バベルの世界「異質」
うひょーヽ(*´∀`)ノいきなり、評価が
メッチャ上がっててビビりましたー(笑)
評価してくれた方、登録してくれた方、どちらもしてくれた方!
本当に、有難う御座いますー!嬉しいーーー( ´艸`)
あの人間は、人間だと思うな。
我に依頼しに来たダガールは、
そう言った。
それを聞き我は耄碌したのかと
本気で疑ったし本人にも伝えた。
何を馬鹿な事を言っている?
我等を侮辱しているのか?
相手がダガールでは無かったら
骨の2~3本へし折っていた所だ。
そもそも人間如き相手に我等に
依頼する事自体どうかしているのだ。
我等は誇り高き黒狼一族だぞ。
数多の戦場で相手を震え上がらせ
敵無しの我等の相手が人間?
笑わせるな。
怒りと呆れしか無い。
人間相手など貴様等が相手しろ。
父上なら受けたかもしれんが
今の長は我だ。
そんなくだらぬ相手と戦うつもりは無い。
そんな我にダガールは、羊皮紙の束を
差し出した。
読めと言う事だろう。
まぁ、読んだ所で考えが変わるとは
思わないがな。
我は羊皮紙に眼を通す。
そこには、信じられない事件が
時系列でビッシリと書かれていた。
アテゴレ地区の実力者達の処刑。
武闘大会での騎士達との戦い。
街での無差別虐殺。
王家に牙を剥き多くの兵士達が殉職。
ファルシア大国奴隷市場計画。
数々の犯罪事件。
どれもこれも人間が起こした事件の中では
間違い無く歴史に残る凄惨な事件の数々。
下手をしたら歴史に残す事自体憚られる程
犯罪を繰り返している人間達の犯罪集団。
成る程の…。
これは、貴族の箱入り騎士共や
其方達の脆弱な兵士共では手を焼くな。
しかも近々、例の犯罪組織が本格的に
国に対し戦争を仕掛けるかもしれんと?
ふぅむ…。
良かろう。
小汚く脆弱な奴隷共相手などしたくないが
この者達なら中々歯応えがありそうじゃな。
依頼を受けてやる。
その代わり報酬は、たんまり頂くぞ?
ふははははは!
◇ ◇ ◇
あの時、安請け合いしてしまった
我自身を思い切り殴ってやりたい。
ずりゅ…。
目の前に居る人間が自身の顔を剥ぎ取る。
正確には、我が同胞の顔だが……。
この男は、我が同胞の顔を剥ぎ取り
自身の顔に貼り付け偽装していたのだ。
そのせいで対処が遅れ仲間達が今しがた
全員殺された。
今、この場に居ない同胞達を除けば
生き残りは100名弱…。
200名以上で今回の戦場に挑み
たった一人の人間に100名近く
殺されたのだ……。
我は甘かった…。
もっとダガールの言葉を真摯に
受け止めれば良かった。
もし、あの場に父上が居たら激しく
叱責されていただろう。
父上の言葉が脳裏に蘇る。
『戦場には数多くの兵士が居る。
その中で稀に異質な者達が存在する。
見えない物が見え、聞こえない音が
聞こえ、感じる事が出来ない事を感じ
常人離れした力と考え方で敵を喰らう。
異質な者達は、皆、化物だ』
父上が生きていた時に言っていた言葉だ。
「残りはぁ、君だけだねぇ」
目付き鋭く、口元歪ませる一人の人間。
こいつだ…こいつは、父上が言っていた
異質な者だ。
戦場で自分を見付けてしまった怪物。
チャキ!と短剣を構える我。
「ふふっ、俺は丸腰だ。
怖がらず向かっておいでぇ」
この男は、我等を欺く為に自身の装備一式を
交換している。
先程、使っていた魔道具も今は使えないのか
地面に投げ捨ててある。
しかし、同胞が使用している短剣を
持っている可能性がある。
いや、間違い無く持っているだろう。
何が丸腰だ。我は騙されんぞ!
二人が対峙し先に動いたのはシーシャだった。
目にも止まらぬ速さ。
常人なら、その場から姿が消えたと
思ってしまう瞬足で一気にボスの間合いに
入り、首目掛けて短剣を振るう。
ガキンッ!!
