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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
162/248

閑話 「バベルの散歩」

あと何話か、ほのぼの系を入れますヽ(´▽`)/

その後は、ドッロドロのエグい話しを入れていきますねぇヽ(*´∀`)ノ

ガヤガヤ…。


アテゴレ地区アアル区域の舗装されていない

道を商人や冒険者、はたまた小さな子供達や

ガラの悪いゴロツキが行き来している。

その者達に露天商達は珍しい物から

怪しい物まで売りつけようと声を上げる。


ほんの少し前のアアル区域では

有り得ない光景であった。

あの陰鬱で治安が悪く活気など

存在しなかったスラム街は今では

活気に溢れていた。


そんな場所を歩いている一人の

人族の男と獣人の少女。


皆、久しぶりです!

最近、あまり出番が無かった

キャス・ナルフェスですよ!

第2騎士団隊長って言う誇り高い

仕事に従事してるです。

……そんな私が、今一人の人間と

散歩してるんです。


「そんな暗い顔すんなよ。

 イケメンの俺と散歩してんだから

 もっと喜んでも良いんじゃね?」


ポッカリと空いた左眼。

左右の髪を短く刈り上げ上部の髪を

ツンツンに立たせている。

服は、スーツと呼ばれている真っ白な

服装でワイシャツは漆黒。

ネクタイは紫と言う派手な格好の

男が私に微笑む。


「全然、イケメンじゃないです。

 後、顔が凄い怖いんで私を

 見ないで欲しいです!」


こんな怖い笑顔なんて見た事無いです。

ハッキリ言って目に毒です。

大人のゴロツキが見ても萎縮すると

思うです。

そのぐらいこの男…ラド・バベルの

笑顔は凶悪です。


「イケメンじゃ無い…だと?」


私に否定されたバベルはガックシと

項垂れる。


この人間…なんで凹んでるの?

もしかして鏡とか見た事無いんですかね。

バベルがイケメンだったら世界の大半以上の

男達はイケメンです。

ほんと馬鹿な男ですね~。


………まぁ、そんな顔面凶器の男と

一緒に歩いている私も馬鹿なんですけど…。


大体、散歩なら一人で行きやがれってんです。

何で、私まで巻き込むんですか!?

意味解んない!

ホントなら、セシル様と一緒に稽古を

する予定だったのに!


頬をプクッと膨らませながら

ブラブラとスラム街を歩く。

特に目的は無い。

本当に只の散歩だ。


あぁ…これが、お姉様達と貴族街で散歩なら

どれだけ優雅で楽しかった事か。

お喋りをしながら綺麗な店で紅茶を

飲んだりしたいです。


現実は全くの逆で優雅とは掛け離れて

るんですけどね。


「バベルの旦那!お疲れ様です!」


「「「お疲れ様です!!!」」」


さっきから、コレだ。


バベルが只歩いているだけで周りの者達は

道を譲り頭を下げて挨拶する。

既に100回は挨拶されてるです。

筋肉ムキムキのゴロツキが一斉に

挨拶してきた時は、酷い光景でしたよ。

まさしく肉壁って感じです。


この男は、そんな光景でも嫌な顔せずに

笑いながら挨拶を返すんですよね。

相手が老人だろうが子供であろうが

挨拶してくる者達全員に言葉を掛ける。

これだけ見れば善人に見えるんですが

残念ながら、この男は違う。


ファルシア大国建国史上最も命を

刈り取っている犯罪集団のトップ。

このスラム街では、ラド・バベルの名を

知らない者など存在しない。

いや、大国で知らない者が居ない程の

超危険人物です。


そんな人物なのに普通に住民達と

冗談を言い合ったりしてる。


「バベルの旦那。デートですかい?」


小汚い獣人がヘラヘラしながら

そんな事を言う。


「おう!デートだ。羨ましいだろ?」


「デートじゃねぇです!!」


射殺す勢いで小汚い獣人を睨むと

早足で走り去って行った。


「あら?デートじゃないのか?」


「断じて違うです!!」


全く、この男は何をいいだすんですかね!

