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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
182/248

バベルの世界「窮地」

むはー(*゜▽゜*)評価&登録してくれた方、有難う

御座いますーー!嬉しいですー!やったああああ!

ピチョン…ピチョン…。


ファルシア大国に聳える城の地下牢の

天井から水滴が落ち床を濡らす。

この地下牢に投獄されて約10日間、

バルバトス元国王とケイト第2王女、

そして元騎士団団長のリヒトは身を

寄せ合い耐えていた。


「ゴホッ…ゴホッ!」


「国王陛下!?」


「お父様!?大丈夫ですか!?」


陛下がセイント王子の造反によって

地下牢に投獄されてからというもの

容態が芳しくない。

閉鎖的な空間、澱んだ空気、野菜クズの料理。

体調を崩すのも無理は無い。


「おい!そこの門番よ!

 陛下の容態が悪いのだ!ポーションを

 持ってきてくれ!」


二人組の門番に声を掛けるが、バツの

悪そうな顔をする。


「……申し訳ありません。陛下…リヒト様。

 バベル達の全面戦争でポーションが不足

 しているのです…。

 殆どのポーションは前線に出ており…

 その…我々では確保出来ないのです」


「くっ!」


全く!最悪なタイミングでバベル達に

戦争など仕掛けるからだ!

騎士団寄りの門番から少し情報を聞いたが

既に平民地区が陥落しバベル達の手に落ちたそうだ。

その影響で国軍、騎士達が大勢死に、

怪我人が山程出ているという。


当たり前だ…。

あのバベル達だぞ?私の騎士団を完膚無きまで

叩き潰し、国を相手に平気で脅迫する様な

連中相手に只で済むはずがない。


「ゴホッ…ケイト…リヒトよ」


苦しそうに陛下が私達に声を掛ける。


「この…国は直に滅ぶ…。儂も長くは無いだろう。

 もし、この国がバベル達の手に落ちたら…、

 王族の隠し通路から国外に逃げなさい…」


「何をおっしゃるのですか!?」


「そうです!?陛下を置いて逃げる事など

 出来ません!!

 それに、まだ滅ぶと決まった訳では

 ないでは無いですか!?」


陛下の言葉についつい声を荒げてしまった。


ズズンッ!……ドドンッ!!


地鳴りの様な爆発音が地下牢にまで響き、

石煉瓦の欠片がパラパラと降ってくる。


「お主達も聞こえるだろう…?

 先程から攻撃の頻度が多くなっとる。

 バベル達の攻撃で無いと祈りたい所じゃが…

 此処まで強力な魔法を使用出来る者達は

 我々の兵に居ないじゃろう…。

 そう考えれば自ずと答えが出る」


憔悴しきった顔で国王陛下が言う。


……国王の言う通りだ。

この国で、此処まで大規模の爆裂魔法を

使える者達は私が知っている限り居ない。

しかも、先程から鳴っている爆発音は、

貴族街での無差別攻撃とボス達との訓練中に

使用した爆薬と言う物が爆発する音だ。

あんなものを使用されれば国軍の兵士とて

ひとたまりもない。


「で、では、お父様も一緒に逃げましょう!

 病は逃げてからでも何とでもなります!

 お父様を置いてなんて嫌です!!」


ガバッとケイト王女が陛下に抱き着く。


「ケイトよ…すまぬ。儂の病は治らぬよ。

 自身の身体の事は儂が一番解っている。

 それに、国王としてのケジメも取らなければな。

 愚息とは言え儂の大切な息子が仕出かした事じゃ。

 責任は取らねばなるまい」


その言葉に私達は何も言えなくなる。


元はと言えば陛下の御子息のセイント王子が

造反などと言う愚かな行為を仕出かしたせいで

此処まで状況が悪くなった。

セイント王子とバベル。

お互い最悪なトップだ。

だが、この二人には決定的な違いがある。

セイント王子は、ハッキリ言って愚か者だ。

国王の座に着いてからは傲慢な性格が更に

酷くなっていた。

好き勝手に軍が有利になる法案を通そうとし、

毎夜の様に華やかなパーティーを開き、

国庫の金貨を湯水の様に使っていた。

相手が人間だからと驕り油断し、

侮っていた。


対してバベルは違う。

あの男は滅茶苦茶だが馬鹿では無い。

常に情報を集め、狡猾でスラム街を

制圧しゴロツキ共を従えて来た。

異世界の武器を使用し恐ろしく凶悪な兵達が

居るにも関わらず驕らず油断せず相手の戦力を

見極める。

その下に従っている兵達も常に血反吐を

吐くような訓練と実戦を繰り返していた。


これだけ言えば、どっちが勝つかなんて

子供でも解る事だ。


バンッ!!