金属が交わり小さな火花が散る。
やはり丸腰では無かった。
同胞が使用していた短剣を目敏く
隠し持っていたか。
そして何より驚いたのは、我の今の
一撃を防いだ事だ。
この男……我の姿は見えて居なかった。
我の刃を受けるまで目の動きが正面だけを
見ていたのだ。
なのに、この男は目で確認する前に
刃を受けきったのだ。
「おおっ!はっやいねぇ!」
そう言いながら、この男は我の激しい
攻撃を完全に捌ききっている。
こいつっっ!!
ガインッ!と刃が弾かれた所で
一旦離れる。
「…どーゆう事だ?貴様」
「何がぁ?」
我の攻撃を全て受けきったのに
涼しい顔している、こいつに腹が立つ!
だが、今は、それじゃない。
「貴様、我の攻撃が殆ど見えていないのに
何故、完璧に捌く事が出来る?
明らかに身体の動きと目の動作に
誤差がある。
どんな魔法を使っている」
その問いにボスは、顎を触りながら
答える。
「経験と感覚。後は…音かなぁ」
「音…だと?」
経験と感覚なら何となくだが解る。
だが、それだって数え切れない程の
実戦と訓練をしてこないと身に付かない。
それに、いくら経験と感覚だけと言っても
人間には絶対に見えない速度で攻撃する
我の攻撃を防げる筈がない。
そもそも、感覚で解ったとしても
人間の身体が我の速さについてこれる訳無い。
訝しげな顔をしているシーシャに
ボスが笑いながら答える。
「ははっ。そう、音だ。
君の攻撃は素早いからねぇ。
感覚だけで戦うのは少しキツイ。
だから音に頼って戦ってるんだぁ。
生物ってのは音の塊だ。
呼吸、服が擦れる音、血が流れる音、
心臓の音、筋肉の伸縮の音、
骨が軋んだり動いたりする音。
生物は色んな音の集合体さ。
君が攻撃する時、それは必ず
骨が動き、筋肉が伸縮し、重心が
移動すると言う事だぁ。
腕での攻撃では、まず初めに必ず
肩と腰が動く。
そーゆう風に構造上出来ている。
その音を聴いて今までの経験と
感覚で捌いているだけだよぉ」
それを聞いているシーシャは驚愕する。
筋肉の音?骨の音?
馬鹿げている!
巫山戯過ぎている!!
そんな事が出来る訳無いでは無いか!
獣人の我等でも、そこまで聴き取る事
なんて不可能だ!
しかし、そうでなければ人間が
我の攻撃を防げる筈が無い…。
この…化物がぁ。
「本当は、全盲の人とかが稀に
俺みたいになるんだけどねぇ。
まぁ、俺は左目が存在しないし、
戦場と言う特殊な環境で働いてたからさぁ。
こんな感じになっちゃったのよ。
ふふっ、本当に戦場ってのは
不思議な場所だよねぇ。
日常で何の取り柄も無く、才能も
無い奴が戦場を経験する事によって
常人離れした一つの能力を開花させる。
他の全てを犠牲にしてね」
「………何故だ…」
「えっ?」
俯きながらシーシャは小声で
言葉を発する。
今、私は嫉妬の炎で焼き尽くされそうだ。
「何故だ!?どうして、お前だけ!
我だって数え切れぬ程、戦場で戦って来たのに!!
我には、そんな能力なんて無いのに!!
何で!何で!?
お前だけ、ズルい!ズルい!!」
シーシャは、まるで子供が我が儘を
言う様に喚き散らした。
敵に対し此処まで感情を露わにしたのは
初めてだった。
「君は、そんな物が無ければ戦えないのか?」
ミシィ…。
唐突に言われたボスの言葉にシーシャの
額に青筋が浮かぶ。
「俺は、そんな物無くても戦うね。
君は強い。それは認める。
だが、そんなもんを欲しがる時点で
お前は、二流で半人前だ」
持ってる奴が好き勝手言いやがって!
二流?半人前だと!?
なら、貴様を殺して一流になるまでだ!