馬鹿じゃないの!


キャスはプリプリ怒りながら

早足で歩いていく。


「そんなに怒んなよ~。

 お詫びに何か奢ってやっから」


「要らないです!!」


ふん!物で釣ろうとか女慣れしてない証拠です。

私みたいな立派なレディは、そんな物で

釣られませんよーだ!!


「新作の甘い菓子なんだが?」


ピクッ。


「その、お供に最高級の紅茶なんか、どう?」


ピクッ、ピクッ。


お菓子…甘いお菓子……それに最高級の紅茶…。

ふ、ふん!こんなスラム街で、どんな物が

出てくるか確かめてやろうじゃないの!!

良い!?決して物に釣られた訳じゃないからね!

だから、バベル!ニヤニヤすんじゃないわよ!


とゆー訳で、お店に着きました。


「此処ですか?」


「あぁ。グラーツィアにようこそ」


黒と木目調を取り合わせた小さな店。

少し重厚な感じですけで中々、雰囲気が

ありますね。

それに、場所も良いです。

てっきりスラムの中にあると思って

たんですけど違うみたい。


綺麗な華が所々に咲き誇り

木々が風で葉を揺らす。

スラム特有の臭い匂いなど無く、

土と植物の匂いと店の外からでも

解る優しくも甘い香りが漂ってくる。


バベルが先を歩き店の扉を開けると

チリーンと心地用良い金属音が鳴り響く。


「どうぞ」


扉を空けたバベルが先に入る様に

手を店内に向ける。

私は、訝しげに店内に足を踏み入れると

一人の獣人と二人の人間が立っていた。


「いらっしゃいませ。ラド・バベル様。

 キャス・ナルフェス様。

 お待ちしておりました」


獣人の男性が胸に手を当てて

綺麗な礼をすると他の人間2人も

頭を下げる。


「私、当店店主のケイサと申します。

 本日は、グラーツィアにお越し頂き

 誠に有難う御座います」


ケイサと言う男が優しく微笑む。


すっごいイケメン…。

長身で褐色の肌色。そして眼に掛かるか

掛からない程度の綺麗な銀髪。

そこから、ピョコンと生えている獣耳。

眼は切れ長で瞳が赤い。

正装なのかタキシードが凄い似合う。

けど、この男…。


「あなた…魔族?」


褐色の獣人は結構居る。

けど、この男は褐色肌に銀髪。

それに瞳の色が赤い。

この三つが揃っている獣人は中々

見ないわ。


「ふふ、正確には魔族と獣人のハーフです。

 父が魔族。母が猫の獣人です。

 やはり、珍しいですか?」


「あんまり見ないからね。

 けど、別に気にしないわ」


魔族の血が流れているだけで迫害される者達も

居るが私は気にしない。

それに、私は元々スラム出身。

人種に関しては寛容だ。人間以外はね。


「有難う御座います。さぁ、ご案内します。

 こちらへ」


キャスとバベルの前を歩き席まで

案内するケイサ。


ふーん。結構良い店じゃない。

店内は綺麗で清潔だ。

塵一つ落ちてない。


木を基調にして店内は温かみが有り

無駄な装飾は一切無い。

しかし、気に留めない様な場所に

小さいながらもアクセントとして

模様が彫ってある。


窓に嵌められたガラスは、

かなり大きく一点の曇りも無い。

その窓から、眩い日光が店内を明るく

照らす。


店内の客は、私とバベルだけ。

だから店内は静かだ。

コポコポと水を煮沸している音だけが

店内に響く。


「良い店ね。此処のデザインは貴方か?

