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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
18/248

バベルの世界「生贄」★

シバァールのアジトを後にする頃には、

すっかり夜が明けていた。

バベルに、「孤児院に案内してくれ。」と

言った時は、終わった…と思ったが、このまま

こいつ等を放置したら何するか解ったもんじゃねぇし

すぐに、王都の兵士やらがスッ飛んでくるだろう。

だから仕方なく…助けられたからとかじゃなくて

仕方なく案内した。

孤児院に、行くまでに何度か絡まれたが

シバァールの無残な姿を見た瞬間

あっという間に逃げて言った。

まぁ、京香が「また、むさい野郎かよ。」と

眼で相手を殺しそうな勢いもあったからだと

思う。

そうこうしてる内に、孤児院に着いた。


「随分、立派なんだな。」


ボスも京香も「ほぇ~」と口を開けている。

ふん!当たり前だ!!

シスターと自慢の弟が努力したんだからな!

俺も微力ながら手助けしてし。


「いいから早く入れよ!こんな所、

 他の獣人に見られたくねぇんだよ!」


急かす俺に、バベル達は「お邪魔します。」と

極悪人らしからぬ事を言う。

こーゆう所は、まともなんだな思い

全員が中に入ったのを確認し扉を閉める。


「シドー!居るか!?」


「兄さん!!」


良かった…無事だった事に素直に喜んだ。

俺は、今までの事とシドに嘘を言った事を

正直に話した。

シドは、特に驚く事無く聞いて最後に

「やっぱりね。」言っていた。

どうやら全部バレていたみたいだなと

ポリポリと頭を掻いた。

シドが「所で…」と言った時に、後ろに居る

連中の事に気付いた。

そうだった!人間連れて来てたんだ!

慌てて説明しようとしたら。


「バベルさん!本当に、兄さんを助けて

 くれたんですね!

 有難う御座います!!」


シドが、バベル達に頭を下げている光景に

混乱しているとシドが説明してくれた。


「はぁーー!そんな事が、あったのかよ!!」


確かに、俺がシバァールに攫われたなんて

知ってる訳ねぇし、タイミングも良すぎたしなぁ。


「ハッハッ、気にするな。お互い

 ぶつかった仲だろ?」


「あの時は、すみませんでした。でも、

 バベルさんも、頭に木桶被って正直

 面白かったです。」


クスクスッと笑うシドに「言うねぇー。」バベルも

笑っている。


「……何だよ?シド、随分と仲が良いんだな。

 人間相手に。」


シドが、人間相手に喋っている姿を見て

つい、意地悪な事を言ってしまった。


「僕は、別に人間さんは嫌いじゃないよ?

 それに、兄さんを助けてくれた人じゃないか。

 仲良くしたって良いでしょ?」


「ぐぅぅ!けど!何か腹立つんだよ!!」


そー言った瞬間、バベルは「夫婦か!」と突っ込み

京香は、鼻血を出し手で抑えながら、

「///萌える…///」と言っていた。

因みに、ボスと途中から合流したガストラは、

苦笑いしつつ「天然だねぇ」と言っていた。

何か、変な事言ったかな?

まぁ、いいか。


「さて、そろそろ俺達は行くぞ。

 ガル、仲間になる決心はついたか?」


性懲りもなく何言ってやがる?

あんな光景見せられた後に、仲間になる奴なんて

いる訳ねぇーだろ!

よって俺の答えは。


「クソくらえだ!!シドには、礼を

 言うけどな。

 元は、テメェ等が元凶だろ!」


我ながら、バルダットファミリーを潰した連中に

よくこんな事、言えたなと思ったが、

バベルがシドと仲良く喋っていたのを見て

むしゃくしゃしてたんだろう。


「そうか。残念だ。」


「もう、いいだろ?さっさと帰れ。

 ほら!シドも、いつまで人間の

 近くに居んだよ。

 こっち来いって!」


シドを呼び寄せようとするが、バベル達から

動こうとしない。


「シド?」


何だ?どうして、動こうとしない?


「…兄さん…ごめん…。」


ポツリと呟くシドは、少し震えていた。


「僕ね…商品になったんだ。」


「…は?」


意味が解らなかった。シドは、何言ってんだ?

商品?商品って何だよ!?

