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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「誤算」

仕事が忙しくなって来て遅くなりました(´;ω;`)

申し訳ないでござるぅぅぅぅ!!

煌びやかな大広間。

国王と謁見する為に存在する王の間と呼ばれる

場所に俺は居る。


「どーゆう事だ!!?」


そんな場所に似つかわしくない怒声。

大臣の報告を受けて俺は怒り心頭だ!


「アバレ子爵以下数名の貴族達が

 バベル討伐で私兵を動かしアテゴレに

 進軍致したとの事です」


そう!それだ!

何だ!?それは!?一体どーゆう事だ!


何を勝手に私兵を動かして進軍など

しているんだ!?あの馬鹿共!

俺が指示したか!?ん!?

この俺が、まだ戦力が整っていない状態で

そんな馬鹿な指示を出すと思ってんのか!?


王の椅子に座っていたセイントが立ち上がり

力一杯持っていたガラス製のカップを

大臣に投げつける。


「何故、止めなかった!この間抜けが!!」


「お、恐れながらセイント王子…例の貴族達は

 秘密裏に行動してた模様で…」


「セイント国王だ!!二度と王子などと

 言うな!!この出来損ないが!

 もう良い!消えろ!!」


俺の言葉に戦々恐々としながら小走りで

走り去っていく大臣。

くそ!あの無能が!


「おい!酒だ!酒を持って来い!!

 それと、軍団長のダガールを今すぐ呼べ!!」


くそ!くそ!!

折角、父を拘束し覇権を手に入れ

これからと言う時にバベルが支配している

アテゴレ地区に進軍しただと!!

あれ程、戦力が整うまで待てと行っていたのに

先走りおって!

もし、生きて帰って来たら例の貴族は

全員、斬首だ!ふざけやがって!!


ゴクッゴクッとメイドに注がせた酒を

一気に飲み干すセイント。


「セイント国王。余り飲み過ぎると

 お体に障りますよ」


音も無く現れたオーガ族の男。


「遅いぞ!ダガール!俺が呼んだ時は

 直ぐに来いと言っているだろう!」


国王になったセイントが怒鳴るが

ダガールは涼しい顔をして一礼するのみ。


全く、王族の……しかも国王の俺が

声を荒げているにも関わらず

涼しい顔をしやがって。

だが、仕方ない。

この男は、それだけの実力を持っている。

見た目は初老のオーガだが、歳を感じさせない

引き締まった身体。

何者も寄せ付けない雰囲気と鋭い目付き。

そして何より、平和が続く国で数少ない

戦争経験者。

正しく鬼人だな。頼もしいものだ。


「状況は聞いているのだろう?

 馬鹿共が先走りやがってバベル達が

 攻めて来るかもしれん!

 現場は、どうなっている?」


「そうですね。平民街とアテゴレ地区を結ぶ

 東門で騒動がありました。

 バベル達は、見た事の無い乗り物で

 フォン男爵の私兵300を殺害。

 後に、例の爆破事件で使用された魔道具で

 フォン男爵、アバレ子爵が戦死。

 他にも多数の死傷者が出ています」


ぐぅぅ!頭が痛くなる!!

鍛えられた私兵300を殺す時点で

異常だと言うのに、あの戦闘狂のアバレまで

死んでいるのか!?


「こちらの戦力は、どの程度だ?」


「現在まで7割程です」


7割か…どうなんだ?いけるのか?

いや、解らん。

バベル達は最低でも5000の部下が居る。

それ以外にもアテゴレ地区で名のある

犯罪者達がバベルに従っていれば、

かなりの人数だぞ!

しかも!しかもだぞ!バベル達の部下の

中には騎士団を叩き潰した人の皮を被った

化け物達も居るし、報告では一国を

相手に出来る程の魔物まで居ると言う。


何なのだ!?その巫山戯た戦力は!!


「7割の中で実戦経験者は!?」


「…私を含めて2割程度ですな」


使えん!全く使えんでは無いか!!

その程度でバベル達を殺れるのか!?


俺だって、普通の人間なら此処まで

狼狽などせん!

