バベルの世界「遊戯」
暇だなー。
だーれも来ないなー。
バベル達が交戦している東門とは
別の場所。
此処もアテゴレ地区と平民街を
結ぶ検問所が存在する。
検問所の用途は至極、簡単。
アテゴレ地区の者達を平民街に
入れない為。
ただ、これだけで有る。
当然、絶対に平民街に入れないと
言う訳では無い。
検問所で待機している兵士達に
それなの額の袖下を払えば通過する事が
出来る。
そんな汚職塗れの検問所に鎮座する
大きな水の塊。
スライムのプーである。
ガストラおじちゃんとバベルおじちゃんに
此処を誰も通さないでーって言われてー。
待ってるんだけどー、だーれも来ないなー。
初めて此処に来た時は鎧を来た獣人さん達が
居たけどー。
ちょっと遊んだら全部動かなくなっちゃったしなー。
そんな事を思いながら大きな水の塊を
プルンップルンッと揺らすプー。
その周りには、プーとの戯れの餌食になった
十数人の兵士達が殆ど原形を留めず
辺り一面に散らばっていた。
ふーん…皆と一緒に行きたかったなー。
けど、ガストラおじちゃんに頼まれた
お願いだしなー。
我慢しないと駄目だよねー。
うふふ、我慢して沢山お仕事したら
ガストラおじちゃんも皆も褒めてくれるかなー?
皆、優しいしなー!楽しみだなー!
プーは機嫌良さげに触手を伸ばし
泥団子を作りながら遊び始める。
前に、バベルおじちゃんが作ってくれた
泥団子凄かったなー。
つるつるぴかぴかで凄い綺麗だったなー。
でも、バベルおじちゃんはプーの方が
綺麗で良い子って言ってくれて撫でて
くれたなー。
嬉しかったなー。うふふ。
そしてプー力作の泥団子が5つ程完成
した頃、プーの方向に向かってくる
一団が居た。
あれー?誰かなー?
泥団子作りを中断したプーの前には
鎧を来た屈強な貴族の私兵が剣を
構えながら何やら吠えている。
「何で、こんな場所にビッグスライムが!?」
「くっそ!邪魔くせぇな!この雑魚が」
「確か、バベル達が使役している魔物で
スライムが居るとの情報だ!
多分、こいつが、そうだろう」
「けっ!恐ろしい魔物ばかりだと思ってたが
スライムかよ?バベルって案外馬鹿じゃねぇか?」
口々に吠える私兵達。
んー?何で、この人達怒ってるのかなー?
プー何も悪い事してないのになー。
「いや、待て!辺りに散らばっている
甲冑は何だ!?……これは…腕!?」
「うわぁ!何じゃこりゃ!良く周り見たら
死体だらけじゃねぇか!?」
「お、おい!こっちで死んでるのは、
兵士のヨハネじゃねぇか!?」
私兵達は検問所周りで散らばっている者達に
気付き声を荒げる。
あー、その人達はプーと遊んでたんだよー。
けど、直ぐに壊れちゃったんだー。
それに、その人達ー、バベルおじちゃん達の
悪口言ったんだよー!
だから、ちょっと怒ったんだよー。
プルプルと揺れるプーに対し私兵達は剣の
切っ先を一斉に向ける。
「このスライムが殺ったのか!?」
「冗談だろ?ビックスライムは防御力は
多少あるけど殆ど攻撃出来ない雑魚だぞ?」
「じゃあ…やっぱりバベルの糞共かよ?」
「だろうな。大方バベル達が門番を始末した後に
防御力に特化したビックスライムを置いて
足止めと考えたんだろう」
「なら、早くぶっ殺して進もうぜ。
おーい、火魔法使える奴ー。
さっさと、この雑魚殺っちまえよ」
私兵が、そう言うと数人のフードを被った
魔道士が前に出る。
「ふむ、この程度のスライムなら
ファイヤーボール数発で消滅出来るな。
ファイヤーボール!!」
数人の魔道士が両手を掲げると直径
20センチ程の火球が十数個出現する。
わぁーー!小さい火の玉だぁー。
可愛いねー。
閻魔おじちゃんや修羅おじちゃん達とは
全然大きさが違うねー。
おじちゃん達の火の玉はプーぐらい
大きくて沢山出てくるのになー。
余談だがプーの横幅は8m。
高さは、6m程である。
プーの沢山と言う意味は、20を
超えた数だ。
プーは、まだ20以上は数えられない。
「死ねぃ!下等モンスターが!!」
魔道士がファイヤーボールを
プー目掛けて放つ。
ジュ!
