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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
208/248

バベルの世界「変装」

あ~……天井が白いなぁ…。


ぼんやりとした意識で天井を見上げる。

ガルは元他種族刑務所の中にある

病棟区域に運び込まれベッドの上で

横になっていた。


はぁ……負けたなぁ…。

いや、バベル達が認めてる連中に勝てるとは

思って無かったけど、そこそこ良い所まで

行くと思ったんだよ。

だって、ボス達と訓練して頑張ったんだぜ?

なのに……あれは無いよなぁ…。

無ぇよ…何だよ、あれ!?


何で名無しと決闘なのにボスが出てくんの?

最初見た時、マジでテンパったんだぜ!?

そんで、バベル達の方角見たらボスが居るじゃん!

もう、完全に混乱した!


ボスが二人!?はっ?ってなったよ!

更に驚いたのがリーの対戦相手が京香だった事。

勿論、バベルの所にも京香が居た。

もう意味が解らなかったぜ……。


「ガルよ…起きているか?」


「起きてる…リーも起きてたんか?」


「今しがた目覚めた」


横をチラッと見るとリーも天井を見ていた。

眉間に皺を寄せて悔しさを滲ませて。


「ガル…名無しと戦ってみて……どうだった?」


「完全にボスだったよ…何言ってるか意味

 解らんと思うけどよ。そっちは?」


「完全に……剣崎様だったよ…」


「………だよなぁ…」


もう何か会話がこんがらがって意味解らなく

なると思うよな。


「…あれは、変装と言う次元では無いぞ」


リーの言う通りだ。

あれは、変装とかのレベルじゃねぇ。

俺達が見ても全く解らなかった。

バベル達の近くに本人達が居たから気付いたが

それでも混乱したからな。


「…マジてビビったわ…姿形も完全に一緒で

 声や戦闘スタイルまで完璧にボスだったもんよ。

 あんなん卑怯過ぎんだろ……」


「私も未だに信じられんよ…」


はぁ…とベッドの上で溜息を吐くリー。


「よう!こっ酷くやられたな」


「リー姉様!!?」


ガラッと扉を開けてニヤニヤしながら病室に

入ってくるバベルと心配そうな顔をしている

ツヴァイ。


「おぉ~…バベル~、何だよ、あれ」


「バベル様……それに、ツヴァイも…」


俺とリーは、ベッドから体を起こし二人に

向き合う。


「ははっ、元気ねぇな。まぁ、今回は

 仕方ねぇよ。相手が悪すぎる。

 お前等じゃ、ちと荷が重すぎるわ」


いやぁ……そうは言うけど、やっぱ凹むって。

俺やリーだって相当、訓練積んで来たのによぉ。


ガルとリーの凹み具合を見たバベルが

苦笑いを浮かべる。


「世の中は広いって事だ。それに、

 名無しも、のっぺも最高レベルの殺し屋だぞ。

 俺達の世界でだ。

 それが、どーゆう意味か解るだろ?

 実力的に言えば、京香とガストラを

 足して2で割った様な連中だ。

 ボスより実力は劣るが、あの2人は

 相手を殺すだけに重点を置けば下手したら

 ボスよりも質が悪いからな。

 お前達も実際に、やって見て解ったろ?」


「……まぁ…解るけどさ……あれは反則だろ」


「バベル様…あの者達の変装は次元が違いすぎます。

 何ですか?あれは。

 姿形も声も完璧でした。あそこまで

 似せる事が可能なのでしょうか…?」


「まぁ…あれはなぁ……」


そう言いながら、バベルは煙草に火を着けて

語り始めた。

つか…病室は禁煙だぞ!!ったく!