しかし、バベル達の連中は普通から

掛け離れているのだ。

それは、今まで起こして来た事件で

身に染みている。

奴等は、異常者の集まりだ。


聞いた話しによると連中は自分達の

部下が一人殺された程度でイス区域と

戦争紛いな事を仕出かし敵対勢力を

皆殺しにし、イス区域を支配していた者達を

拷問した挙句、見世物小屋に売り飛ばしたと

聞く。

そんな連中相手に中途半端な戦力を

衝突させたら、どうなる?

甚大な被害だ!こんな事、馬鹿でも

解る!


「お言葉でですが、幽閉されている

 リヒト団長の力を借りるのは?」


「駄目だ!あいつは俺の妻になる女だぞ!

 戦いになど行かせられん!!」


あの美しい美貌、気の強さ。

あの女は俺の物だ!俺だけの物なんだ!

万が一、バベル討伐にでも出し

囚われたら、どうするつもりだ!


「黒狼の連中は、どうだ!?」


「準備出来ております」


黒狼一族。


昔、ダガールが戦火の最中、助け出した

武闘派一族。

何処にも属さず金銭のみで行動する

傭兵共だ。

そんな連中だが、戦場で雇用主に裏切られ

生死の境を彷徨っていた族長を助けた事により

黒狼一族は感謝しダガールに忠誠を誓い

尽くしている。


この連中も大層変わり者で俺も殆ど

姿を見た事が無い。

一度、俺に忠誠を誓う様に命令したが

全く言う事を聞かない不敬者共。

それに腹を立てた俺が近衛兵に指示を

出し調教してやろうと思ったのだが

一人で俺の近衛兵7人を半殺しにしやがった。

しかも、14~16程度の女がだ!!


その時は、父の恩赦とダガールの実績を

理由に不問になったが今思っても腹ただしい!


今回の件で、バベルを討伐出来れば良し。

出来なくても連中は死に、バベル達でも

只では済むまい…。

そーなれば、一気に数で押し潰せば……。


ふふっ…もしかしたら、大丈夫なんじゃないか?

下賎な連中と組むのは癪だが少しでも

成功率を上げる方が得策だろう。

それに、ダガールの精鋭達も中々腕が立つしな。


そうだ!どうせなら騎士団を捨て駒にし

少しでも相手の戦力を削るのは、どうだろうか。

どのみち、リヒトは俺の妻になった時点で

騎士団など無用の産物。

金ばかり食って対して役に立たん連中など

必要ないだろう。


くくっ…他の騎士団隊長共も俺が相手に

なってやろう…くくくっ。


セイントは黒い笑顔を浮かべほくそ笑む。


「セイント国王、それでは黒狼一族や

 他の者達にも指示を出して参ります」


「あぁ、期待を裏切るなよ?

 馬鹿共のせいで少し誤算があったが

 頃合だったかもしれんな」


ハッハッハッと高笑いするセイントを

尻目にダガールは、豪華絢爛な王の間を

後にした。







◇ ◇ ◇






王の間を後にしたダガールが

城内の長い廊下を歩いている。

コッコッと小気味よい音を鳴らしているが

その音が急に止まる。


「クロエとシロエですか」


ダガールの後ろで片膝を着いて

跪いている屈強な男達を後ろを

振り返る事無く言い当てる。


「夜蝶に潜伏している暗部からの

 ご報告です。

 バベル達は現在、平民街に入り

 貴族の私兵と交戦中。

 間も無く突破されます」


猫人族で切れ長の鋭い目付きの男。

体毛も服装も真っ黒で絞り込まれた

肉体の持ち主がダガールに報告する。


「黒狼一族の長からの伝言です。

 いつでも戦争が出来る…と」


もう一人の中性的な顔立ちを

している猫人族の男も続いて

報告する。


「そうですか。

 ………幽閉されている国王様の

 状況は?」


「酷く憔悴しております。

 食事も喉を通らない状態で」


「ふむ。引き続き警護を頼みます。

 国王は当然ですが、捕らわれている

 ケイト王女様とリヒト様も絶対に

 死なせてはならんぞ。

 彼等が死ねば、。この国は確実に

 終わるのだからな」


「「御意!!」」


そう力強く返事をし音も無く姿を

消すクロエとシロエ。


それを確認しダガールは、大きく

息を吐き出す。


「また…多くの命の灯火が消える…か」


そう呟き歩き始めるダガールであった。


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