 えぇーと…ケイサだったわよね」


席に座っている私は見上げる様に

ケイサに顔を向けるとニコッと

優しく微笑む。

こんなイケメンに優しく微笑まれたら

女性ならコロッと落ちてしまう。

斯く言う私も少し顔が熱い。


「お気に召した様で嬉しいです。

 ですが、デザインは私ではありません。

 キャス様の対面に居られるバベル様です」


「えぇ!?」


ケイサの言葉にキャスは驚愕する。


うっそ!?嘘でしょ!?

こんな良い雰囲気の店をデザインしたのが

ラド・バベルだって言うの!?


キャスはケイサからバベルに顔を向ける。

バベルと眼が合った瞬間、バベルが

ニコリッと微笑む。


無い…無いわぁ…。

デザインしたのがバベルってだけで

驚きなのに、この笑顔の差は何?

ケイサの笑顔とバベルの笑顔じゃあ

天と地程差が有る。

比べるまでも無いわぁ…。


キャスは、はぁぁぁぁ…と長い溜息を

吐き出す。


「お前…何か失礼な事思ってないか?」


「別に…」


今、目の前に居るのがケイサなら、

何れ程良かったか。

そのケイサは、厨房に引っ込んで

しまって居ないけど…。


まぁ、今は新作のお菓子を待っていよう。


そう思っていたらバベルが話しかけて来た。


「どうだ?俺達には慣れたか?」


「そんな簡単には、慣れないわよ。

 あんた達は、滅茶苦茶すぎるから

 対処に困るわ。

 それに、異世界の道具や兵器だって

 見た事も無い様な物がゴロゴロ

 有るのよ?

