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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
203/248

バベルの世界「布教」

「おい!その辺にしろ」


「何ですか?貴方は」


アトランティスの中央広場にて

強引な勧誘をしているクインケ帝国の

信徒らしき者達に声を掛ける。


俺の声に反応して一番豪華な

服を身に纏った綺麗な女性が

前に出て来る。


「此処で布教活動は構わねぇけど、

 無理矢理は止めてくれ。

 苦情が何件か来てるからよ」


クインケ帝国は、お得意様に

なる可能性があるから無下に

出来ないので、やんわりと

笑顔で注意したつもりだ。


「貴方の様な異教徒に我々の

 神聖な行いに異議を言われる

 筋合いはありません。

 もし、我等の信仰に賛同し

 クインケ神を心から崇める

 のであれば、今の無礼を不問に

 しましょう。

 そうでないとしたら、私の

 忠信が貴方に天罰を与えます」


なのに、この返答は、どうよ?

物凄い蔑んだ目で見てさぁ。

なまじ、美人だから性癖によっては

御褒美かもしれんけど、生憎、

俺は、そんな性癖持ち合わせちゃいない。

なので、非常にムカつく。


そして、美人性悪女の後ろから

キンキラキンの趣味が悪い鎧を

装備した赤髪と金髪の獣人が

前に出て柄を握って睨んで来る。


はんっ!睨んだ所で全く怖く

ねぇんだよ。馬鹿が!

俺が普段どんな場所で仕事してっと

思ってんじゃい!


「ミネルバ様は、此処の者達に

 幸福と神の加護を与える神聖な

 行いをしておるのだ!

 それに対し無礼な物言い許さんぞ!」


金髪の獣人が何やらご高説だ。


ほ~ん。この性悪女、ミネルバって

言うのか。

まぁ、超絶どうでもいいけど。


「悪いが、俺は別の信仰が

 あるんでな。

 それに、筋合いが無いと言われても

 俺はアトランティスを仕切ってる

 組織の一員だから言う資格がある」


俺が、そう言うと一瞬驚いた顔を

したが直ぐに元に戻る。


「……とゆー事は、ラド・バベルと

 言う人間を知って居るのですね?」


「まぁな。上司だし」


「あぁ、何と言う事でしょう!

 これは、神の御導きに違いありません」


何だ?いきなり両手を空に掲げて

祈り始めやがって。


「ガルちゃん、何事?」


「何です?この方々」


そうこうしてる内に、名無しとのっぺが

俺の所に追い付いて話し掛けて来た。


「クインケ帝国の信徒だ。

 無理な勧誘してたから注意

 しただけだよ」


「「ふぅ~ん」」


名無しも、のっぺも、然程

興味が無いみたいだな。

俺も全く興味無いが。


「ラド・バベルとゆー人間に

 我等を会わせるのです」


祈りが終わったと思ったら

素っ頓狂な事を真顔で言ってくる

ミネルバと呼ばれている女。


おめー何言ってんの?

バベルに会わせろだぁ?阿呆か。

何で俺が、テメェ等みてぇな

胡散臭い連中を会わせなきゃ

いけねぇんだよ。

それに、バベルは何気に忙しいんだ。

各ギルドマスターとの話し合いに

商会の会頭や傘下組織の会談。

奴隷の品質向上やレッド・セルの

視察やら何やら山程、仕事が

あんだ。


それを、胡散臭ぇ新顔がアポ無しで

会える訳ねぇだろ!

他国の貴族でも、中々バベルに

会えねぇんだからな。


なので、無理だ。


「悪いが、バベルは多忙でね。

 アポも無しに会える程、

 暇じゃねぇんだわ」


「これは、神の御導きです

 貴方達の都合など関係無いのです

 さぁ、案内しなさい」


………こいつ、言葉を理解してんのか?

暇じゃねぇって言ったろ?

