バベルの世界「発情」
平民街の中央付近…。
俺達はボスと京香の戦いに
巻き込まれない様に一時撤退し
この辺りを陣取って居る。
この付近には敵は居ない。
歯向かう者は軒並み殺したからな。
それで今後の話をバベルとガストラ、
他の幹部達と話し合っていたんだが
その最中にボスが帰って来た。
見た所、怪我もしてなくて黒狼一族の
大半を殺害し、シーシャと言う長を
処理したとの事。
それを聞いて特に驚いたのはリーと
ツヴァイの二人だ。
黒狼一族は一般兵でも相当強く、中でも
一族を率いていたシーシャと言われる
女は騎士団の隊長より上でリヒトの少し
下ぐらいの実力らしい。
そんな連中をボス一人で片付けた事に
一層尊敬の眼差しを向けていた。
あれ?これって結構順調じゃね?
なーんて思っていたらデカイ爆発音が
して一時騒然となった。
しかも、あの辺は京香が戦っていた
付近だ。
バベルが確認の為に兵を出そうと
していると、その京香が運ばれて来た。
重症でだ。
それからは、まぁ大変!
閻魔達は泣き叫ぶし、ガストラとボスは
応急処置で動き回り、他の連中は上級ポーションを
取りに行かされ、俺はテンパってた。
冷静だったのは、バベルと処置をしていた
ボス、ガストラだけだ。
そのぐらい京香が重症を負った事に
動揺したのだ。
そりゃそうだ。
あの京香だぞ?
素手で獣人や魔物を葬れる程の怪力の
持ち主で歴戦の兵士の京香が重症を
負わさるなんて信じられない。
テンパるのも解る。
まぁ…テンパっている俺達にボスが一喝
したら全員冷静になったけどさ。
「此処は戦場だ!どんなに優れた兵士でも
死ぬ可能性は有る。
いちいち、騒ぐな!」
そんな事を申されても……っと思ったが
ぐっと飲み込む。
そうだよな。いくらボス達が強くても
不測の事態ってのが普通に起きる場所だ。
散々、訓練で言われた事じゃねーか。
よし!
少し落ち着いてきた!
京香も応急処置とポーションの御蔭で
傷がみるみる消えてあっと言う間に
全回復だ。
その光景を見ていたボス達が苦笑いだけど。
「自分達の世界にポーションが有れば
大勢の兵士が助かるんすけどね…」
「馬鹿げた効果だな…どうなってんだ?
確かに、ガストラの言う通りだが、
こんな物あったら医療技術が廃れちまう…。
しかし…いや、何でも無い」
はぁぁっと大きな溜め息を吐くボスとガストラ。
何にせよ京香が無事で良かった。
バベルも色々と聞きたがってるしな。
「京香、無事で何よりだ。悪いが状況を
教えてくれ」
「………」
あれっ?何で無言?
バベル達も、んっ?て感じで首を
傾げている。
「おい、大丈夫か?」
バベルが、もう一度声を掛けると京香が
勢いよく立ち上がる。
そして、キョロキョロと辺りを見渡す。
んん?誰か探してんのかな?
忙しなく動いていた京香の首が止まり
一点を見つめる。
その先に居たのは今回の功労者、ポポロだ。
京香は、ポポロを見つけると無言で
歩き始め近づいていく。
「あっ!?京香の御嬢!怪我が治ったんですね!
良かった!本当に良かったです!!」
「……」
「お、御嬢?」
未だ無言の京香にポポロが戸惑っている。
バベル達や他の連中達もその光景に釘付けだ。
そして事態は動き始めた。
急に京香が両手でポポロの頭を
ガッチリと固定したのだ。
な、何すんだよ、京香!?
ポポロは怪我したお前を運んでくれた
恩人なんだぞ!!
握り潰す気か!!?
「ちっ!まだ混乱してんのか!?」
直様、ボスとガストラが止めようと
走り出した瞬間。
チュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!
現場が凍り付いた…。
京香がいきなりポポロに…せ、接吻したのだ。
これには全員が驚いた。
マジで驚いた。
バベル達は眼が点になってるし俺も
状況が良く理解出来ない。
チュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!
しかも長い!!いつまでチューしてんだ!!
