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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
159/248

バベルの世界「過去」

うひょーヽ(´▽`)/

新しくブクマ&評価してくれた方々、有難う

御座いますー!

脱線気味の小説ですが楽しんで下さいー(笑)

……重い空気だね。正直、僕は

こーゆう雰囲気は好きじゃないんだけどな。

けど、仕方ないね。

ガルとボス達が喧嘩しちゃったんだから。

と言ってもガルが一方的にって

感じだったけどね。


まぁ、そんな感じでレスタが

バベルに事の内容を説明したんだ。

それで、今、目の前にバベルが無言で

座ってる。

何故か、僕を含めた騎士隊長とガルも

対面に座ってるんだけでさ。


「……」


バベルは怒ると思っていた。

だって、下っ端の部下が一人殺された

ぐらいでイス区域を壊滅させる様な

男だよ。

なのに、この男は怒鳴るどころか

僕達から一切眼を逸らす事無く

ジッと見ている。


うん。正直、怖いよね。


この男の眼は怖いんだ。

ポッカリと空洞になっている左目と

ナイフの様に鋭い眼付きから除く

深淵の底の様な真っ黒な瞳。

ボスやガストラの様な眼でも無い。

僕と戦った京香の様な狂気的な眼でも無い。

何を考えているのか全く解らないんだ。

どちらかと言えば魔物に近い

感じがするね。


多分、他のメンバーも似たような事を

考えてるんじゃないかな?

皆、顔色が良くないし。


無言の状態が10分程続いただろうか?

その間に、バベルの組織に属してる

幹部や幹部候補生も部屋に入って

来て何事かと皆の顔色を伺う。

同じ説明をレスタから受けて

閻魔達は驚き、リー達はガルを

睨みつけている。


シュボッ


バベルが太く巻かれている葉巻を

軽く炙り火を着ける。


「昔話をしよう」


葉巻の煙を吐き出してバベルは

そう言った。


昔話?一体何のつもりだ?

今の、この状況と関係があるのかな?