なのに、さも当然の様にドヤ顔

しやがって馬鹿なんじゃね?

それに、お前等、その態度も

何とかしないとバベル達に殺されるぞ。


「ねぇ、あんた達さぁ、ガルちゃんが

 バベルは忙しいって言ってんだから

 諦めなさいよねぇー」


「そうですよ。せめて、予約を

 入れるなり手順を踏まないと」


おお!変態2人が真っ当な事を

言う!


「クインケ教に入信していない

 羽虫は静かになさい。

 ですが、クインケ神を崇めるので

 あれば言葉を発する事を許可します。

 但し、人間風情が入信するには

 それなりの、御布施が必要ですがね」


うわぁ…結局、金じゃん!

何が加護や幸福だよ。笑っちまうわ。

名無しも、のっぺも俺を見て

「こいつ、ヤバくね?」って感じだし。


けど、以外だったのが、この二人が

手を出さなかった事だよな。

京香あたりだったら絶対に

殴ってるもん。

案外、まとも…なんかな?


いや、無いな。バベルがイカれてる

なんて言う連中だ。

絶対に、まともじゃない筈。


「何をしているのです?

 早く案内なさい。私も暇では

 無いのです。

 一刻も早く、この土地をクインケ神様に

 浄化してもらいクインケ神様が、

 いかに素晴らしい神である事を

 知らしめ無くてはいけないのですから。

 そして、魔族を滅ぼし皆で幸せに

 なりましょう」


いやぁー!胡散臭い所じゃないわ!

こんなんに入信するとか

馬鹿の極みだろ!

皆で幸せとか、ちゃんちゃらおかしい!

どーせ、幸せになんのは上層部

だけだろうがよ。アホくさ!


「話になんねぇな。

 バベルには、会わせらんねぇ。

 さっさと消えろ」


「この異教徒が!!」


俺が、そー言うと赤髪の獣人が

激昂し剣を抜こうとする!


シュ!


なので、相手が抜く前に俺が

刀を抜いて赤髪の鼻っ面に

切っ先を向ける。


「遅えんだよ。馬鹿が」


切っ先を向けられた赤髪は「グッ!」

と唸りながら動けないでいた。


けっ!その程度でイキってたのか?

舐めんじゃねぇよ!


「「おー!格好良い!」」


と、名無しと、のっぺがパチパチと

拍手を俺に送ってくる。


ふふふっ、よせやい!

このぐれぇ対した事ねぇよ。


「クインケ教の我等に刃物を向けるとは…。

 貴方は何をしているのか解って無い様ですね」


「解ってねぇのは、テメェ等だろ。ボケ。

 ファルシア大国を滅ぼした犯罪組織に

 喧嘩売る気か?

 ただでさえ、魔族と戦争中の癖に

 俺達まで相手したらマジで滅ぶぞ?お前等」


「………」


へっ!黙っちまったよ。

おめー等の国でならクインケ教ってだけで

何でも通るかも知んねぇけど此処はテメェ等の

国じゃねぇんだ。


「解りました。では、奴隷の件で

 ラド・バベルに話があります…と

 言ったら、どうですか?」


ミネルバと言う女は表情を変えずに

ガルに言う。


奴隷の件……ドラフ達の事か?

いや、この女が何処まで知っているのか

解らない状況で迂闊な発言は控えるべきだ。

ただ、仕事の話となれば……バベルに

会わせた方が良いか?

もし、俺が此処で突っぱねて上客を

逃がしたとなると拙いしなぁ。


けど、こんな胡散臭い連中をバベルに

会わせるってのも気が引けるけど…。


ちっ!仕方ない。一応、バベルに話を

持っていくか。


「解った。バベルに伝えておく。

 日にちは、こっちで決めるからな」


「解りました。それで結構。

 ただ、ラド・バベルには今回の無礼を

 抗議させて貰いますからね」


「けっ!勝手にしろよ」


本当に嫌な奴だな。精々バベルを怒られない様に

話をすんだな。ふんっ!