ハッとシドの後ろに居るバベル達に視線を

向ける。


そこには、今まで見た事の無い光景があった。

バベルもボスも京香もガストラも顔が無い。

笑っているのか、悲しいのか、怒っているのか、

全部が混ぜこぜになったように歪んでおり、

全員の顔が認識出来ない。

声も、子供の声、男の声、女の声、老人の嗄れた声

全部がごちゃ混ぜだった。

まるで幻覚を見ているような光景だったが

すぐに、元に戻った。

さっきまで、引いていた汗が一気に出で来たのを

感じる。

挿絵(By みてみん)

「な…冗談言ってんなよ…シド!

 早く、こっちに来いって!!」


「冗談なんか言ってねーよ。この子は、

 俺に言ったぞ?

 兄さんを助けて下さいってな。」


シドの顎を、クイッと上に上げる。

その瞬間、ビクッ!とシドは震えた。


「シドに触んな!!」


「ハッハッ、そう怒るなよ。この子は、

 もう商品なんだよ。

 しっかりと取引もした。

 ガルを助ける代わりに、君の全てを貰う

 とな。」


ガルは、握り拳をギュっと握り締める。

ふざけんな!シドは、俺の弟だ!

何、勝手に身売りなんかしてんだよ!!


「シド!この、大馬鹿野郎!!

 勝手に何やってんだよ!お前、こいつ等が

 どんな人間か解ってんのか!?

 目的の為なら躊躇無く殺す頭の

 イカれた集団だぞ!!!

 俺達の、命なんて何とも思ってねぇんだ!」


バベルに対する怒りより何も相談しなかったシドに

対する怒りの方が強かった。

シドは俺の言葉を俯きながら聞いていたが、

いきなり真っ直ぐ俺を見た。


「馬鹿なのは、兄さんの方じゃないか!!」


シドが、大声で怒鳴る。

今まで、一度たって怒鳴るシドなんか見た事

無かったから眼が点になってしまった。


「僕だって兄さんを助けたかったんだ!

 いっつも、助けられてばかりで!!

 いっつも、危ない事ばかりして!!

 僕も、役に立ちたかったんだ!

 兄弟なんだから少しは、僕の事も

 頼ってよ!!」


シドの眼からは、大粒の涙が零れ落ちる。

でも目線は、真っ直ぐだ。

こんなに、ハッキリとシドに言われたのは、初めてで

何も言い返せない。

今、思えばシドの気持ちなんて考えて無かったの

かも知れない…。

馬鹿は、俺の方だ。

俯いて何も言えないでいる俺に、バベルが

話掛ける。


「良い弟だな。感動したよ、

 そこで相談なんだが、お前、この子を

 買えよ。」


「はっ!?」


「人身売買を生業にして来たんだろ?

 なら、一緒だ。金を払って買えば

 いい。だろ?」


弟を金で買う…全く笑えねぇ。

しかも人間から買うなんて…金を払った時点で

獣人売買も成立しちまう。

クッソ!畜生!!最悪だ!

俺が買わなきゃシドは、売られちまう!!

覚悟を決めろ!!!


「いくら…だ。」


震える声で精一杯絞り出す。


「金貨5000枚だ。」


金貨…5000…?

金貨5000枚って言ったか?こいつ。


「俺達の世界では、居ない種だからな。

 もっと出す奴なんて腐る程いるぞ?

 大分、サービスしてるんだがな。」


「ふっざけんな!!金貨5000枚なんて

 大金、払える訳ねぇだろ!!」


「稼げば良い。」


「何十年掛かると思ってんだ!?

 それに、そんな稼げる仕事スラムに有る

 訳ねーだろ!!」


「ハッハッ、簡単だ。俺の所で働け。

 そーすりゃ金貨5000枚なんて端金すぐに

 稼げるぞ。」


…コイツ…初めから、そのつもりで…。

やられた…完全に掌で転がされてたんだ。

もし、シドに出会って無くても何かしらの弱味を

見つけて俺を囲い込むつもりだったんだろう。

負けた…完膚無きまで俺の負けだ。


「……お前の所で…働く…。」


「ハッハッー!宜しくな!楽しくなりそうだ!」


こうして、色んな事を犠牲にしてガルは仲間になった。

波乱の幕開けである。

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