ガルの世界「知人」
ガル達一行は、バベルが提案した旅行に来ている。
ファルシア大国でも近隣諸国でも無い。
では、何処か?
それは、バベル達の世界。
人間が支配している地球だ。そんな彼等は
ある豪華な一室でバベルの言葉に耳を
傾けていた。
「お前達を連れて来た理由はな…。
こっちの世界で売り飛ばす為だよ」
ガルは、バベルの言葉を聞いて心臓が
跳ね上がる程、脈打った。
ガルだけじゃない。
リヒト達もリー達もビトーも顔が
強張り眼が泳いでいる。
売る……?
俺達を売るって言ったの…か?
バベルが……俺達を?
いてぇ…心臓が…胸が苦しい!
吐き気もする。冷や汗が止まらない。
こんな…こんな何も解らない世界で
売られるってのか!?
「バベル!?嘘だよな!?俺達を売り飛ばすって…。
仲間じゃ……無かったのかよ…」
ガルは眼に涙を浮かべる。
まさか泣くとは思って無かったのだろう。
バベルが珍しく慌てた口調で声を出す。
「す、すまん!まさか、そこまで狼狽えると
思って無かった!
冗談!冗談だ!ちょっとしたジョークだ!
売り飛ばしたりしねぇから、だから、ぐぇっ!?」
バベルの言葉を聞いた俺はマジでバベルを
殴った。
俺だけじゃなくリヒト達もリー達も
ビトーも半泣きで殴っている。
序でに、何も知らなかったボス達も
かなり強めに殴っていた。
「貴様!!冗談が過ぎるぞ!!」
「バベル様…流石に酷いです」
「次は、本気で刺しますよ?」
リヒトとビトーがバベルを叱責しリーは、
懐から出したナイフを向けている。
「本当に…しゅまん…」
ったく!!この馬鹿!
本気で焦ったじゃねぇか!仕事柄もあんだから
そーゆう冗談止めろよな!!
はぁぁぁぁ……でも、良かった…。
バベルがボコボコにされ顔がパンパンに
腫れているが俺達は関係無い!
こいつの自業自得だからな。
だから早く理由を話しやがれ!!
「……まぁ…お前達を連れて来た理由だが
俺の知人を二人向こうの世界に
引き込もうと思ってな。
その為には、どうしても、お前達の
力が必要だったんだよ」
いやいや…お前、結構な爆弾発言
してるからな。
要は、こっち側の人間を追加するって事だろ?
しかも、バベルの知り合いを引き込むって
間違い無く普通の奴じゃねぇよな?
「何で、急に増やすんだ?
別に、今の状態でも問題ねぇだろ」
「問題あんだろ。
俺達は、向こうで少しばかりデカく
なったからな。人手が足りん。
特にボス達に至っては殆ど休暇が無い。
その為に、こっちの人間を最低でも
二人必要だ」
あぁ…なる程。確かに、バベルの
言ってる事は一理ある。
バベルは当然だが、ボス達も全く休んでない。
いくら後続の部下達が育っているからと
言っても、まだまだ技術的にも未熟だ。
ましてや、国を飲み込んだゲヘナでは
圧倒的に指導者が少ないのだ。
勿論、俺達の世界の剣技や技を教えるだけなら
充分すぎる程の人材が揃っている。
しかし、それでは駄目なんだ。
俺達、ゲヘナの戦闘スタイルは半分以上
バベルの世界の戦闘技術だからだ。
それだけじゃない。
爆発物の取り扱い、トラップ、銃器の使用、
車両の操作など俺達はまだまだ訓練しなければ
いけない事が山積みだ。
「バベルゥ、因みに誰を引き込むのぉ?」
「そうっすね。自分達も聞いて無いっす」
えっ?ボス達も聞いてないの?
「京香が良く知ってる連中だ。
因みに多分、日本人だ」
「……私が良く知ってる…多分、日本人?
………もしかして!?バベル!
あんた、まさか、あの二人組じゃない
でしょうね!?」
京香が少し考えた後に、ハッとして
顔を上げてバベルに詰め寄る。
「その、まさかだよ。
裏の世界では、のっぺら坊と
名無しの権兵衛って呼ばれてる二人組だ」
「うっっわ!!最っっっっっっ悪!!」
二人組の名前?を聞いた京香は露骨に
顔を顰める。
「何だよ、京香。どー言った奴等なんだ?」
京香が此処まで露骨に顔を顰めるなんて
初めてだ。
どんな連中なのか凄い気になるじゃねぇか。
他の連中も俺と同じ考えなのか京香に
注目している。
「………血も涙も無い殺し屋達よ。
のっぺら坊。
名無しの権兵衛。
この二人は裏社会の人間でも数える程度
しか知らない都市伝説並みの人間でね。
姿形が毎度変わって誰も本当の姿を
見た事が無いから、こんなアダ名が
付いているのよ。
実際、私も本当の姿を見た事無い。
性格は、残虐非道冷酷無比で超ド変態。
殺しに快楽を見出す様な連中ね。
はぁ………バベル…アンタ、この為に
ガルちゃん達を呼んだのね…」
「ははっ!まぁな」
えっ!?どゆ事!?