☆ ☆ ☆





バベルに、この件を報告してから

三日後。

クインケ教の信徒達との面会が行われた。


「いやぁ~、遅くなり申し訳無い。

 色々と仕事が立て込んでましてね。

 クインケ帝国の信徒達をお待たせした事に

 対し、まずは謝罪を。

 申し訳ありませんでした」


応接室に案内して向かい合わせの状態で

バベルが頭を下げる。


「全くですね。崇高なるクインケ神に仕えている

 我等、信徒を待たせるなど言語道断です。

 しかも部下の教育が行き届いてないのも問題ですね。

 非常に不愉快な思いをしましたよ。

 まぁ、所詮、犯罪組織。

 崇高な使命を持っている我等と比べるのは

 可哀相と言うものですが」


頭を下げているバベルに対し見下すような

態度で吐き捨てる。


あぁ…この馬鹿…多分、死ぬな。


こいつ等は何一つ解っちゃいない。

お前の目の前に居る人間は只の犯罪組織の

トップじゃあない。

数少ない強大国ファルシア大国を滅ぼした

組織のトップだ。

そして、そのトップの護衛としてボスと京香が

居る。因みに、ガストラは各部屋を一望出来る

監視塔で、お前等の頭に標準を合わせてるんだからな。

少しでも変な真似をしたら頭が吹っ飛ぶぞ?


「はっはっはっ、いやぁ、返す言葉も

 無いですね。

 部下には後でキツク言っておきます」


不意にバベルが、こちらを向き信徒達には

解らない様にウィンクする。

それに合わせて俺も軽く頷いた。


「それで、えぇっと…ミネルバさん。

 貴方の様な、お美しい女性が奴隷の件で

 お話があると部下から伺ったのですが

 購入を検討ですか?

 それとも売却でしょうか?」


先程のミネルバの言葉を軽く流しニコニコと

笑いながら話し掛ける。


バベルの奴…女には甘いよなぁ。

特に美人になると多少悪態をつかれても

気にする素振りすら見せない。

これが男だったら一気に口調が変わるのによ。

あぁ…言ってなかったけど、このミネルバって

女はナイスバディの狐人族な。

性格は最悪だけど美人なんだよ。

そんで、さっきから俺を睨んでる護衛らしき

赤髪と金髪は虎人族かな?

俺なんか睨まないで、ボスとか京香を

睨んだら、どう?

間違いなく速攻で眼を逸らすと思うぞ。お前達が。


まぁ、いいや。バベル達に集中しよ。


「回り諄い事は好みません。

 なので単刀直入に言います。

 ゲヘナ創始者でトップ。ラド・バベルよ。

 我がクインケ帝国の傘下に入りなさい」


………はぁぁぁぁ!?

こいつ…行き成り何言ってやがんだ!

バベルに傘下に入れだ!?

頭が大丈夫か心配になる程の大馬鹿だ。

つーか、何?お前等って自分達がバベル達より

有利だと思ってる訳?

本気で、そう思ってるんだったらマジで

取引相手を考えなきゃいけない。

だって、そうだろ?