音がしたと思ったら魔道士達が放った
ファイヤーボールが一斉に消滅した。
プーが一瞬で取り込んだのである。
あちっ!あちちっ!
あっ、もう消えちゃったー。
その光景を呆然とした顔で見ている
魔道士達。
「ば、馬鹿な!いくら防御に特化してるからと
言って、あの数のファイヤーボールを一瞬だと!
野良魔道士より数段高威力な火球だぞ!!」
「おいおい~、雑魚相手に何手間取ってんだよ!」
「五月蝿い!黙れ!!」
ワナワナと震えている魔道士を茶化す様に
言い放つ私兵達。
険悪な雰囲気にプーがオロオロし始める。
だ、駄目だよー!喧嘩は駄目ー。
ほ、ほら!見て見てー!
バベルおじちゃんに教えて貰った綺麗な
泥団子だよー。
プー頑張ったんだー。
これ、あげるからバベルおじちゃんみたいに
ニコニコしてー。
プーは触手で器用に先程作った泥団子を
拾い上げると、ゆっくり魔道士の方に
持っていく。
それを見た魔道士は顔を真っ赤にし
怒鳴りつける。
「何だ!?この薄汚い泥の塊は!!
巫山戯やがって!こんなもの!!」
バシッ!
あっ…。
魔道士がプーの泥団子を弾き飛ばすと
放物線を描きながら宙を舞い地面に落下する。
ベチャっと音がすると泥団子は無残に
粉々になった。
「ぎゃはは!雑魚スライムに励まされてやんの!
普段、大口叩いてる割に大した事ねぇな」
「黙れと言っている!次で仕留めてやるから
見ていろ!!」
そして新しいファイヤーボールを出す魔道士。
それに対し無視してバラバラになった泥団子を
見つめているプー。
ああっ…。
ああああああああっ!!
泥団子!?プーが作った泥団子!!
バベルおじちゃんが教えてくれたのに!
ガストラおじちゃんが褒めてくれたのに!
皆が褒めてくれた泥団子!
プーが一生懸命作ったのに!!
ううー!
うううううううううーーーー!!
ブルブルと震え始めるプーを訝しそうに
見る私兵達。
お前等なんか大っっ嫌い!!
皆、消えちゃえーーーーーー!!
ブニョン!っとプーの身体から今まで
コピーした無数の銃器が形成される。
「はっ?」
呆気に取られている私兵達。
そして……。
ボボボボボボボボボボッッ!!
ボボボボボボボボボボッッ!!
ボボボボボボボボボボッッ!!
「パッきゅ?」
魔道士達は、変な声を最後に身体が
バラバラに砕け散った。
魔道士だけでは無い。
その後ろに控えていた私兵達の身体も
一緒に千切飛ぶ。
「うわああああ!何だよ!コレ!」
「隠れろ!物陰に早く隠れろぉぉ!」
ボボボボボボボボボボッッ!!
ボボボボボボボボボボッッ!!
想像だにしなかったプーの攻撃に
私兵達は家や柱の物陰に隠れる。
だが、プーの攻撃は凄まじかった。
柱は数発当たれば抉り倒し、石と木で
出来た家屋は蜂の巣状態。
鎧や盾は紙くずの様に貫通し、身体に
当たれば粉々に砕け散る。
プーの攻撃は石を飛ばしている単純な様に
見えるが非常に高度で複雑な技だ。
地面に接地している部分から土や石を
体内に取り込み形成・圧縮・空気圧で発射。
俗に言うエアガンだ。
その工程をプーは一瞬でこなしている。
更に、プーは異世界から持ち込まれた
銃器をコピーし構造を覚え弾を形成し
連射を覚えている。
しかも、土や石が有ればほぼ無尽蔵に
撃ち続ける事が出来るのだ。
下手をしたらバベル達の中で一番の
殺傷能力を保有しているかもしれない。
プーが射撃を止めると辺り一面
まるで廃墟の様になっていた。
あっ!身体が半分埋まっちゃった。
地面から吸収してたからなー。
うんしょっと。
ぽにょんっとジャンプし地面に
着地するプー。
むうぅー!皆隠れちゃって何処に居るか
解んないー!むううー!
