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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
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バベルの世界「崩壊」

『ドッゴーーーーーーン!!!』


アテゴレ地区に、突如、爆音が鳴り響いた。

地面が揺れる程の爆音に住民達は、皆パニックを

起こし、ある者は戦争が始まるのかと顔を青くし、

また、ある者は、神の怒りだと平伏し

祈っている。

アテゴレ地区を、牛耳っている権力者達も

他の地区の者達も同様に慌ただしく動いている。


そんな事も露知らず、何とか瓦礫から

這い出してきたシバァールは辺りを見て息を飲んだ。

かなりの広さだったアジトの半分が、

吹っ飛び、瓦礫の下敷きになり息絶えた

部下達を月明かりが怪しく照らしている。

そこには、先ほどまで生きていたルイスの

一部もあった。

判別は、難しかったがルイスが愛用していた

ピアスが付いていたから何とか解ったようなものだ。


「他に生きている奴らは、居ないか!!?」


その呼び掛けに何人かは、起き上がり

生存を確認した。

が、皆、骨折していたり、耳を抑えながら

悶えている者ばかりだ。


「くっ!まともに動ける奴らは、7~8人か。」


かくゆう俺も、瓦礫が左腕に当たり折れている。

痛みに耐え、他に戦力になりそうな生き残りを

探そうと部下に指示を出した瞬間。


「ズダダダッ!ダンッ!!ダダンッ!!!」

「ドンッ!ドンッ!ドンッ!」


連続して聞こえた発砲音と共に、

生き残っていた部下達の頭の一部が吹き飛び

崩れ落ちる。

何だ!?何が起こった!??

音と共に、生き残った部下が殆ど死んだ事に

普段は冷静のシバァールも焦りを隠せなかった。


「ハッハッハ!サプラ~イズ!!」


聞き慣れない声と共に現れた奴らは、

横の髪を刈り上げ上等な布で作ったであろう

見慣れない服を着ている人間と

片目に眼帯をし、これまた見慣れない

中が空洞な何かを、俺に向けている人間だ。


「貴様等、たった2人でやったのか!?」


「2人じゃ無いわよー!」


別の場所から、もう1人出て来た。

横には、腕を捻り上げられ捕まっているクウの

姿もある。


「クウ!!?」


クウが生きていた事より、クウが人間に

捕まっているという驚きの方が、大きかった。

クウは、俺よりも弱いものの屈強なゴロツキ共を

押さえつけるだけの力は、持っている筈だ。

なのに、クウを捕まえている女は、まるで赤子の手を

捻るような悠々としている。


「シバァール様…申し訳ありません…

 低俗な人間に捕まるなど…」


苦虫を噛み潰したように、クウの顔が歪む。


「低俗?」


その言葉を聞いた瞬間、捻り上げているクウの片腕に

ほんの少し力を入れる。


『ボキンッ!』


嫌な音が、クウから聞こえた。


「ぎゃああぁぁ!!」


聞いた事の無いクウの叫びが響き、ダランとした

右腕を抑えながら蹲っている。

京香は、蹲っているクウの髪を掴み無理やり

引き上げ眼帯男の所まで連れて行く。

信じられなかった。

今まで、低俗で弱者だと思い好き勝手に扱い、

生殺与奪の権利を思うがままにしていた俺たちが、

今では完全に逆転してしまっている。


「ガル、居たか?」


「居たよ!爆薬の量が多すぎて一緒に

 吹っ飛ばしちゃったかと思ったけどね。

 あっ!来た!…あれっ、何か、もの凄い

 顔で走って来てるけど…。」


京香が指を向けた先を見ると、拷問を

受けたとは思えないスピードで走り、バベルの手前で

ジャンプし両足をバベルの顔に突き出した。


「メキョ!」


バベルの顔面に、ガルの両足がめり込む。

ドロップキックされた勢いで、バベルは後ろの

瓦礫の山に頭から突っ込んだ。


「ちょ、ちょっとガルちゃん!!

 やり過ぎだよ!一応、私達の雇い主

 なんだからね!!」


慌ててガルを制止させ何とか宥めようとする。

その横では、「グオォッ」と呻き声を上げ

のたうち回っているバベルの姿があった。

ボスは、手を口に当て必死に笑いを耐え、

ガストラは、800メートル離れた場所で眼を丸く

していた。


「こっの、馬鹿野郎がー!

 助けに来たのか、殺しに来たのか

 どっちだ!?アホ!!」


「す…すまない。」


頭と顔を、抑えながらガルに謝罪する。

そんな光景を、尻目に、シバァールが口を開く。


「人間にしては、少々腕が立つようだな。

 だが、その程度で俺に勝てると思うなよ!」


シバァールは、湾曲したククリナイフの様な剣を

ボスに向ける。

人間達は、何言ってんだ?コイツは。と奇怪な

顔をしており、バベルは溜息をついている。


「全く…思った以上に馬鹿な種族だな。

 獣人って奴等は。」


そう吐き捨てると、懐から煙草を取り出し火を着ける。


「この状況で、まだ自分が優位だと

 思ってんのか?

 アジトは、半壊し仲間は殆ど死んだ。

 残ってるのは、馬鹿一人と足でまといの

 女だけ。

 これだけ、ハッキリと勝敗が解ってんのに、

 まだ勝つ気でいるとはなぁ。」


フーっと煙草の煙を、わざわざしゃがみクウの

顔に吹き付ける。


「クウ…って言ったか?お前の上司は、

 頭に蛆でも湧いてんのか?

 上司が無能なら部下も無能だな。」


流石に、言い過ぎでは無いだろうか?

拷問され孤児院を襲おうとした連中だが、

同情してしまう。

シバァールは、無言だが明らかにキレてる。

クウに至っては、怒鳴り散らす始末だ。


「貴様等ぁ!シバァール様に何と言う無礼な!!

 たかが人間風情が、シバァール様に話掛ける

 だけでも、万死に値すると言うのに!!

 侮辱するとは!!!

 シバァール様!私に構わず、この身の程知らず

 の首を跳ねて下さい!!!」


「ははっ、中々勝ち気な女だな。

 良い値が、付きそうだ。」


口元を釣り上げ笑うバベルに、クウとシバァールは

顔を青ざめる。


「まさか!?貴様!!」


「こっちでも、商売しようと思ってな。

 お前と、この女は売り飛ばす。

 だから、あまり傷物にしたくないんだ。」


ここまで来ると、もうどっちが悪人なのか解らない。

間違いなく極悪なのは、バベル達だが…。


「くっ…奴隷になるぐらいなら死んだ方がマシよ!

 殺しなさい!!」


「パンッ!」


喋り終えた瞬間、ボスが、クウの頭を撃ち抜いた。

ドシャっと座ったまま前に頭が倒れ、まるで

地面に頭を擦りつけ土下座のような格好で死んだ。


「クウ!!?」


剣を捨て、形振り構わずクウの亡骸に駆け寄る。

クウを仰向けにし、震える手でクウの顔を自分の

胸に抱き寄せる。


「………クウ…。」


小さく呟いたシバァールを、ガルは見ていられなかった。

何十人も部下を従え、好き放題やって来たシバァールだが

人望も厚く、他のファミリーの連中よりスラムの獣人には

比較的、優しい一面もあった。

スラムの子供達には、シバァールに憧れている子も

いるぐらいだ。


なのに、今は、アジトを破壊され仲間を殺され

頬に涙が流れている。

完膚なきまで崩壊させたのが、人間なんて誰が信じる?

眉間にシワを寄せ、ガルは眼を伏せている。

そんな重い空気を、ぶち壊したのもバベル達だった。

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