表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
160/248

バベルの世界「謝罪」

またまたブクマしてくれた方、有難う御座いましたヽ(´▽`)/

どうぞ、楽しんで下さいー

元他種族刑務所を改造し要塞化している

バベル達のアジトの屋上で一人、夕日を

見ながら煙草を吸う一人の男。


顔や身体中に無数の傷跡が

残り戦場で左目を失った。


彼は、煙草を咥えながら左目の

眼帯を取り空洞になっている眼が

有った箇所を指でなぞる。

眼球も無い。瞼も全て失い

ポッカリと大きな穴が空いているだけ。


「ふぅぅ~」


煙草の煙を吐きながら肘を手すりに乗せ、

異世界の景色を眺める。


思えば色んな場所に行った。

観光では無く戦場で戦う為なのが

残念だがな。

そんな俺が今では異世界に居る。

魔法や魔物が存在し騎士や冒険者が居る

お伽噺の様な世界に。


そんな場所に来て迄、戦う自分が居るなんて

笑えるね。まぁ、俺が望んだ事なんだから

仕方ない。

今更、普通の人生なんて無理だ。

俺は殺しすぎたからな。


元居た世界でも此処でもな。


あぁ…久しぶりだな。こんな気分は。

前は、こんな感傷に浸る事なんて

無かったのに。

此処に来てから少し変わっちまったか?

この異世界に住む住人達を見て

変化があったのかも知れない。


人間が世界を統べていた元世界と

違い獣人やら亜人が力を握り

人間が奴隷化された世界。

そんな中で出会った獣人の少年。


思った事を直ぐに口に出し感情的で

納得出来ない事があれば俺でも

バベルでも噛み付くヤンチャ坊主だ。

彼の弟を商品として扱う時なんて

物凄い怒りだった。

ふふ…今では良い思い出だな。


そんな少年、ガル君と喧嘩してしまった。

喧嘩と言っても殴り合いとかじゃないがね。

それなら、瞬殺できるんだが。

今回は痴話喧嘩だ。

と言っても俺が一方的に言われただけ。

言い返せば良いのだが…俺は何も

言い返せ無かった。


何故なら、ガル君が言った事が全て

事実だから。


俺には、守るべき国も仲間も家族も

もう無い。全部、失った。

自業自得だな。全て俺が招いた結果だ。

ただ、ガル君の言った事に対し一つだけ

言いたい事がある。


今の俺には、契約としてだがバベルが居る。

似た境遇の京香やガストラが居る。

此処で俺達を慕い部下になってくれた

リーやツヴァイ、閻魔や山王。

他にも沢山の仲間が出来たと思っている。

勿論、ガル君だって仲間だ。


ガル君に仲間と思われなくても

俺は少なくとも仲間だと思っているし

大切な教え子だ。

彼等が危険な目に遇えば必ず

駆け付けるし、どんな犠牲を払ってでも

助けるつもりだ。


だが京香が見せてくれたアニメや漫画

みたいに、世界を敵に回しても守る!

なんて事は言わない。

はっきり言って滑稽だ。

世界を敵に回して守れる訳が無いからな。

現実は、そこまで甘くない。

巨大な力で押し潰されて終わり。

それは嫌という程、経験してきた。

お人好しの甘い考えでは助けられる奴も

助けられない。

非情に徹するのが一番だ。


相手が恐怖し二度と歯向かう事が

出来なくなるまで徹底的に潰す。

俺は、そう思って来たし今でも思う。


誰かを守るって事は、何かを犠牲に

しなければ駄目だ。

俺達の場合は敵を犠牲にするだけ。

戦争と同じだな。

だから、此処でも同じ様な事をしてきたんだが

ガル君にとって許容出来る事では無かった

みたいだけどねぇ。


はぁ……中々、難しいもんだなぁ。


吸っていた煙草を指で押し潰し

置いてある灰皿に煙草を捨てる。

そして、そろそろ戻ろうかとした瞬間。


バンっと扉が勢い良く開けられ

物凄い速さで誰かに抱きつかれる。


「うおっ!?何だ!?……ガル君?」


急に、引っ付いてきた奴はガル君だった。

後は、リーとツヴァイだな。


「ボズュウゥ!ごべんなざいぃ~!俺、

 酷いごと言っでぇ~!

 ごべん~!ごめぇんなざい~」


「ボズ様ぁぁぁ~!ボズ様ぁぁ~」


「うぅーー!うう~~!!」


顔を上げたガルは酷かった。

涙も鼻水も涎も流れっぱなしで

泣きじゃくりながら謝ってくる。


リーも泣きながら俺の名前を

連呼するし、ツヴァイは顔を填めて

うーうー泣いている。


「ど、どうした!?何があった!?」


いかん!普段、部下に戦場でも冷静にと

謳っている俺が今の状況に理解出来ず

テンパる!


「…ボス」


ガル達以外にも誰か居たのか!?

テンパり過ぎて気付かないとは…。


ボスが声のする方向に顔を向けると

そこには、元騎士団隊長のウィルが

立っていた。


「ウィル!?これは、どんな状況だ!?

 悪いが説明してくれ!」


助けを求める様にウィルに声を掛ける。

その間も、ガル達は全力で抱きついて来て

身体が痛てぇ。


こいつ等、どっから力出してんだ!?

普段より馬鹿力じゃねぇか!