「んんーー!?んーーーーーー!??」
ポポロもテンパって何とか京香を
引き離そうとしているが万力の様な
力で押さえつけられている為、全く
意味を成していない。
プハァっと長い接吻が終わり口を
離す。その口からは涎が糸を引いている…。
なんか…エロいんですけど…。
とゆーか京香の眼が据わりすぎている。
まるで肉食獣が獲物を見つけた様な感じで
ポポロを見つめている京香。
「き…京香?」
俺が声を掛けるも無言だ。
あっ、動き出し…って、ちょおおおおお!!
動き出したかと思ったら徐に京香が
上の服を脱ぎ始め上半身の引き締まった身体と
デカイ…む、胸ががががが!!
「「「うおおおおおおおおお」」」
京香はポポロを押し倒し馬乗りの
状態に。
周りのゴロツキ共は狂喜乱舞し、
俺はモロに京香の立派な物を見て
思考停止。
後、何故かバベルもゴロツキ共と
混じって叫んでいる。
歴戦の猛者であるボスとガストラが
止めると思っていたが流石の彼らも
理解が追いついていない。
そんな中、いち早く動いたのはリーやツヴァイ。
他にも軍狼のビトーやスラムに住む女達だ。
「京香様!まだ戦場です!お待ちを!!」
「皆の眼があります!!落ち着いて!!」
「殿方を襲うのは結構ですが、せめて人前は
避けて下さい!!眼に毒です!!」
一斉に女性戦闘員達が京香に飛びつき
他の女性達は布で周りをガードする。
その行為で外野から野次が飛ぶ。
中でもバベルの野次が一番デカイ。
そんな男連中に女性陣が一喝。
「突っ込む事しか考えて無い男共は
黙ってな!!」
「営みは見せもんじゃないよ!!」
「バベル様!そんなに見たいのならビトーの
身体を見て下さい!!」
「ビトー!アンタまでポンコツ化して
どうする!?
バベル様も阿呆な事言ってないで
止めて下さい!!」
「ボス様ー!ガストラ様ー!
ツヴァイでは引き離せないですー!
助けてーーーーー!!」
もう滅茶苦茶…阿鼻叫喚だ。
その後は、ボスが京香を締め落として
一件落着。
バベルが、何か文句を言っていたが
ボスとガストラの合同ブレーンバスターを
喰らい地面に引っ繰り返っている。
状況を聞こうにも今は京香が気を
失っているので大まかな内容はポポロに
聞いた。
内容は…流石、京香と言うべきか。
大国の英雄でもある軍団長の豪鬼のダガールを
討ち取ったとの事だ。
しかし、ダガールも最後を悟り京香ごと
自爆なんてするもんだから大怪我をしたと…。
半端ねぇな…。
死なば諸共かよ。
他にも、軍の隊長だったジーンとミューを
撃退。
だが逃亡して殺せなかったらしい。
確か、武闘大会の審判だった連中だ。
隊長だったのかよ…あいつ等。
「あぁ~…ゲホッ、気ぃ失っちゃった~」
あっ、京香が起きた。
「この馬鹿が。あれ程、油断するなと
言っただろうが。
ポポロが居なかったら戦死していたぞ」
おおう…ボスの説教だ。
「しかも戦場で盛りやがって…。
何度も戦場を経験してきた兵士が
何やってんだ?
お前は少し一から鍛え直す必要があんなぁ」
「ご、ごめっっ!何か高揚しちゃって、あの、
その…もう大丈夫だから!!」
「あぁ?」
ボスのドスの効いた声が響く。
ボスの説教…怖いんだよなぁ。
京香が怒られてるのに何故か周りの連中も
直立不動の姿勢で緊張している。
「御免なさい…」
シュンとしながらボスに謝罪する京香。
すげぇよなぁ…あの京香ですらボスに
逆らえないなんてな。
ボスも京香の事を想っての事だし
今回は仕方ないけどよ。
「まぁ、まぁボス。京香も反省してるから
良いじゃねぇか。
しかも、ダガールって強い奴倒したんだからよ。
許してやれ」
「チッ…全く」
ボスと京香の間に割り込んで来たバベル。
気がついたんだな。
「京香、ご苦労さん。
大まかな内容はポポロから聞いた。
よくやった。これで戦況が更に有利になる。
それと……」
京香に労いの言葉をかけた後に、バベルは
スラムの連中に囲まれているポポロの
所に歩き出す。
「ポポロ」
「は、はい!!何でしょう!?
