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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
128/248

閑話 「ファルシア聖騎士学院」

ビュン!…ビュン!


ファルシア聖騎士学院内にある訓練場から

風を切る音が響く。


「998!…999!…1000!!」


日課の素振りをした少年は静かに剣を鞘に

戻す。誰も居ない放課後の訓練場には

少年の身体から汗が滴り落ち闘気の様に汗が蒸発している。

金髪の髪に切れ長で整った顔立ち。

身体は引き締まり立っているだけで絵画の絵を

切り取ったかの様に幻想的に佇む少年。

年頃な女性や学院の生徒達が今の光景を

見てしまったら間違い無く恋に落ちるだろう。


ただ、この少年は恋だの恋愛だのに興味など無く、

ただただ強さだけを追い求めていた。


俺の名は、グラッド。


スラムで育ち2人の姉妹が居る何処にでも居る獣人だ。

今は、訳あって貴族達の子供や商会のボンボン達が

通う聖騎士学院に通っている。

本当なら俺みたいな獣人は絶対に入る事が

許されない場所だ。

そんな俺が何故、此処に居るか何だが…。

俺の師匠でもあり騎士団トップのリヒト団長からの

命令なんだ。


俺は…いや、俺と2人の姉妹は数ヶ月前に凶悪な

に人間に買われ売られたんだ。

そんな俺達を引き取ってくれたのがリヒト団長だった。

最初は何が何だか解らなかったが、翌々聞いてみると、

俺達を売った大罪人ラド・バベルの情報を手に入れる為に

取った特例処置らしいが今となっては、どうでも良い。

リヒト団長は俺達を暖かく迎え入れてくれて

騎士団に入団したいと言った俺に訓練まで付き合ってくれた。

俺は強くならなきゃいけない!

強くなって姉さんと妹を守らなくちゃいけないんだ!