ゆっくりと動く辺りをキョロキョロと
見渡す。
そんな光景を物陰に潜み息を殺しながら
観察する私兵達。
「はぁ…はぁ…もう半分…死んじまった…」
「巫山戯んな…何だよ!?あの化け物…」
「お前等、無事か?怪我は!?」
「俺達は大丈夫だ…でも、ネルソンとケラーが
片腕と片足を持ってかれちまって…もう駄目だ」
「くそっ!今は逃げる事だけに専念するぞ。
あんな化け物我々だけでは手に負えん」
「そうだな…なら早く逃げ…んっ?」
「んっ?どうした?」
何かを見つけた様で、その男の目線を
追うと直径30センチ程の小さなスライムが
ちょこんと座っていた。
「普通の……スライム?」
男が、そう声を発した瞬間、小さなスライムから
無数の針が形成され、パァンと弾け飛んだ。
「ぎゃああああ!!いてぇ!」
小さなスライムが弾けると先程
形成した鋭い針が私兵達に突き刺さる。
「くっそ!何だよ!?これ!こんなスライム
聞いた事が…!?ガガガガッ!あがぁ!」
プーの分裂体が炸裂し針が私兵に突き刺さると
私兵達は急に苦しみ始めた。
「なん、がぁ…スライムのぉ!針がが…
身体の、中にぃ!?入っでぇぐ…るる!」
プーが考えついた恐ろしい攻撃。
それは、自身の身体の一部を敵の体内に
侵入させ乗っ取る事。
後に、この技は【パラサイト・ボム】と
呼ばれ恐れられる。
プーは、まだ子供なのだ。
子供は身近な大人を見て育つ。
プーの周りの大人達は残虐非道で冷酷無比な
大人達の集団だ。
それを見て育っているプーからすれば
恐ろしい攻撃を思いつくのは必然かも
知れない。
うふふー。みーんな、逃がさないもんねー。
「うわああ!止めろ!何で仲間を
攻撃するんだ!?」
「身体がが…言う、事…効かねぇ…!」
プーに身体を乗っ取られた私兵達は
他の仲間を攻撃し始め辺りは阿鼻叫喚に
陥る。
うふふ。だーれも逃がさないよー。
だーれも、此処を通さないよー。
皆、壊れるまで遊んでねー。
ふふー。楽しいなぁーーー!
そんな地獄の様な光景を楽しそうに
見ながらプーは身体を揺らすのであった。
◇ ◇ ◇
余談ではあるが、プーの戦いを
双眼鏡で覗いていた者が居る。
京香の部下である山王だ。
山王は、その光景を見てソっと無線機の
スイッチを入れた。
「………と言う事があったでやんす…」
『ガストラ!!プーに何てもん教えてんだ!?』
『バベルさん待って下さい!自分、そんな
恐ろしい事教えてませんよ!!』
『あぁ…プーがドンドン化物になっていく…』
『…プーだけでぇ、もう充分なんじゃないぃ?』
『プーちゃん…あんなに可愛かったのに……
因みに山王や閻魔ならプーに勝てるかしら?』
「あっしは、無理でやんす!」
『私も…厳しいかも知れません』
その言葉を聞き全員が絶句した後に
バベルが声を出す。
『これが終わったらプーに美味い物を沢山食わせてやろう。
そして、沢山褒めてやろうな。絶対に敵対させるな!!』
おおう!!っと全員が本日一番の声を
張り上げて返事をしたのであった。