先程以上に激しい攻撃をするシーシャ。
それに対し全てを捌くボス。
常人なら100回は死んでいる。
なのに、この男は死なない!
「攻撃が荒くなってるんじゃない?」
「黙れぇ!!」
ボスの顔面に猛スピードの刺突を放つ。
それを躱すボスだったが眼帯の紐が
切れて地面に落ち、眼帯の下の左目が
露わになる。
普段は、瞼も無くポッカリと空洞に
なっている眼。
しかし、今は義眼が嵌め込まれており
眼が零れ落ち地面に落ちる。
その瞬間。
バンッ!と義眼が破裂し数ミリの
無数の鉄球が炸裂する。
「うっ!?」
予想外の出来事に一瞬攻撃の手を
休めるシーシャの腹をボスが蹴り上げる。
「ごえっ!」
余りの激痛に蹴られた箇所を
抑えると指の隙間から鮮血が
流れ落ちて来た。
「ぎ…貴様、靴に仕込みを!?」
ボスが履いている靴の爪先をみると
小型のナイフが出ていた。
「靴は変えて無かったんだよぉ。
変装してる相手は、先ず足元を
見なきゃ駄目だぁ」
「くっ…丸腰とは、よく言ったものだな!」
「敵の言葉を鵜呑みにするのは
良くないよぉ。
俺の部下なら絶対警戒してたぜ」
ヒュー、ヒュー。
糞!片方の肺に穴が空いたか…。
他の者達なら致命傷だが我は
問題無い。
身体強化と回復を併用して穴を
塞げば良い。
直ぐに立ち上がるシーシャを見て
ボスが驚いた顔をする。
「君、肺に穴が空いてる筈なんだけど…。
凄いな。その状態で立ち上がるなんてさ。
正直、驚いた」
「黒狼一族の長を舐めるな」
その言葉を聞いたボスがニコリと笑う。
今までの歪んだ笑みでは無く、何処と無く
敬意を表すかの様な笑いだ。
「何を笑っている?」
「いや、君も充分、異質だよ」
異質なものか。
回復魔法と身体強化を併用しているだけだ。
強いて言うなら身体が多少頑丈だと言う事
ぐらいだ。
「…多少頑丈で済ます怪我じゃないんだがねぇ。
なら、これは、どうだろう」
徐に人差し指の第一関節部分を
取り外す。
何だ…?指を取り外した…のか?
何故、そんな事を?
とゆーか、取り外せる事自体
おかしくないか?
何か嫌な予感がしたシーシャが
動き出そうとする。
だが、それは遅かった。
既に人差し指が向けられておりボスが
親指を曲げた瞬間、プシュっと言う
音と共に何かがシーシャの胸に
突き刺さった。
「痛っ!?これは…針…があぁっ!!!」
激痛。
シーシャが生まれてから一度も
経験した事の無い様な激痛が全身を
襲う。まるで、背骨を逆折にされる様だ。
「あがっ!があああぁあ!!」
ビクンッ、ビクンッと仰け反りながら
地面に爪を立てて掻き毟るシーシャを
見てボスは苦笑いだ。
「君……何で死なないの?
針に仕込んだ毒物って相当強力なんだよ?
それこそ、掠っただけで絶命するのに。
化物過ぎるでしょ」
「ぎざまにぃぃ!化物など、ぐあぁ!
呼ばれた、くない!がうぅぅぅ!!」
射殺す様にボスを睨みつけるシーシャ。
「まぁ、もって数分かな。
そもそも、数分持つ事自体おかしいんだが…。
……念には念を入れるか」
ボスが顔の皮を剥ぎ取った獣人から
装備を奪い返し手に拳銃を持つ。
「敬意を評して綺麗な顔は辞めとこう」
ジャキっと苦しんでいるシーシャに拳銃を
向ける。
「ぐがあぁあ!殺す!!貴様を必ず
殺すぅう!がうううううう!!」
ドンッドンッドンッドンッドンッ!
5発の銃声が響き渡ると辺りに
静けさが戻る。
「ふっふっ…君の方が余程、異質だよぉ。
さよなら、戦場の御嬢さん」