なのに……。


「はぁ……」


誰も居ない訓練場で溜息を吐くグラッド。


ある日、リヒト団長と訓練をしていると不意に

聖騎士学院に通えといわれたんだ。

確かに、騎士団に成る為の最短コースだし、

騎士としての教養や礼儀を学べと言う理由は解る。

それに、背中を任せられる仲間を見つけろとも

言われた。

だけど、学院に入学して数ヶ月も居れば嫌でも解る現実。

平民貴族皆平等と信条にはなっているが成金趣味の

ボンボンや貴族ってだけで力も脳も無い馬鹿が

肩で風を切って歩いている。

平民出身者は、そんな連中から眼を付けられたく無い為、

極力接触を避ける者、媚びへつらって貴族の息子に近づく者、

こんな感じで平等なんて名ばかりだ。


俺?俺は、どっちでも無い。

とゆーか、そんな事に興味も無いし気にしていても

無駄に疲れるだけだ。

疲れるなら訓練で疲れる方がマシだ。


だが、勘違いしないでくれ。

全員が、ロクデナシって訳じゃない。

中には、主領の子供で本気で領民の為に努力している者達や

剣技を磨いている者達も居る。

まぁ、半々って所だな。


だから喋るとしても俺は努力している奴としか極力喋らない。

別に一人でも何の問題は無いんだがリヒト団長から

仲間を作り見聞を広げよって言われているから仕方なくだ。

平民出身…あっ!今の俺の出生は平民出って事になっている。

スラム出身でも問題無いらしいがレスタ副団長に色々と

面倒になるから平民出として入学しろって言われてる。

そんな俺だが……数ヶ月も学院に通えば仲間?の様な

連中も出来るんだが…これが中々、癖がある連中だ。


「ちょっと!グラッド、私と勝負しなさい!そして

 私が勝利したら貴方は私の右腕になるのよ!!」


訓練場に響き渡る大きな声に、グラッドは溜息混じりに

声がした方向を振り返る。

そこには、燃え盛るような赤い髪を後ろに一本で束ね、

その髪の色とは対照的に彼女の瞳は透き通るような綺麗な

青色で真っ直ぐグラッドを見つめている。


「さぁ!勝負よ!この前の様にはいかないわ!」


「………」


「何とか言いなさい!!」


彼女の名前は、ウィンチェス・アレク・メアリー。

豹人族ウィンチェス公爵家の令嬢だ。

当然、公爵家なので権力も絶大。王族とのパイプも

ある由緒正しい家柄に加えて学年でも1、2を争う程の

美少女だ。

眼は、少し気の強そうな感じだがパッチリとしているし

顔全体は綺麗に整い俺から見ても可愛いと思う。

発育だって14歳にしては相当良い。

因みに俺は、15でメアリーの一個上だ。


当然、これだけ揃っている選ばれた奴なら他の

グループからの誘いも凄かったらしいが全て

断り何故か俺を標的としている。


「ふふん、相変わらずグラッドはモテモテだね」


「けけっ、見てる方が恥ずかしくなるねぇー」


メアリーの後ろからは、自身の金髪をかき上げる少年と

肌が褐色の少女。


「…そう思うなら止めたらどうだ?バロール、ターニャ」


「ははっ、何故だい?学年トップクラスの美女に

 声を掛けられていると言うのに、おかしな事を言うね」


「そうそう!見てて楽しいしぃー、けけっ」


全く…この二人は、どうも俺達を笑いの種として

見ている所がある。

ドナルド・モンド・バロール。

領主のドナルド公爵家の長男だ。

普段は軽いノリとフットワークで行動しているが

流石、領主の息子だけあって文武両道で

何でもそつなくこなしている。俺とは大違いだ。

なのに、誰にでもフレンドリーに話しかけるから

男女共に人気がある。因みに種族は、竜人族なので

頭からは小さな角が2本生えている。

竜人族は蛮族などと呼ばれる時も有るが、

それは辺境の竜人達だけだ。

事実、ドナルド家はファルシア大国に多大な貢献を

認められ領主の地位まで上り詰めているのだからな。


そして、もう一人の褐色少女だ。

スーロン・デ・ターニャ。スーロン公爵家の次女だ。

短髪で真っ白い髪が褐色と相まって非常に良く似合う。

身体は適度に引き締まっているが出ている所は、しっかり

出ている。多分、メアリーより発育が良い。

しかもスタイルも抜群で足も長く身長の事で良く

メアリーに絡まれている。

本人は楽しそうだから良いと思うが、他種族と比べて

発育の速さが違うダークエルフに対抗心を

燃やすのは如何なものか。


とまぁ、こんな感じで良く喋るのは大体この3人だな。

なんか公爵家の連中ばかりだが俺は平民出の奴とも

普通に接するからな。差別とか大嫌いだし。


「平民出の癖に3大公爵家と…」

「全く、卑しい者だ」

「調子に乗りやがって!しかも、あんな美女と!!」


メアリー達と喋っていると他の貴族達から色々と

陰口を言われるが無視だ。

そんなに喋りたいなら自分から声を掛けろよ。


「ふふ、あんな戯言気にする必要は無いよ。

 僕達は好きで君と喋っているんだからね」


そう言って俺の頬を撫でてくるバロールに

毛がゾゾッと逆立つ。


「止めろ。毛が逆立つだろ…全く、男色の気でも

 あるのか?お前は」


バロールの奴は、たまに……いや、よく俺の身体を

触って来るんだが勘弁して欲しい。

一応、スキンシップだと言っているんだが、

こいつの場合は、どっちでもイケそうな気がして

ならない。


「ふふ、初心だね~」


馬鹿か?誰だって男に頬をいきなり触られたら

嫌がるだろ。

気の良い奴で良く喋るんだが困った奴だ。

後、何故か俺達の戯れを見て周りの女達がキャーキャー

五月蝿い。


そんな他愛のない事をしながら俺は学院生活を

送っていた。

でも、そんな何でも無い日常が突如崩れ去った。


突如として貴族街と平民街で大規模な爆発が

起こりパニックになったのだ。

俺や他の連中も授業中だったから最初、何が

あったか解らなかった。

教師は慌ただしく動き学院の生徒は直ぐに

学院寮に帰されたのだが、どうも変だ。

学院から寮までは大した距離も無いのに戦闘訓練担当の

教師達や衛兵が護衛に付いたのだ。

しかも全員、フル装備でだ。

もう、この時点で只事では無いのだが、教師に

いくら問いただしても全く答えてくれない。

結局、その日は何も解らず寮に帰された。


次の日、護衛と共に学院に登校したのだが

メアリーの姿が見えない。

いつもなら、後ろから飛びかかって挨拶をしてくるのにな。

昨日の出来事の事も有り少し不安になったが

大丈夫だろう。

そう思っていた。学院の訓練場に行く間では。


いつもの時間なら訓練場には誰も居ない。

だが、今日は違った。

大勢の人集りで皆、泣いていた。


「「グラッド!!」」


「バロール!?ターニャ!?これは一体何だ!?」


声を掛けてきたのは、いつもの2人。

だが、その顔は鬼気迫る顔をしておりターニャに至っては

泣き腫らした眼をしている。

それに、メアリーが居ない。いつもなら必ず2人と

一緒に居るのに。


「グラッドォ…グスッ…メアリーがぁ…メアリーがぁ」


「!?メアリーが、どうした!?おい!ターニャ!?」


ターニャが、いきなり俺の服を掴み涙をポロポロと

落とす。


くそ!何だ!?一体何がどうなってる!

メアリーに何かあったのか!?

