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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
192/248

閑話「部下」

ちょいと遅れました(´;ω;`)

そして新しくブクマしてくれた方!

有難う御座います!今後も頑張っていきますねヽ(*´∀`)ノ


元他種族刑務所の訓練場所に

一人の獣人が立っている。

そして、その獣人の眼の前には

300人の獣人、亜人、人間が

列を作り立っていた。


「俺が上司のガルだ」


少し緊張した面持で300人の前で

発言するガル。


うおお!流石に少し緊張するな!

なんてったって此処に居る300人が

俺専属の部下になる訳なんだけど。

大丈夫かなぁ…。


ガルは自分の部下になる者達を

見回す。

ある者は期待した眼を向け、また

ある者達は納得出来ない様な顔を

している。

此処に居る者達は全員、ゲヘナが

ファルシア大国を支配後に志願して来た

新隊員達だ。


「お前達は、これから特殊な訓練過程を

 経て様々な仕事に就いて貰う事になる。

 訓練は想像以上に厳しい。

 ハッキリ言って泣きたくなる程だ。

 けど、それを耐えれば必ず強くなる。

 それは間違いないぜ。

 俺も少し前までは只のチンピラだったけど

 強くなる事が出来た。

 だから頑張ってくれ。

 それから解らない事は必ず聞いてくれ」


「じゃあ、質問良いっすか?」


ガルが部下になる者達に激励をした後に

図体がデカイ獣人達が前に出て来た。


「俺達は今まで盗賊で飯を食って来たんだけどよ。

 近隣諸国の取締が厳しくなって此処に来た。

 犯罪者だろうが盗賊だろうが大歓迎って

 聞いてな。

 でよぉ、何で此処に最下層の人間が居るんだ?

 つーか、先輩ってまだ餓鬼だろ?

 俺は自分より弱い奴の下に付く気は無いぜ」


頬に大きな傷がある獣人が睨む様に

ガルを見る。


おお!中々ハッキリ言う奴だぜ。

見た感じ俺と同じ狼人族か。

んで後ろに居る連中が盗賊時代の部下達か?

30人ぐらい居るな。

まぁ、こいつ等が言いたい事も解る。

此処に居る連中の大半は外から来た

犯罪者や指名手配犯達だ。

それ以外は農村で口減らしとして

売られた者達や奴隷の人間達。

バベル達が凶悪だと言う事は少しは

分かっているんだろうが納得は出来ないよな。

実際にバベル達の異常性を見た訳じゃないし。

ましてや、自分達の上司になる奴が俺みたいな

若造じゃあ喧嘩腰になるわな。


「んじゃあ、俺が強かったら部下に

 なるんだな?」


「男に二言は無ぇよ。強かったらな!」


その言葉を聞くとガルは喧嘩腰の

狼人族の前まで歩いていく。

そして、お互い手が届く距離で

立ち止まり口を開く。


「俺は素手だ。かかって来いよ」


「………」


ガルの言葉を聞いた獣人は怒鳴るでも無く

静かだ。だが、こめかみに青筋を浮かべ

殺気の篭った眼で睨んでくる。


「こねぇのか?」


ガルが薄ら笑いを浮かべる様に

挑発すると盗賊出身の獣人が眼を

見開く。


「舐めんな!!小僧がぁ!!」


ガルめがけて拳を振って来る。


あぁ…やっぱ遅ぇな。

力任せな大振りなんて、こんなもんか。

素人の人間や獣人相手なら対応出来ねぇけど

今の俺からしたら余裕だ。

つか、訓練課程を修了した人間でも

対処出来るだろうな。


ガルは迫り来る拳を左手の甲で捌き

身体を半身の体勢にし獣人の身体に

潜り込み右腕を相手の腰に回し込む。


「えっ!?」


元盗賊の獣人が声を上げる。

その瞬間、巨体の獣人の身体が浮いた。

ガルは、そのまま腰を密着させたまま

身体を捻り相手を地面に叩き着ける。


「ぐおっ!?」


背中から叩き付けられた相手は

受身も取れずモロに地面にぶつかり

苦悶の表情を見せる。

制圧するだけなら本来此処で終わりだ。

しかし、ガルが教わった技術は相手を

殺傷する技術。まだ続きがある。


ガルは仰向きで苦しんでいる獣人に

拳を叩き込む。


ドゴォ!!


「ハァ!ハァ!ハァ!?」


「俺の勝ちだぜ」


男は眼を見開き頬を掠めたガルの拳を

見て冷え汗を流していた。

他の者達も信じられない様な光景に

呆然としていた。

それも、そうだ。

ガルの様な若造が盗賊出身で190は

あろう巨躯で筋骨隆々の獣人を投げ飛ばし

文句の付けようが無い程の圧勝だ。

驚くのは無理は無い。


「俺の部下になってくれっか?」


ガルは倒れている相手に手を差し出す。

それを見た男は口元を釣り上げガルの手を

取り立ち上がる。


「参ったぜ。まさか此処まで完膚なきまで

 負けるとは思っても無かった。

 ガル…いや、ガル先輩。

 男、アルドルフ!以下盗賊団32名は

 アンタの部下になる!!