僕以外も同じ様な事を考えている様な

雰囲気だけど誰もバベルの言葉を遮らない。


「昔、昔ある所に…」


そうしてバベルは子供をあやす様な

優しい口調で話し始めた。





◇ ◇ ◇





昔、昔ある所に一人の優秀な兵士が居ました。


彼は、誰よりも正義感が強く仲間想いで

自国を愛していた愛国者でした。


部下からは尊敬され、仲間から慕われ

教官達から信頼されていました。


戦場では誰よりも勇敢で傷ついた

戦友を決して見捨てず、どんな最悪な

状況でも助け出した。


そして、助ける事が出来ず亡くなってしまう

戦友達を目にし涙を何度も流しました。


それでも彼は、戦場に行く事を

辞めず絶えず努力し様々な功績を

上げて来ました。


全ては、国の為、仲間の為、そして

愛する家族の為に彼は身体に無数の

傷跡を残しながら戦って来ました。


そんなある日、国は彼を評価し、

あるプロジェクトの

被験者に推薦しました。


プロジェクト名【Memento mori.】

ラテン語で【死を忘れるな】


世界の平和を守る為に力を貸して

欲しい。

政府高官は彼に、そう言いました。


彼は歓喜し、愛する者達を守れるならば、と

正義感から承諾したのです。


集められた初期メンバーは50名。

彼等は皆、正義感に溢れ誰よりも国を

愛し優秀な者達でした。

そんな彼等に国は2年間の訓練

カリキュラムを課すのです。


それからは、地獄の様な訓練と

最前線での実戦を繰り返しました。

ある者は、訓練中に命を落とし、

また、ある者は戦場で凶弾に

倒れました。


国の指令は厳しく、非人道的な

内容も数え切れない程、指示され

彼等は歯を食い縛りながら実行

してきました。


中には精神が崩壊した者もいました。

その者達の処分も国からの指示で

彼は実行しました。


全ては国の為、愛する家族を守る為…。


精神と肉体を磨り減らしながらも

ギリギリで保っていたのは守るべき

存在が大きかったのかも知れません。


月日は経ち、訓練も終盤に

差し掛かり残す所、2回となりました。

彼は、政府高官に呼び出され

茶封筒を手渡されます。


内容は、茶封筒に入っている人物を

殺害せよ。との命令です。


彼は、封筒の封を解き中に入っている

ターゲットの写真を見て驚愕しました。


写真の男は、このプロジェクトで

一番信頼し共に戦って来た戦友

だったのです。


彼は激高しましたが、政府高官は

淡々と言うのです。


ならば、お前が死ぬだけだ。

相手にも、お前の写真を渡している。

向こうは殺る気だぞ。


その言葉を聞き彼は決意しました。


俺は死にたくない。

国の為に…何より帰りを待つ家族の

為に…。


訓練が始まってからは一度も会っていない

美しい妻と2歳になる愛娘。

その写真だけを見て今まで耐えてきた。

死んで堪るか。


彼は使い慣れた拳銃に弾を込めて

ターゲットに会いに行くのです。


そして、戦友だったターゲットと

相対しました。

場所は、政府が用意した真っ白な空間。

ターゲットは右手に拳銃を持ち彼に

狙いを定めます。


一瞬でした。


ターゲットは真っ白な空間で

真っ赤な血を流し倒れます。


しかし、その光景に撃った彼は疑問に

思ったのです。

構えたのは向こうが速かった。

あいつが外すなんて有り得ない。

本来なら死んでいたのは自分だと。


彼は、ターゲットの隣に落ちている

拳銃を拾い弾倉を確認し呟きました。


「そんな……空砲…?」


相手の持っている拳銃は銃声だけが

鳴る空砲だったのです。

泣きそうな顔で倒れている戦友に

顔を向けると…彼は笑っていました。

そして、そのまま息を引き取ったのです。


戦友は自分を殺す気など無かった。

なのに、俺は…俺は……。


彼は言葉に成らない声を上げ

泣きました。

固いコンクリートの床を掻き毟り

爪が全て剥げる程に。


政府高官や役人、軍の上層部は

そんな彼に拍手と賞賛を送ります。


おめでとう。


おめでとう。


おめでとう。


試験は合格だ。


完璧な兵士に一歩近づいたな。

次の試験も頑張りたまえ。


全ては国の為なのだよ。


部屋のマイクから流れる無機質で

残酷な賞賛。


彼は、その一件以来、国の忠誠心を

失いました。

それでも彼は、プロジェクトを続行

したのです。


全ては死んでいった戦友達の為、

そして家族の為に。

【Memento mori.】死を忘れない為に

彼は必死に戦い、どんな残虐な事も

平然と出来る様になっていったのです。


毎日、毎日、手を血に染め人間性が

欠落していく彼に政府から指示が出ました。


家族との面会を一日限定で許可する。


この指令を聞いた彼は喜びました。

家族に会える!妻に、娘に会える!