バベルの旦那!!」
あっはっは。ポポロの奴ガチガチに
緊張してんな。
当然だわな。
スラムやゴロツキの連中からすれば、
今眼の前に居るバベルは国王を前にするより
緊張する程、雲の上の存在だ。
そんな奴に呼ばれれば誰でも緊張する。
バベルはガチガチに緊張しているポポロの
肩に手を置いた。
「よく京香を此処まで運んで来てくれた。
お前が居なければ京香は死んでいただろう。
そうなれば俺にとって痛手だった。
良くやった!
感謝するぞ。ポポロ。
後日、謝礼する。
本当に有難う。ふふっ、でかい借りが出来たな」
バベルの言葉を聞いたポポロは大粒の
涙を流しながら頭を下げた。
バベルの、こーゆう所は素直に尊敬する。
何処にでも居る冒険者相手に礼の言葉を言う。
中々、権力者が出来る事じゃない。
出来て当然の事を上に行けば行く程
出来無くなるもんだ。
けど、バベルは協力した相手や恩を感じた
相手には平然と頭を下げるし謝礼も
キッチリする。
そんな光景を見ればバベルに忠誠を
誓う連中も大勢出るだろうな。
周りの連中に眼を向けるとスラムの
連中が尊敬の眼差しをバベルに向けている。
「さぁて、カップルも誕生した事だし
早めに戦争を終わらせないとな」
ははっ、確かに意外過ぎるカップルの
誕生だ。
ポポロもとんでもない女に気に入られたもんだ。
スラムの連中に刺されんなよ?
何気に京香は人気があったからな。
さてさて、今後の作戦だ。
情報によると平民街は、ほぼ制圧状態。
多少の残党が残っていたが貴族街に
引っ込んだらしい。
そんで、今、現在貴族街には多くの国軍や
騎士団が陣取っている。
ざっと見積もって5万の兵達だ。
こっちは、アテゴレ地区のゴロツキ達を
合わせて2万ちょい。相手は2倍と少しだな。
普通なら、5万も居たら負けるが、こっちには
戦争のプロ達が居る。
しかも、一体で街や国を驚異に晒す事が
出来るゴブリンやバブーン等の魔物達。
リーやツヴァイの様な暗殺者も居る。
最終兵器ではプーやノルウェと言った
凶悪な連中も控えている。
対して相手はダガールを失い軍隊長2人も
怪我を負い敗走。
怖いのは、騎士団団長のリヒトを出される事だが
姿は確認されてない。
多分、投獄されているのだろう。
残っている連中は実戦経験の浅い連中のみだ。
ヤバい…マジで国を乗っ取れるかも…。
バベルは、どーゆう作戦でいくのかな?
そう思いバベル達の指示を待っていると
ボスが軍用トラックから厳重に保管されている
大型で金属製の箱を三つ程下ろす。
何だ?あれ…。
銃器か?いや、それにしても相当慎重に
運んでいるな…。
それに、ガストラ達が何か変わった服装に
着替え始めたんだけど。
「なぁ、バベル。あれって何着てんだ?
それに…ガストラ達が顔に装着してるのって…
確か、ガスマスクだよな?
あれ…何だろう…凄い嫌な予感がする…。
「京香!そ~っと!そ~っと運んでっす!
衝撃だけは気を付けて!!」
「解ってるわよ!!私だって怖いんだから!!」
「…こんな物、何処で手に入れたのぉ?」
ゆっくりと地面に下ろし金属製の蓋を
開けると、そこには3発のロケット弾が
保管されていた。
「入手先は秘密だ。くっそ高かったがな。
まぁ、先の利益を考えれば安い買い物だ。
なんせ、この戦争に勝てば国が手に入るんだからな」
そう言ってバベルは凶悪な笑みを浮かべる。
「あ、あの…バベル?これって何?
次の作戦に関係…あるんだよな?」
「あぁ、メインの兵器だ。ふっふっふっ。
ガル、全員アテゴレ地区の奥に下がらせろ。
そうだな…此処に残る連中は20人程度の
精鋭だけで良い。
残る連中は特殊防護服とボンベを
装着するように言っとけ」
「………何で、下げるん?」
もしかして、バベル…最悪な事しようと
してない?
「化学兵器を撒き散らす。毒ガスだ」
その言葉は、耳を疑う内容だった。




