与えるなんて

異常以外、言葉が見付からない。

これが…ロバートさんが言っていた世界に

君臨する本物の犯罪者なの……。


「話しは終わりだ。三日で答えを出せ。

 三日を過ぎた時点で本格的にクインケ帝国を

 攻撃する。そう伝えろ」


バベルの無慈悲な言葉に私達は頷く事しか

出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