彼は大急ぎで妻と娘にお土産を買い

帰宅しました。

そんな彼を妻は優しく微笑み、

娘は嬉しさの余り飛びついて来ました。


娘と妻を抱きしめた彼は、

今まで会えなかった時間を取り戻すかの様に

会話し触れ合い、妻と娘が一緒に作った

手料理に舌鼓を打ちました。


夢の様な時間を堪能していると

インターホンが鳴り小包が届きました。

差出人は不明。


彼は嫌な予感を感じつつ小包を

開けると中には実弾入りの拳銃と

茶封筒。

心臓が激しく脈打ちました。


心臓を押さえながら封を解くと

又しても写真が入ってました。

前回と違うのは、写真が二枚と

指令書が入っていた事です。


だが、彼は、それどころでは無かった。

何故なら、写真には愛する妻と

大切な娘が写っていたのです。


彼は、頭が真っ白になりつつ

指令書に眼を向けました。


・最終試験・


最愛の者達を国に捧げよ。


拒否すれば、別の者が実行する。


自害は、認められない。


全ては、国の為に。


彼は、震えていた。

戦場でも戦友達を殺した時ですら

震えなかったのに今は、ガクガクと

崩れ落ちそうな程に。


妻が、それに気付き声を掛けるが

彼は、悟られない様に笑顔を向け

少し書類の整理をすると嘘を言い

自室に篭もり彼は紙に妻と娘宛に

手紙を書いた。


日頃の感謝とか今まで苦労を掛けたなど

他愛もない事と最後に「愛している」と

書き終わると、彼は躊躇する事無く

自身の口に銃口を入れました。


グッと指に力を込めました。

何度も、何度も力を込めました。


でも、指は動きません。


この時、彼は知らなかったのです。

訓練段階で国の指示が無ければ

自害出来ない洗脳プログラムを

施されていた事を。


彼は絶望しました。


そんな時です。

不意に自室の扉が開き妻が入って来ました。


驚いた彼は銃を隠そうとしましたが

妻は、慌てた様子も無く彼を優しく

抱きしめました。


状況が理解出来ない彼に妻は

語りだします。


政府から国の平和の為に夫が

戦っていた事。


非合法な作戦に数多く従事し

多くの命を奪っていた事。


自分達が最終試験の材料だと言う事。


妻は全て知っていました。


彼は、驚愕しつつ妻に一緒に逃げようと

話します。

しかし、妻は、首を横に振るのです。


大国から私達を連れて逃げ切る事など

出来ません。

私達は、貴方の足でまといになってしまう。


何度も説得しましたが駄目でした。


妻は、覚悟を決めていたのです。

ポケットから注射器を取り出し彼に告げます。


「アンナは、苦しまなかったわ。

 まるで…眠っているかの様よ…」


涙を流しながら告げ次の言葉を告げる妻。


Memento mori.…貴方が私を撃って。


その言葉が出た瞬間、彼の腕は自分の

意思とは関係無く愛する妻に銃口を

向けます。


Memento mori.。これは、この計画の

洗脳コードだったのです。


嫌だ…嫌だ!嫌だ!嫌だ!

ソフィアを殺したくない!

何で身体が言う事を効かないんだ!?

頼む…止めてくれ…頼むよ!!

腕を斬り落としてくれ!

そーすれば、ソフィアを撃たなくて

済むんだ!!

お願いだ…ソフィア…。


愛する妻は最後に、こう言いました。


【愛してるわ…ホバック。生きてね】


パンッ


乾いた音が響き横たわる妻。


ゴトリッと拳銃を床に落とし膝を着き

ヨロヨロと這いつくばるように妻に触れ

抱き締める。


まだ、暖かい…。


妻を持ち上げ娘が眠っている部屋に

行き横に静かに妻を寝かせました。

そして、今度は妻と娘を一緒に抱き締め

彼は泣きました。


まるで人間の言葉を忘れたかの様に…。

獣の咆哮の様に泣きじゃくりました。

泣いて、泣いて、涙が枯れる程

泣きました。


彼は、政府の人間に懇願しました。


殺してくれ!死なせてくれ!

