バベルの世界「外道」
バベルは、煙草を携帯灰皿に入れ火を消す。
「ボス、今のは[クッ殺]と言ってだな。
殺さないのがセオリーなんだぞ。」
「なぁにぃ~、それぇ?。」
「あっ!口調戻った。アニメや漫画で出る
台詞だよー。
ボスって全然、見ないもんねー。」
何、平然と談笑してんだ!コイツ等は…。
ついさっき獣人を殺したのに、まるで何事も無かった
かのように喋ってる人間に狂気を感じる。
そんな俺に、バベルが話掛けてきた。
「所で、ガル。
あれ、何してるんだ?」
「はっ?えっ!?」
いきなり話を振られてテンパったが、すぐに
バベルが指指す方向を確認する。
そこには、クウを抱き肩を震わせている
シバァールの姿だった。
「な…何って…、見て解んねぇのか…?」
「? 泣いてないか?あれ。」
バベルは、首を傾げ疑問に思っている。
そこに、京香が割って入って来た。
「もー!バベは鈍感だわー!!
あれはね、愛しい人を亡くし泣いている騎士様
じゃーん。
ロマンチック~!」
左右の掌を合わせ祈るポーズをしながらウットリ
している。
「ロマンチックか?俺には、負け犬にしか
見えんがな。」
「同感~。それにぃ、あれ、殺してって
言ったしぃ。良かったんじゃないぃ?」
「なら、嬉しくて泣いてるのかもな。」
笑っている口元が、更に釣り上がっている。
「ほらほらぁ~、馬鹿言って無いで、
あの子見なよ!
あ~ん!可愛くて勝気な子が涙を流して
怒りと悲しみでグチャグチャになってる姿って
キュンキュンしちゃーう!」
「相変わらず、変わった性癖だな。」
「流石~、レベル高いねぇ。」
「アンタ達に、言われたくないのよ!!
むさい野郎なんて何人ぶっ殺しても全然
興奮しないの!!」
「なら、この世界は打って付けだな。
美形揃いだ。まぁ、俺の方がイケメンだが。」
顎に手を当て、決めポーズを取っている。
「顔面凶器。」
「きめぇ~。」
「「「アはハハはハ歯ハハは!」」」
「お前等!今月、ボーナス無し!!」
ガルは、3人の会話を聞いて震えが
止まらなかった。
この状況で…あの光景を見てるのに、
追い打ちを掛けるように侮辱している。
いや、侮辱している事にも気付いてない
のかも知れない。
先程から、頻繁に死んだクウの事を[あれ]と
言っているが、ついさっきまで生きていたんだぞ!
なのに…それなのに、まるで物扱いなんて…。
いくら何でも酷すぎる!
こいつ等は、人間でも獣人でも無い。
悪魔…いや、そんな生易しい連中じゃない!
外道だ!
反吐が出るぐらいの腐れ外道だ!!
こんな連中に、命を救われたなんて最悪だ。
「さて…。」
一言呟くと、シバァールを見下す形で
喋り始める。
「もう、いいか?いい加減飽きてきたんだ。
それに、いくら泣いても意味ないだろ?」
シバァールは、その言葉に顔を上げた。
「意味が無い…だと…貴様は!
貴様等だけはぁぁああ!!」
牙を剥き出しにし、鋭い爪でバベルに襲い掛かる
刹那の瞬間に、京香が間に入り向かってくる腕を
軽く払い、同時に顎に掌底を眼には指を入れる。
「ぐぅ!!?」
いきなり視界を奪われ、顎の一撃で全身の
力が入らず、フラフラしている。
そこに膝蹴りを腹部に叩き込む。
「メキッブチ、パキッ」
骨が数本折れる音と何かが切れる音がした。
「グッハァ!!オァ…ぐぅぅ。」
それでも、シバァールは倒れなかった。
京香は、そんなシバァールを見て本当に嬉しそう
だった。
「愛ね!!愛の力が君を立たせるのね!!
素敵!!!」
シバァールの攻撃を、アッサリ躱しながら
瓦礫で骨折しているシバァールの腕を取り
一瞬で極め、さらに折った。
「ぎあぁぁあ!!ぐぅ!ふぅ…ふぅ!」
怪我している腕を更に折るなんて…エグすぎる。
こいつ等、異常者のクセに戦闘が洗練
されすぎているからタチが悪い。
シバァールの攻撃なんて獣人の俺でさえ
全然見えねぇのに何で躱せるんだよ!!
「経験だろ。」
そんで、何で、コイツは俺が思ってる事に
平然と答えるんだよ!?
心が読めるのか!?
「ガルは、解りやすいんだよ。
そんなんじゃ交渉で苦労するぞ?」
またかよ!!?
「そろそろ、終わらせろ。弱い者
イジメは、もう飽きた。」
「はーい。ゴメンねぇ、可愛い坊や
もっと楽しみたかったけどさ、残念
ながらお開きだわー。」
「ふざけっ…ゴホッ、るな!俺は、まだ
ハァ…ハァ、戦える!!」
「プシュ!」
小さな音がしたと思ったら、シバァールがドサッと
倒れた。
その身体には、針のような物が刺さっている。
何したんだ?と京香に聞いたら、
「必殺 麻酔針~」と言っていた。
シバァールは、拘束されて京香が姫様を抱っこする
ように持ち上げ運んでいる。
バベルは、「商品が少ない」とボヤいていたが、
宝物庫を見つけ機嫌が治っていた。
「獣人売買だけじゃ無く強盗まで…」
「軍資金だ」
そう言って、ケラケラ笑いアジトを後にした。