 私の常識が壊れまくってるんだから」


私達、騎士団がバベルに買われてからは

驚愕の連続だ。

見た事の無い道具に兵器。

味わった事の無い様な食べ物。

バベルのアジトには、そんな物が

ゴロゴロしている。

それだけじゃない。

戦闘に関する技術や戦略だって

この世界とは大きく違う。

何より戦闘に関して、こちらの住人と

バベル達では経験に差が有りすぎる。

でも、それって…それだけ悲惨な

戦争があったからなんだよね…。


「ふふっ、逆に然りだな。

 驚く事なんて俺達でも、そうだぞ。

 この世界には魔法も有る。

 お前みたいな獣人やケイサの様な

 魔族なんて者達も存在する。

 驚きっぱなしだぜ」


「アンタの世界には無いんだっけ?」


魔法が無い世界なんて信じらんないけどな。


「居ないな。俺達の世界にキャスみたいな

 可愛い子が居たらきっと人気者だ」


ははっ!と軽快に笑うバベル。


ふぅ…バベルに可愛いとか言われても

全然嬉しくないんですけど。

けど、向こうの世界なら私は人気者なんだ…

へー…そうなんだ。

ちょっと、興味あるなー。


ほんの少し顔が綻ぶ。


「それに魔法が無いから技術が

 発展してる。

 生きる為にも。

 殺す為にも…な」


……やっぱり行きたく無いかも…。


そうだった。こいつ等の世界は

血で血を洗う様な戦争が現在進行形で

色んな場所で起きている。

それだけ、戦えば兵器だって進化

するよね。ましてや魔法が無ければ

尚更だ。


戦争か…。

私は生まれてから一度も戦争を経験せず

生きて騎士団隊長を勤めてきた。

だから戦争を知らない。

他の隊長達も団員も知らずに

生きてきた。

戦争経験がある軍団長のダガール様からは

少しだけ話しを聞いた事があったっけ。

あの時は、只只興奮して武勲を立てたいとか

自分がどれだけ強いのか試したいとか

馬鹿の事を考えてた。

けど、今は思わない。


バベルやボス達と出会って戦場が

どれだけ恐ろしいか思い知った。

戦場は壊し、殺し合いの場所。

何千、何万と言う人間が死に建物が焦土と化し

心が壊される場所。

ボスも…剣崎もガストラも

戦場で戦い心が壊れている。

だから、どんな無慈悲な事でも

出来てしまう。

あの人間達に出会ってからは

心の底から平和を願っている。


けど、そんな状況でも無くなって来た。

この国の王子が国王を拘束し

新しく国を立て直そうとしている。

しかも、バベル達と徹底抗戦の構えで

有力な貴族達を傘下に入れ兵を募っている。

その際、私達、騎士団の団長リヒト姉様も

拘束されたのだ。

本来なら私達も拘束されても良いんだけど

表上、私達はバベルの監視役となってるし

リヒト様が何らかの手助けをしてると思う。


最悪よね。今からでも助けに行きたいけど

バベルが許さない。


バベルは戦争には、もう少し時間が

掛かると言っていたけど実際は、どうなるか

解らないじゃない。

もし…もし、本当に戦争になったら

私は、私のままでいられるのかな?

相手が敵国なら維持出来るかも知れないけど

同じ国の人達なら、どうなるか解らない。

ボス達の様に心が壊れてしまうかも

しれない…。

そんなの嫌だ…。


「キャス様?紅茶と新作のお菓子を

 お持ちしました」


嫌な事を考えていたら、ケイサが

お菓子と紅茶を運んできてくれた。


「あ、有難う。これは?」


私が置かれたお菓子を尋ねるとケイサは

微笑みながら、ガトーショコラと言う

チョコのケーキと教えてくれた。


初めて見るケーキね。


キャスは、フォークを手に取り

ケーキを一口の大きさに切り

口へ運ぶ。

その瞬間、濃厚なチョコの味と

ほろ苦い甘さが口の中に広がる。


美味しい…凄く、美味しい。


一口、口に運ぶ度に幸せが口の中で

爆発する。

眼を瞑り、ゆっくりと咀嚼し

幸せを噛み締める。

そして、皿の上には何も残らない。


それを見て少し悲しい気持ちになっている所に

ケイサが別のお菓子を私の前に置く。


「あの…これは頼んで無いけど?」


「私からのサービスです。

 何やら深刻そうにしていたので

 宜しければ食べて下さい」


やだ、イケメン!


「騎士団隊長であるキャス様なら悩む事も

 多くあるのでしょう。

 ですが、此処に居る時だけは苦悩から

 解放されて下さい。

 その為なら私達は精一杯奉仕到しますよ」


「…ケイサ」


今日、初めて会った男なのに

この気持ちは何?

身体が熱くて顔が紅潮していくのが

自分でも解る。


これは、恋!?


「店内が暑いだけだ!窓開けろ!窓!」


バベルの馬鹿が何か言っているが

全く聞こえない。

その間も私とケイサは、お互いの眼を

ジッと見つめる。


「おい!俺が居るの忘れてんのか!?

 何二人で甘ったるい雰囲気だしてんだ!?

 菓子食え!菓子!!

 おい!ケイサ!?客に手ぇ出しても良いが

 今じゃねーんだよ!!

 聞いてるか?おおーい」


今の私に雑音など聞こえない。

聞こえるのは、ケイサの甘い声だけ。


「キャス様…新作のお菓子は、どうでしたか?」


「最高に美味しかったわ。また食べたいな…

 その…ケイサと…」


「ふふっ、有難う御座います。

 では、また新作のお菓子の試食を

 して頂けますか?

 今度は、私と二人で」


ケイサが、キャスの両手を優しく包み込む。


「は、はい…///」


眼を潤ませながら頷くキャス。


「かーーーー!面白くね!!

 俺は結婚相談所かっつーーの!?

 ビール持って来い!ビールー!

 つまみで焼き鳥も頼みまーーーーす!!」


グラーツィアの店内は混沌としていた。

甘ったるい雰囲気の二人と、喫茶店で

酒を頼む客。

そんな光景を、グラーツィア従業員2人が

ハァ…と溜息を吐きながら見守って

いるのだった。

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