お願いします!死なせて…

死なせてくれ…頼む…。


最初は、このプロジェクトに関係する

全ての人間を殺そうとしました。

でも出来ない。

上司に敵対出来ない様に洗脳されて

いたからです。


ならば、俺を死なせてくれ。


彼は、泣きながら懇願したのです。


それを見た政府の人間は口元を

釣り上げ、こう言いました。


死に場所は、こちらが用意しよう。


彼は、政府が用意した死に場所に

何度も…何度も何度も数え切れない程

向かいました。

左目を失っても、身体に痛々しい

傷を負っても彼は死ぬ為に

戦い続けました。

だが、死ぬ事は出来ませんでした。


そして時は流れ…。


国が崩壊し新しい国と政権が

立ち上がるとプロジェクト名【Memento mori.】は

廃止。他の非人道的な計画も全て廃止になり

政府は計画に関与していた被験者達を

犯罪者に祭り上げました。


【Memento mori.】の生き残りは16名。

その内、12名は逮捕され銃殺刑。

残り4人は各国に逃亡しました。


祖国では、連日連夜、殺人者。殺人組織と

メディアに報道され、指示を出していた

高官ですら彼等を犯罪者呼ばわりです。


国の為、仲間の為、愛する家族の為に

戦って来た男は、全てを失いました。


国に裏切られ、仲間を失い、愛する者達を

殺した。

彼に残っていた感情は憎悪だけでした。


彼は、自分の知識と人脈、技術を使用し

似た境遇の兵士を集めました。


【影無き兵士達】


政府によって戦死した事にされ

形式上、存在しない兵士達。


500名にも満たない小さな傭兵組織。

その組織が設立された頃から、彼の

祖国では、政府関係者や高官、軍の

上層部の人間が行方不明となる事件が

多発しました。


そして、Memento mori.に関わった

全ての人間が居なくなりましたとさ。




◇ ◇ ◇




「……おしまい」


バベルは、そう言うと静かに

葉巻の火を消した。


皆、何も言わない…いや、言えない。

そんな状況では無いんだ。

バベル以外の今、この場に居る全ての者達が

涙している。

リーやツヴァイは顔を覆いながら

座り込み震えながら泣いている。


斯く言う私も……ぐっ!あぁ…駄目だ。

涙が止まらないよ…くそっ…。


「ガル…。お前は、一度でも彼等の事を

 知ろうとしたか?

 騎士の連中もだ。

 何故、彼等が此処まで出来るか少しでも

 考えたか?

 理解しようとしたか?」


ガルは顔を真っ白にしながら眼を

見開き小刻みに震えている。


バベルの言葉に誰も答える事が出来なかった。

僕達は、理解しようとなんて思わなかった。

知ろうとさえしなかった。

過去に何があったのかなど考えず絶対悪だと

罵倒し続けた。


あんな過去……惨すぎる…。

地獄なんてものじゃないよ…。

もし、僕が同じ経験をしたら?

国から仲間を…家族を殺せと命令

されたら?


間違い無く精神が崩壊する。


「お前達は、彼等の前で、もう一度

 平和の為に、国の為、愛する者達の為に

 と声高らかに言えるか?

 愛すべき者達が居ないと罵倒出来るか?

 下等生物と見下せるか?

 なぁ、ガル、レスタ、ウィル、グレイ、

 キャス、セシル、ウィンザー。

 彼等は、そんな経験をしてまで

 正常で無ければ駄目なのか?

 ………答えろよ」


言えない…そんな事、彼等に言えないよ。


グレイも他の物達も顔を伏せている。


「ははっ、答えられないか?

 あぁ…くそっ…駄目だな。

 すまん。少し、感情的になるぞ」


バベルが、そう言うと眼で

識別出来るんじゃないかと

勘違いする程の怒気が感じられ

恐ろしい程の怒鳴り声が

基地全体に響き渡る。


【貴様等は!一体何を考えてる!!

 異常者!?下等生物!?下衆だと!?

 巫山戯るな!!

 あいつ等が、どんな想いで今まで

 生きて来たのかも知れねぇ癖に

 戯言吐かしやがって!!

 お前達の気持ちが理解出来ない!?

 なら、貴様等は、あいつ等の

 気持ちが理解出来るのか!!

 出来る訳ねぇよな!?

 全てを失った事の無い貴様等が

 あいつ等の事を理解して堪るか!!

 平和の為に、国の為に!

 仲間の為に、家族の為に

 戦って来たんだよ!!

 その結果が地獄だ!

 貴様等の様な平和ボケした連中が

 あいつ等を罵倒する権利など無い!!】


僕は今、始めて此処まで感情的に

なっているバベルを見ているかも知れない。

あの、いつも薄ら笑いを浮かべ

ヘラヘラしているバベルの面影は一切無い。


鬼の様な形相とは彼の事を言うのだろう。

怖すぎる…。

雰囲気も顔も声も全てが感情的で

恐ろしい程の怒りだ。


僕達は、それだけの事を言ってしまったのだね…。

騎士失格かな…最低だね、僕は。


一通り怒鳴ると、バベルは静かに

溜息を吐き煙草に火を着ける。


「…すまない。少し感情的になった。

 一方的に言い過ぎたな。

 はぁぁ…まぁ、いくら暗い過去がある

 からと言って殺しを正当化するつもりは無い。

 思えば俺の方が残酷だな。

 昔の指示してた糞共と同じ事を

 してるんだからな」


ふぅぅ…と煙草の煙を吐き出すバベル。


「今回のイス区域の件は全て俺の指示だ。

 遣り過ぎたとも思わんし、似たような事が

 起これば躊躇せずに俺は指示するし

 実行する。

 それに関し納得出来ねぇなら俺に言え。

 多少は…善処する。

 さてと…最後に、言いたい事がある」


バベルが僕達に顔を向ける。


「仲直りして来い!」


その言葉を聞いた瞬間、ガルと僕達は

広間の扉を勢い良く開けて走り去った。

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