ガル達に悪戦苦闘している所でウィルが

頭を下げる。

その状況に更に意味が解らなくなるボス。


「ボス…。バベルから貴様の過去を聞いた…。

 私は、騎士失格だ。

 貴様の事を解ろうとも知ろうとも

 しなかった。

 貴様に、あんな壮絶な過去が有るなんて

 知らなかった。

 なのに私は…お前達を悪人と言うだけで

 罵倒し続けてしまった。

 本当に…すまない…。

 許してくれなくても良い。

 だが、謝罪させてくれ」


頭を下げているからウィルが今どんな

顔をしているか解らない。

だが、地面に涙がポタポタと落ちているので

泣いているのだろう。


「……そーゆう事か」


これで納得がいった。


しかし、バベルの野郎には困ったもんだ。

個人情報を勝手に漏洩させやがって。

いや、今は先ず、こいつ等を落ち着かせないとな。


「お前達…先ず離れてくれるか?」


「やぁぁだぁぁ~!離れないぃぃ~!」


「面倒くさいねぇ!お前等!!」


それから数十分経ち何とかガル達を

引き離す事に成功し全員が屋上の地べたに

座り込む。


「…お前等、もう泣くなよ…」


引き離す事には成功したんだが

全員未だ泣き止まない。

ハッキリ言って対処方法が解らん!


「だっでぇ…ボズがぁ、あんな辛い過去が

 あっだなんでぇ~。

 なのに、俺ぇ酷い事言っでぇぇ」


「ボズ様ぁぁ、わだしボズ様ぁが

 好きにゃのにぃ、にゃにも知らにゃくてぇぇ

 かにゃしくてぇぇ」


どーすれば良いんだ?

ガルはズッと泣きっぱなしだし

リーは何故かニャンニャン言葉

みたいになってるしツヴァイはダンゴムシ

みたいに丸まってウーウー泣いている。

俺からみたら戦場以上に修羅場だ。


それから更に一時間後、何とか

泣き止んで改めて話す事にする。


ガルとウィルは、再度俺に頭を下げた。


「ボス…本当にゴメン。俺、ボスの事

 何も知らない癖に好き勝手言って…。

 本当に、御免なさい」


「私も謝罪する。貴様は悪人だが私も

 貴様に対する敬意が足りなかった。

 しかも、あんな悲しい経験をして……。

 本当に、すまなかった」


こうもハッキリ謝罪されるとむず痒いな。

あんまり慣れて無いんだ。


「別に気にする事は無い。全部事実だし

 俺が招いた自業自得だからね。

 軍人なら大なり小なり暗い過去は有る。

 それに、実際こちらの世界で酷い事を

 しているのも事実なんだから罵倒されて

 当然だ。

 ガル達やウィルが真っ当なのさ。

 だから、気にするな」


俺の言葉を聞いて複雑な表情をする

ガル一同。


なんで、そんな顔するかねぇ。

お前達は間違って無いんだよ。

暗い過去が有るからって道を外す

理由になんてならない。

バベルの指示以外にも非人道的な

活動をして来たんだ。


「ガル君…それにウィルやリー、ツヴァイ。

 俺は、お前達に変わって欲しく無い。

 これまで通り接してくれ。

 納得出来ない事は噛み付いてくれて良い。

 俺も、変わるつもりも無いし変われない。

 もう後戻り出来んからな」


「そんな…ボス様だって変われます!

 いえ、変わらなくてもお慕い続けますが!」


リーが真剣な眼付きで訴える。

ツヴァイも力強く頷く。


「リー、ツヴァイ有難う。

 だがな、長年の戦場生活で俺の価値観は

 完全に壊れちまっている。

 戦場の忘れ物…って言葉知ってるか?」


そう問いかけると全員が首を横に振る。


「昔、教官に言われた言葉だ。

 人間には大まかに、喜怒哀楽の感情が有る。

 戦場で人を一人殺すと喜びが、二人目を

 殺すと怒りが、三人殺すと哀しみが、

 四人殺すと全ての感情が無くなる。

 戦場で忘れてきちまうのさ。

 俺は数えられない程の人間を

 殺してる。

 もう、俺は変われないんだ」


教官に言われた時は的を得ていると思ったね。

要は、PTSD…戦争後遺症だ。

戦争を経験し戦った者達は大体コレに

苦しむ。

攻撃行動の衝動、アルコール依存、不安、

無感動、疲労感、飲食障害、集中力低下、

記憶障害、鬱、嘔吐、自己嫌悪、言語障害、

現実逃避など様々だ。

人格に異常をきたす程、戦場と言う場所は

特殊な場所なんだ。


そんな場所で自分を見付けちまった者達は

絶対に戻って来れない。

死ぬまで戦い続けるし戦場が日常に

なっちまってるから一般社会にも

馴染めない。価値観が解らなくなる。


「だから、お前達は変わらないでくれ。

 これから先、更に酷い事があっても

 踏みとどまってくれ。

 こんな事、俺が言えた義理じゃないが

 最悪な一線だけは越えるな。

 俺みたいには絶対にならないでくれ」


そう言ってガル達に手を差し出す。

彼等が納得したかは解らない。

只、俺の様にならないで欲しい。


差し出されたボスの手をガルは強く

握り締め小さく頷く。


それで良い。

汚れ仕事は俺達がやってやる。

お前達に危害を及ぼす連中は

俺達が皆殺しにしてやる。

だから、間違えるなよ。


お互いに握手し落ち着いた雰囲気が

戻ってきた。

かと思ったら、またまた、扉が勢い良く

開け放たれる。


「ボ、ボスーーー!助けて!」


「ボスさーーん!何か皆の様子が変なんす!」


目線を向けると京香とガストラに

色んな連中が引っ付いていた。

騎士団のウィンザーやら閻魔やらだ。

その後ろからもゾロゾロと引き連れて。


「はぁぁ…」


顔を引き痙らせて溜息を吐くボス。


「また、振り出し…かぁ」


結局、ボス、京香、ガストラが解放されたのは

3時間後の事だった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