何で、俺達が関係あんの!?
「もう………はぁぁ、ガルちゃん、
それに他の皆も気を付けてね。
割とマジで貞操守った方が良いわよ」
ゾクリッ
お、おお!?何だ!?
急に寒気が!?
「まぁ、そーゆう事だ。出発は二日後。
それまで、この辺で楽しんでこいよ。
比較的、治安が良い場所だからな!」
確かに、例の二人組は気になるけど
この世界も気になるからな!
くぅぅぅ!楽しみだぜ!!
◇ ◇ ◇
そんなこんなで一旦説明が終了し
俺達は外に出た。
そして、改めて、この世界の凄さを
知ったよ。
「ガル君!ガル君!!見て!綺麗な
お洋服が沢山並んでる!?」
ビトーが興奮した様に硝子の奥に
ある服を見てはしゃいでる。
「うおお!建物がデケェ!?
全部デケェ!!うはははは!」
「こんなに発展してるなんて……
馬鹿げてる…意味が解らん…」
「人間の数が凄いね…しかも全員、上等な
服に身を包んでいるじゃないか」
「リヒト姉様!凄いですよ!
この地面!一体何で出来ているのでしょうか!?」
「うむ…石では無いな。うぅむ、解らん」
「凄いわぁ……信じられません…」
騎士達も見事に、はしゃぎ回ってるな。
しかし…マジで凄い世界だよ。
生活の水準から何もかもが俺達の居た
世界とは段違いだ。
「本当に、こんな世界があったんだな。
マジですげぇよ!!バベル」
「俺達の世界を褒めてくれんのは良いが
あんまり目立ち過ぎんなよ…。
結構、注目されてんぞ。後、尻尾を
ブンブンすんなって。一応飾り物として
通すつもりなんだから」
尻尾は仕方ないだろ!?
興奮が抑えらんねぇんだから!
それに注目されてるって…。
あぁ…何か、さっきからチラチラ見られてると
思ってたけど、やっぱり見られてんな。
でも、当たり前だよな。
俺も大分はしゃいでるけど、それ以前に
女達が超絶美人揃いなんだから。
これで、バベルやボス達が居なかったら
絶対に声掛ける奴が居ると思う。
でも、流石に目立ちすぎたか。
「ほれ!お前達、移動するぞ!」
バベルが手をパンパンと叩く。
全員、まだまだ見たりないし遊び足りないと
言った顔をしているが仕方ない。
ゾロゾロと美女集団と共に歩いていると
不意に叫び声が聞こえた。
「きゃあーー!泥棒!誰かー!」
叫び声を確認すると前方300メートル程で
老人の女性がカバンをひったくられた様だ。
「おらぁ!!邪魔だ!どけ、コラァ!!」
そう怒鳴りながら泥棒とやらが俺達の方に
走ってくる。
止めた方が良いかな?
と思っていたら騎士の連中が既に
動き出していた。
「そこの人間!止まれ!」
ウィルが叫ぶ。
「んだ!?てめぇ!ぶっ殺すぞ!!」
そう言って男がポケットから拳銃を
取り出したのだが…。
ゴキンッ!
「おぎゃああああああ!?腕がぁぁ!?」
泥棒が拳銃を向けた瞬間、物凄い速さで
ウィルの姿がブレたと思ったら相手の肘に
右フックを一撃。
それで相手の腕が、あらん方向に
へし折れてしまった。
その光景を見てウィルが困惑している。
「ん?何だ、この人間は?
ちょっと小突いただけだと言うのに…。
バベルよ。貴様の世界の人間は、
弱すぎないか?向こうと変わらんぞ?」
うん。よっわ!何、これ?
俺でも瞬殺出来るぞ。
「チンピラなんて、こんなもんだ。
つーかな、大半の人間は、お前達に
勝てねぇよ。当たり前だろ」
「えぇ!?」
ウィルも他の連中も驚いている。
俺も少し驚いて居るが…何だろうか…。
何か、ちょっと嬉しい。
最近はバベル達のせいで獣人最強説が
無くなりつつあるが……ふふん!
ちょっと優越感だ。
その後、俺達はチンピラを放置してカバンを
老婆に返却。
大層、喜んで何度も礼を言われたぜ。




