バルダットファミリー「拷問」
ピチョン…ピチョン。
薄暗く血生臭い部屋の天井から水滴が滴り、
何度目かも解らない気絶から意識を取り戻す。
「ようやく、お目覚めになったのね。」
眼を細め、怪しく笑う女は、クウと言った。
色気がある服を着て、右手には鞭を持っている。
スタイルも良いし、顔も美人だが性格は、かなり
歪んでやがる。
散々、鞭で殴られ俺の服はボロボロだし、
身体中、皮膚が破れてズキズキ痛む。
そんな光景を見て笑ってやがるんだから、ヤバイ女
なのは間違いねぇ。
「あなたは、私の愛してやまないシバァール様を
裏切ったわ。楽に死にたければ、一緒に居た
と言う人間を差し出しなさい。」
「だから!あんな人間知らねぇって言ってんだろ!!」
バチンッ!!
クウの鞭が容赦無く俺の身体を叩きつける。
「ぐぅぅ!!…こ、この!」
バチンッ バチンッ
「ぐあっ!!ぎっ!!」
鞭の、しなった音とガルの痛みに耐える声が
薄暗い拷問室に響き渡る。
「口の聞き方に、気をつけなさい!
あなたの、命は私が握っているのよ。」
鞭を置き、別の拷問器具に手を伸ばす。
「うふふ、次は、もっと激しく攻めてあげる。」
そう言って少し太めの針をクルクルと回しながら、
近づいてくる。
ギリッと歯を食いしばりながら次の痛みを想像
していると、不意に扉が開いた。
入って来たのは、シバァールだった。
「どうだ?吐く気になったか?」
「だ、だから…人間なんて…知らねぇって…」
その、少しの会話にクウは激昂する。
「あなた!!シバァール様の質問に対し何て
態度ですか!!
シバァール様!!!このような小悪党、私が
始末致しますわ!!。」
怒りが治まらないのか、すぐに始末しようと言うクウに、
シバァールが手で制止する。
「待て。簡単に殺して、どうする?コイツは、
俺達の仲間や兄貴を殺した奴等と一緒にいたんだ。
俺達が受けた屈辱と同等の苦しみを与えるんだ。」
素晴らしい考えですと言わんばかりの表情をするクウに
対し、何て事言うんだと更にガルは、青ざめる。
「そう言えば、貴様は孤児院の出だったな。」
その言葉に、ドキッと心臓が高鳴る。
「決めた。俺の仲間に孤児院を襲わせる。」
鋭い眼付きで、ガルを睨みながら吐き捨てる。
その言葉に、ガルは慌て鎖に繋がれているにも関わらず
ガシャン、ガシャンと身体を動かす。
「待ってくれ!!弟や妹達は、関係ないじゃないか!?
殺るなら、俺だけにしてくれ!!」
「心配するな。襲わせるが殺しは、しない。
売り飛ばすだけだ。」
耳を疑った…売り飛ばすって言ったのか?
弟や…妹達を…?
「な、何言ってんだよ!!売り飛ばすって…
重罪だぞ!!人間の取引とは違う!!」
「貴様…馬鹿か?」
えっ、と驚きの表情に対するガルに、馬鹿にしたような顔で
喋りだす。
「俺達は、全員悪人だ。今更、罪を恐るなんて
愚の骨頂だろ。
それに、獣人売買は貴様が知らないだけで、
頻繁に取引されている。
貴様のような力も無い奴が取引すれば
捕まるが、俺達のような力を持つ者は、黙認
されているのさ。」
…信じられない…獣人売買が頻繁に行われていた
なんて。
俺達、獣人は種が違えど、同族を売らないと言う誇りを
持っていた筈なのに…それなのに、あの人間と同じ
ような事を獣人が言っている。
「あら?随分ショックを受けたような顔をして
いますわね。」
「残念だったな。この世界は、貴様が思っているより
ずっと闇が深いんだよ。」
シバァールは、クルリとガルに背を向け、部下に孤児院を
襲い、子供達を連れてこいと指示を出す。
ガルは、喉から血が吹き出すんじゃないかと思う程の
大声を上げる。
「ヤメろおぉぉぁ!!弟と妹達に手ぇ出すんじゃねぇぇ!!
テメェ等あぁ!ぶっ殺してやる!!
絶対、殺してやるからなぁぁぁ!!!」
歯を剥き出しにし、強く噛み締めているせいか歯茎から
血が流れ、眼からは血と涙が混じった液体が流れている。
毛は逆立ち、さっきまでの小悪党のような姿は無く
クウや、指示を受けた者達は、顔を引きつらせている。
「…シバァール様…。」
チラリと見たシバァールの顔は、笑っていた。
その顔と余裕に畏怖と尊敬の念を込めて全てを
この方に、捧げようとクウは思うのであった。
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