クインケ帝国は小国。

はっきり言ってファルシア大国の足元にも

及ばない国家なんだぞ。

その大国を潰した犯罪組織に対し傘下に

入れなんて手の込んだ自殺に等しいだろ。

そんな連中と取引なんてしたら間違いなく

揉める。

とゆーか、バベルに対し傘下に入れって言った

時点で揉めるのは決定だ。


「………傘下…ですか?我々を?」


15秒程、沈黙した後にバベルが苦笑いで

ミネルバに話しかける。


「レリウス・ブリデン教皇はファルシア大国を

 滅ぼした貴方達を評価しています。

 本来であれば多額の御布施が必要な所を

 資産の半分で我等クインケ帝国クインケ教の

 傘下に入る事を許して下さいました。

 この寛大な処置に伏して従いなさい。

 そして崇め信じるのです。我等の偉大な

 クインケ神を。

 そして共に魔族を滅ぼし世界に平和と安定を

 届けましょう」


………これには絶句だ。こいつ等、奴隷の件で

話があるって言っておきながら蓋を開けて見れば

俺達を傘下に引き入れて丸ごと乗っ取ろうと

してやがる。

やっべぇ……ファルシア大国の貴族も馬鹿が

多かったし舐めた態度とる連中も居たけど、

そいつ等が可愛いと思う程、頭お花畑だ。

しかも、資産の半分って舐めてんのか?

バベル達の資産の半分なんて最早、

国家予算並みなんだぞ!


「丁重に、お断りします」


「何っ!?貴様!ミネルバ様が足を運んで

 来たにも関わらず断るとは何事だ!

 無礼にも程があるぞ!!」


と馬鹿が馬鹿な事を抜かしております。

つか、お前、無礼って言葉の意味知ってる?

子供に聞いても間違いなく、お前達が

無礼だって言うぞ。


「ふぅ…やはり低俗な人間の考えは理解に

 苦しみます。

 何故、断るのです?クインケ神の代弁者で

 あるレリウス・ブリデン教皇が貴方達の

 傘下入りを許可して下さったのですよ。

 その言葉を無碍に扱うと言う事はクインケ神に

 対する冒涜行為。

 貴方は神に歯向かうつもりですか?」


昔、バベルが言ってたな。

信仰と洗脳は同義だって。

考える事も自身の意思で行動する事も

出来なくして操り人形にする。

そう言う盲信者には言葉も通じないってさ。


こいつ等が正しくだな。


「……ミネルバさんは、正門から

 アトランティスに入ったのですよね?」 


「そうですが。それが何か?」


「正門の上にはゴミを吊るしてあったのですが…

 見なかったんですかね?」


ゴミ……これは、セイント王子の事だ。

正門の一番目立つ場所に吊るしてあるから

絶対に眼が行く。既に蛆と汚物に塗れて

白骨化しているがな。


「……見ましたね。随分、悪趣味な光景

 でしたが……何が言いたいのです?」


「あれは警告のつもりで吊るしてある。

 俺の縄張りで馬鹿な事をしたら誰だろうと

 ああなるとな。

 他国の王族だろうが貴族だろうが

 教会の関係者だろうがだ。

 それを踏まえた上で、もう一度だけ

 聞きたい」


バベルの口調が変わり明らかに部屋の

空気が変わった。

押し潰れそうな程の重圧で冷淡な声。

その変貌に余裕だったミネルバや取巻き達の

顔色が変わる。


【誰が、何処の傘下に入れって?】


うっ…く…何度、聞いてもバベルの

この声はキツイッッ!!

何回か経験がある俺でもキツイんだ。

今日、初めて聞いたミネルバ達から

したら、とんでも無いだろう。


「……あっ…あうっ…」


ミネルバは答える事が出来ないでいる。

当然だ。

バベルが、この声で喋ってる時はリヒト団長ですら

まともに受け答え出来なくなるんだ。

こんなカスが、まともに話せる訳が無い。


今、こいつ等はどんな気分だろうな?

神に盲信している、お前等でも目の前に

居る化物の前では信じる神が霞んで

見えるんじゃねぇか?


ガチガチと震えている馬鹿共が喋り

始めるのを待っていると応接室の

扉が乱暴に開け放たれる。


「バベル様!商談中に失礼します!!

 ドラフ会頭が!」


「おぉ!帰って来たのか!はっはっはっ!

 随分、遅かったじゃねぇか。

 丁度、今、クインケ帝国の連中が此処に…」


「重症で運び込まれました!!」


「………あぁ?」


バベルの言葉を遮って出て来た言葉は

衝撃的な言葉だった。

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