 宜しくお願いします!」


アルドロフと名乗った元盗賊団頭領が

両膝に手を置き頭を下げる。

それを見た他の盗賊団員も同じ姿勢で

頭を下げる。


「アルドロフ。これから宜しくな!」


「承知しました!」


大きな声で承諾したアルドロフ。


へぇ、結構骨がある奴だな。

鍛えたら相当強くなりそうだし

良い部下になりそうだ。

盗賊団以外の連中も俺達の様子を見て

納得したのか全員が頭を下げる。




◇ ◇ ◇




その後は、他の者達からの質問を

答えたり今後のスケジュールを教えて

解散になった。……なったのだが、

結構な人数に囲まれている俺。


「ガル先輩!マジ強いっすね!?」

「お、俺も強くなれますか!?」

「ガルさん!前からファンでした!!」

「テメェ等!俺がガル先輩に質問してんだろが!?」

「アルドロフは、さっき質問したろうが!」

「んだと!?テメェ!」

「ガル先輩、魔物が居るんですが!?」


お…おぉ…何か、やたらグイグイ来るな。

俺、そんな大した事してねぇんだけど…。

こいつ等もまだまだ聞きたい事があるようだ。


「落ち着け!お前等!一人ずつ質問しろって!

 ほら、そこの休憩スペースに行くぞ!」


ガルは揉みくちゃにされながら訓練所に

設置されているスペースに移動する。





「ふぅ…で?さっき色々と質問に

 答えただろ?他に何が聞きてぇんだよ」


さっきも言ったが俺は先程色々と質問に

答えたし施設内のルールや注意事項なんかが

書いてある用紙も渡した。

当然、識字率が低い連中だから言葉にして

伝えたんだがなぁ。


「そうだね、ガルさんの強さって此処の

 組織では、どの程度なんだい?

 強さの基準を知りたいなー」


「おう!ガル先輩になんつー口の聞き方

 してんだ?ぶっ殺すぞ?ダークエルフ」


「女の子にモテなさそうなアルドロフは

 黙ってて欲しいなー」


「よし!殺す!!」


アルドロフとバチバチと火花を散らしている

ダークエルフの男。

確か資料では…えーと、アラグディアって

名前か。

罪状は、詐欺・窃盗を13件繰り返し

近隣諸国で指名手配ね。


「まぁ、待てよ。アルドロフ。

 えぇと、アラグディアだったか?

 俺がゲヘナでどの程度強いって質問

 なんだがな。

 中の下って所だ」


「マジですか!?ガル先輩!!」


「へぇ…そうなんだ」


ガルの言葉にアルドロフは驚愕し

アラグディアは妖艶な笑みを浮かべる。

何か…こいつ無駄に色気あんな。男のくせに…。

やっぱ種族の特性なんだろうな。

ダークエルフだし。


「ゲヘナには強い奴が多いって

 聞いてたけどよ…ガル先輩が

 中の下なんて信じらんねぇな」


アルドロフが呟くと周りの連中も

頷いている。


「いやいや!マジだからな。

 俺達が居る組織は相当異常でよ。

 騎士団隊長達ですら中の上ぐらいだぞ。

 そうだなぁ、そこん所詳しく言っとかねぇと

 ヤバいかもな。

 なんせ見た目と実力が全然比例しない

 連中ばかりだから」


此処ん所しっかり説明しないとヤバいか…。

元々アテゴレに居た連中ならまだしも、

外から来た連中が大半の連中だ。

人間だからって理由でボス達に絡んだら

ぶっ殺されちまう。


「そうだなぁ…おっ?丁度良い所に

 あいつ等が訓練か。

 お前達あそこ見て見ろ」


ガルが訓練場の中央に指を向けると

軍狼達と元暗殺者のリーとツヴァイが

近接戦闘の訓練を始めている。


その光景を黙って見ている部下達。

全員、驚きすぎて酷い顔だな。

見た事の無い技術に恐ろしい程に

正確な攻撃。

自分達より明らかに年下の女、子供が

強者の風格を身に纏い訓練しているのだ。

驚くなと言う方が無理だろう。


「う、嘘だろう…あんなチビっ子共が…」


「へ、へぇ~…あの女の子強いんだね~…。

 ナンパしなくて良かった…」


おいおい。アラグディアよ。

リー達ナンパしようとしてたのか?