バベル曰く、あの二人は骨格…骨の奇形に

より身長や体格を自在に変える事が出来ると

教えてくれた。

まぁ、バベルの推測らしいが、まず間違い無い

との事だ。

そして顔だが……。


「名無しの権兵衛は顔の皮膚や鼻など各部位が

 欠損している。

 のっぺら坊に限っては顔が無いな。

 文字通り無い。

 多分、右目を残してポッカリ顔全体が

 空洞になってる。

 確か、バクテリアだったかウィルスに感染して

 顔が無くなっていく病例もあるが、それとは

 若干、違うと思うな……。

 …とまぁ、そんな感じだから特殊メイクやらで

 顔をソックリに変えちまう事が出来る。

 それに似せた相手を殺し、顔のパーツを

 捥ぎ取っていく奴等だから更に見分けが

 つかなくなる。

 これが、あいつ等の通り名の由来だろう」


悍ましいにも程があるだろ…。

顔が無いって比喩表現かと思ってたけど

マジで顔が無ぇのか。

何で生きてられんだよ。

そんで顔のパーツを捥ぎ取って行くとか…。

ははっ……怖すぎだ。


「……バベル様の言う通りならば、あの二人は

 相当、脅威です。

 私も暗殺を生業にしていましたが、

 あそこまで姿形を変える事が出来れば

 厳重に守られている対象者でも容易に

 殺す事が出来るでしょうね。

 しかし…戦闘技術まで真似など出来るの

 でしょうか?」


「あの二人なら出来ちまうんだろうな。

 鋭い洞察力と自己暗示が絡んでると

 俺は思っている」


「洞察力は…百歩譲って解りますが

 自己暗示ですか?」


「まぁな。これは俺の持論だが思い込みに

 よる自己暗示ってのは中々凄まじいぞ。

 こうなりたい。あの人の様になりたい。

 そう言った強い自己暗示……まぁ思い込みを

 すれば本当に似てきちまうし恐ろしい程の

 力が発揮される。

 人間てのは肉体的な強さより精神的な

 強さの方が重要だと思っていい。

 例えば俺が子供に強い暗示を掛ければ

 お前達を殺す程の力を引き出す事が出来るぞ」


改めて聞いても滅茶苦茶だよ…。

けど、バベルが言うと真実味が増す。

事実、バベルは暗示や洗脳で相当数の人間、

獣人を殺して来たからな。


「何かしら極めている連中ってのは自身に

 暗示を掛けているもんだ。

 一朝一夕で身に着くもんでも無いがな。

 只、それが身に着いている奴は強いぞ。

 肉体を凌駕する程だからな」


バベルの話は粗方理解出来た…すまん、嘘だ。

正直、半分以上理解出来んし意味が解らん部分が

大半を占めている。

けど、実際そー言った異質な人間が居るのは

確かだ。

ボス達だって殺し屋二人組とは違うが、

かなり異質な人間だしな。


「はぁ~…そう考えると本当にバベル達の

 世界の人間って飛んでも無い奴等が多いよな。

 なんて言うかさ…人間を辞めちゃった奴が

 多すぎじゃね?はっはっ!」


「私もガルの意見に同意だな。

 なんと言えば良いか解らんが我々とは

 覚悟が違い過ぎると言うか倫理が

 ズレていると言うか…。

 飛んでも無い連中が多いと思う。

 私と戦った、のっぺら坊の攻撃なんて

 さっぱり解らなかったしな」


あぁ、そー言えば、訳も解らずいきなり

斬られたらしいな。リーの奴。


「のっぺら坊の攻撃なぁ。

 ありゃあ、水を飛ばしたんだよ」


ふぅん?水?

水で斬ったり出来んのか?


「あいつは身体を色々弄っててな。

 指の先端に小さな穴が開いてて

 水と研磨剤を混ぜた液体を高圧ガスで

 飛ばしてんだよ。

 俺が見た感じじゃあ、身体の生命維持出来る

 ギリギリまで弄ってるな。

 体中、武器や暗器だらけだ」


うわぁ…やっっっばい奴だ。

普通、そこまでするか!?

いくら殺し屋だからって、そこまでいくと

常軌を逸しているわ。あっ…

元々、狂ってるんだったな。

いや…でも、自分の身体を切り開いて

改造していくなんてよぉ。


元暗殺者のリーも顔色が悪くなってんじゃん。

やっぱり同業者ってのが色々考えさせるんだろうな。

明らかに格が違うもんな。


そんなリーに気付いたのかバベルが

リーに声を掛ける。


「そう落ち込むな。

 元々、俺達とお前達では住んでいた環境が

 違うんだ。

 あれだけ環境が違えば技術面でも差が

 出て当然だし覚悟だって変わってくる。

 気にする事じゃない」


「……はい」


納得は…出来て無い感じだが何とか

飲み込んだって所か。

リーは変な所がクソ真面目だからな。

バベルの言う通りコッチとアッチでは文明が

違い過ぎるんだから別に気にする必要は無い

と思うけどな。

負けたのは悔しいけどさ。


「さて、俺達も、そろそろお暇するかな。

 怪我は魔法やらポーションやらで直ぐに

 治ると思うが2日ぐれ休んでろ。

 お前達は、これからだ。ふふっ。

 出来る上司っぽいな今の!!

 行くぞ。ツヴァイ。」


「はい!バベル様。

 では、リー姉様、また来ます」


そう言ってバベルとツヴァイは病室から

出て行った。


「バベルが連れて来る連中は、マジで

 化物だらけだなぁ…」


「ふぅ……全くだな。私も努力せねば」


いやぁ、努力で、どうこう出来る問題

じゃねーと思うが。


ガラッ


んっ?誰か来たのか?


「よう!体調は、どんな感じだ?」


「リー姉様!!」


あれっ?バベルとツヴァイじゃねぇか。

体調は、どん感じだって……お前等さっき

来たろ?


「な、何言ってんだよ。バベルもツヴァイも

 さっき見舞い来たじゃねぇか」


俺の言葉を聞いたバベルが奇怪な顔をする。


「俺は、さっきまで仕事してたし

 ツヴァイも俺の手伝いをしていたんだが」


「えっ?」


「えっ?」


俺とリーが同時に声を出し顔を見合わせる。

お互いの顔からスーッと血の気が引いていく。


「ま……まさか…さっきのバベル達は…」


その様子を見ていたバベルが何かに

気付いたのかニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる。


「何だ?また、やられたのか?」


はっはっはっとケラケラ笑うバベルを見て

やっぱりバベルが連れて来る奴等は、

曲者揃いだと心に深く刻み込んだガルと

リーなのであった。

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