沈黙が流れていると、地下牢の入口が

勢い良く開けられ切迫した表情の兵士達が

数人入って来て門番に話しかける。


「最悪だ!ゴードン地区が陥落した!」


「はっ!?冗談だろう!

 そもそも、貴族街の入口にはダガール様達が

 居たはずだ!?」


「ダガール様は…戦死した…」


その兵士の言葉に門番達は言葉を

失う。斯く言う私や陛下も耳を疑った。

ダガールが戦死した?

あのダガールがか?

実力だけなら私と同等で経験値を入れれば

私よりも実力があるかも知れない男が

戦死しただと…。


「相手は剣崎だ…。物凄い戦いだったらしいが

 ダガール様が深手を負わされ勝てぬと悟り

 敵ごと爆裂魔法で自爆した…と」


相手は剣崎か…。

ダガールもせめて一人でも驚異となる

敵を消しておきたかったのだろう…。

それで……自爆とは…。


「…そんな…国の英雄であるダガール様が…」


「信じられん…リヒトと同等の実力を

 持っている男が殺られるとは…」


陛下もケイト王女も悲痛な表情をしている。


これは…本当に国が落ちるかもしれん。

ダガールが戦死した事により軍の士気は

間違い無く下がるだろう。

残っている者達で実戦経験がある者達も

少なからず居るが…多分、バベル達には

敵わないと思う。


バベルの兵士は歴戦の兵士だ。

剣崎は死亡したか重症のどちらかだと

思うが、まだボスとガストラが残っている。

この二人が残っているだけでも質が悪い

と言うのにSランクの魔物も多数居る。

そもそも、バベル側は通常の兵でも少なく

見積もってもCランクだ。

国の兵士が10人掛りで倒せるかどうかと

言う者達ばかり。


くっ!大体、戦力が異常過ぎるのだ!

何処の世界にCランク以上の者達を千人単位で

束ねている裏組織が存在するのだ!

小国程度なら一日と掛からず陥落する

戦力だぞ!!

そして、最悪なのが、その組織のトップが

バベルと言う事だ。

化物の中の化物だ。

異常なカリスマ性と狂った思考の持ち主。

言葉で敵を殺す事が出来る正真正銘の怪物だ。

そんな者に国を支配されてみろ。

地獄以上の未来しか無い!


リヒトは拳を強く握り鉄格子に近付く。


「門番達よ…私を此処から出せ」


「リヒト様!?無理です!例え貴方の命令でも

 セイント国王からの指示が無ければ出す事は

 出来ません!!」


「……お前達、家族は居るか?」


リヒトの言葉に門番も先程、入ってきた

兵士達も小さく頷く。


「バベルがファルシア大国を手中に収めれば

 待っているのは地獄だ。

 年老いた者達は殺され、若い者達は商品として

 娼館や強制労働送りだ。

 それだけでは無い!

 紛争地域に奴隷兵として売り飛ばされる

 事になる!!それでも良いのか!?」


バベルのファルシア大国奴隷化計画。

あいつは国など維持するつもりは無い。

欲しいのは獣人や亜人、人間達だけだ。

今回敵対した者達も平民街の者達も

貴族も全て商品にするだろう。


「此処で私を釈放し後悔するか、

 釈放せず只、バベル達が支配する地獄を

 味わうか二つに一つだ。

 今、決めろ」


凛とした姿勢で真っ直ぐ門番達を見つめる。

そして……。


「リヒト団長…貴方を釈放します」


門番は、そう言うと鍵穴に鍵を差込み

扉を解放する。

それを止める者達は誰一人居なかった。


「感謝する」


そう言い、門番達に礼を言うリヒト。


「陛下…ケイト王女…もう暫くお待ち下さい。

 必ずお迎えに上がります」


リヒトは片膝を地面に着き頭を下げた。


「…リヒト、気を付けて下さい」


ケイトは眼に涙を溜めてリヒトの無事を

祈り陛下は無言で頷いた。


「リヒト様…剣を」


一人の兵士がリヒトの愛剣を両手で

差し出す。


「リヒト様…国を…民達をどうか

 宜しくお願い致します…」


門番と兵士がリヒトに敬礼すると

リヒトも敬礼し地下牢から出て行くのであった。


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