止めてくれよ。せっかく俺に部下が

出来たのに減らされたらたまったものじゃ無い。


「リーとツヴァイは元暗殺者だ。

 強さは騎士隊長クラス。んで、軍狼の

 黒髪の女の子居るだろ?

 あいつも他の連中も全員元々バベルの

 商品だったが今では相当強い。

 一応、軍狼リーダーでビトーってのが

 中の中で俺より強い。あれで平均クラスだぜ」


「平均って…全然動きが見えねぇんですが…」


「言ったろ?何で犯罪組織が国を滅ぼせたかって。

 強いんだよ。此処に所属してる連中が全員、

 化物並にな。

 隊長達や軍狼の上のクラスになったら

 最早、災害級だぞ?

 一人でも何処ぞの街や小さな国に紛れ込んだら

 滅ぼしかねない連中がゴロゴロ居る」


俺の言葉に全員の顔が引き攣る。


「看守長のノルウェ・始末屋プー

 魔物軍総大将の閻魔・冒険者殺しの山王

 獄卒 修羅 羅刹 夜叉。

 この連中は規格外。団長のリヒトでも

 多分勝てねぇな。

 知ってるか?こいつ等が何て呼ばれてるか」


「はい…確か【七大厄災】ですよね」


そう。いつの間にか、こいつ等は巷で

【七大厄災】なんて物騒な呼び名で

周りに周知されている。

余りにも規格外過ぎる戦い方で住民達から

畏怖と尊敬の念を抱かれているのだ。


「そんな厄災達の上に居る連中が、

 ポス・ホバック。

 剣崎 京香。

 ガストラ・ラベラだ。

 聞く奴が聞いたら腰が抜けて立てなくなる程

 恐れられている連中だぜ。

 信じられるか?こいつ等、人間なんだぜ?」


「でもさ、強さ的には厄災達の方が

 強いんじゃないかなー?」


「アラグディアの言う通りだ。

 間違い無く強さで言ったら厄災達の方が

 断然上だ。

 けど、この組織は強さだけで序列は

 決まらない。

 知識・技術・経験・成果・信頼。

 残虐性・異常性など各要因が必要だ。

 ボス達は知識・技術・経験が

 ゲヘナで桁違いに豊富なんだよ。

 殺すと言う事だけに焦点をあわせれば

 厄災達より数段上のレベルに居る」


ゴクリッと喉を鳴らす面々達。

厄災と呼ばれている化物達よりも

殺す事に特化した人間。

信じられない事だらけかも知れないが

紛れもない事実だ。


「そして、そんな連中を総まとめに

 しているゲヘナのトップが…」


「俺だ」


「「「ぎゃあああああああああ!?」」」


ガルの言葉に合わせるかの様に

突如現れたゲヘナのトップ。

いきなり現れたラド・バベルに新人達が

一斉に驚き叫び声を上げる。


「はっはっ!順調な様だなぁ。ガル」


「急に出て来んなよ!?吃驚したじゃねぇか!」


この野郎!また急に出て来やがって!

フットワークが軽すぎんだよ!

一応、ゲヘナのトップだぞ!!


「あ…あの方がゲヘナのトップ…」


「マジで人間なんだな…」


「う、うわぁ…顔が怖すぎるー」


戦々恐々としている俺の部下。

つか、アラグディア。顔が怖いとか言うな。な?

俺が怒られるんだぞ。


「こうやって喋るのは初めてだな。

 初めまして。此処のトップになってる

 ラド・バベルだ。

 挨拶が遅れてすまない。如何せん

 仕事と人数が爆発的に増えて忙しくてな。

 まぁ、なんだ。

 トップだ何だと言われているが余り

 気にしないでくれ。

 堅苦しい団体じゃなくて所詮、犯罪組織だ。

 気軽に頼むぜ。

 そんで、しっかりガルを助けてやってくれ」


ケラケラと笑いながら軽い感じに

喋るバベルに全員安堵の表情を浮かべる。

中には、あれ?この人間は普通なんじゃ?って

顔をしている奴まで居る始末だ。

だが、バベルの次の()を聞いた瞬間、

全員の考えが間違っていたと思い知らされる。


【ただ、俺達を裏切ったり敵対する奴は

 地獄を見せるからな。

 忘れるなよ?ルーキー共】


とんでも無い程の重圧と冷たい声に

俺の部下達は氷水を被ったかの様に

ガタガタと震え顔を真っ青にしている。

間違いだった。

ラド・バベルが普通の人間?

とんでも無い!!

ラド・バベルは此処の組織に属している

誰よりも恐ろしい人間だ!

絶対に逆らっては駄目な人種だと

本能で感じる事が出来た。


その光景に満足したのかバベルは

普通に歩いて何処かに行ってしまった。


あ~あぁ!皆固まっちまったじゃねぇかよ。

どうすんだよ…これ。


そんな事を考えながらガルは今後の教育を

どうするか悩むのであった。


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