まさか、俺がメアリーの事で此処まで取り乱すとは

思っても見なかったが今は、それどころじゃない。


「…グラッド、こっちだ…メアリーが居る」


そう言われ群衆を掻き分け俺とターニャはバロールに

付いて行く。そして少しすると、メアリーの姿が見え

いてもたっても居られずメアリーの元へ駆け出す。


「メアリー!大丈夫か!?ターニャが泣いてるから

 何かあった…の………かと…」


メアリーは俺の言葉に全く反応せずに、ある一点を

見続けていた。


大きさは成人男性程の半分程の布の塊と更に小さい

布の塊だった。

その布は何かを包んでいるのだろう。

ドス黒く所々赤く布を染めている。

相当の馬鹿でも今の状況を見れば気付く。

包まれている中身が何なのか…。


「…グラッド…昨日…貴族街でね、お父さんと妹が買い物して、

 それで…爆発、に……ま、巻き込まれ、て…お父、さん

 身体が半分見つから、無くっ、て判別…出来な、くて…

 妹の、アリーナ…も…………アリーナもぉ……ヒックッ」


ボロボロと大粒の涙を流すメアリー。

普段なら絶対に見ない泣き顔に胸が抉られる様な痛みが

走った。笑顔を絶やさず前向きで場の空気を明るくする

メアリーが今では、身体が小刻みに震え眼が虚ろだ。

触れてしまった瞬間、精神が壊れてしまいそうな

メアリーを俺は無言で抱き締めた。

顔を俺の胸に埋める様に強く…強く抱き締めると

メアリーも俺の背中に手を回し服から血が滲む程、

強く強く俺を抱き返す。


後に判明したが今回の爆発で死者は1000名を超えた。

白昼の賑やかな時間帯を狙った犯行で同時に3ヶ所の

区域で爆発が起こり被害は甚大だった。

幸い、バロールとターニャの家族は無事だったらしいが

学院の生徒で親族を亡くした者達も多数居るとの事。

この事件は【血煙の悪夢】と言われ歴史上、類を見ない

無差別攻撃事件とされる。

しかも戦術魔法攻撃並だったにも関わらず一切魔力が

検知されず捜査班を悩ませたが犯人は直ぐに判明した。


【大罪人:ラド・バベル】(国家最重要危険指定人物)

※発見した場合、即座に衛兵隊長、部隊長クラスに

 連絡し決して近づく事を禁ずる。


校内の掲示板に張り出された名前を見た瞬間、

納得してしまった自分が居た。

アイツ等なら、間違い無く殺ると思っていた。

平気で一線を超える奴等だ。別に驚きはしない。

驚きはしないが…代わりにバベル達に対する憎しみで

身体が、どうにかなりそうだ。

俺と姉さん、妹を売り飛ばし今でも獣人達の命を

金に変えている犯罪者。

それだけでも憎いのに……アイツ等は、メアリーを、

俺の大切な仲間を泣かせたんだ!

絶対に許さねぇ!


それから徐々にメアリーも元気を取り戻して来たけど

妹と父親をいっぺんに亡くしたんだ。

そんな簡単に癒えるものじゃないけど…

それでも俺とバロール、ターニャで励ましながら

過ごして来た。

この事件の後、夜に王都が夜襲されると言う

前代未聞な事件が起きて何百人も死んだ。

けど、後日騎士団と軍隊がバベル達を鎮圧し捕縛したと

知らされる。

当然、公開処刑だと思っていたが国は技術提供と

アテゴレ地区の管理と言う名目で捕虜と決定。

批判が相当あったらしいが王命により可決。


それを聞いた時のメアリーは凄まじかった。

所構わず暴れ回り教師5人がかりでやっと

落ち着かせた程だ。

そんな状態なのに学院に巫山戯た知らせが届く。


ラド・バベルと一味を学院に招き入れ

生徒を指導させると言う。

巫山戯てる!馬鹿げてる!!

一体、国の上層部は何を考えているんだ?

此処の生徒でも親族を亡くした奴等が大勢いるんだぞ!


勿論、生徒も反発し教師達も同意見だったが

上層部の圧力やらなんやらで許可されたとバロールが

言っていた。

何で、犯罪者の為に上層部が圧力なんて掛けるんだよ。

こんな事、リヒト団長なら絶対に許可しない。

団長本人にも聞きたいが、例の事件以降殆ど学院に

顔を出さなくなりたまに手紙が届く程度だ。

おかしい…絶対に何か変だ。

けど、確かめる方法が無いのが歯痒い。くそっ!!


解らないまま数日が過ぎた。


「バロール、メアリーを見てないか?」


「いや、そう言えば今日は見てないね。欠席かな?」


「ううん、登校してるのは見てるから学校には居ると

 思うよ。けど、確かに見ないねー」


何だ…何か胸騒ぎがする。


「ちょっと、探してくる」


「ふふん、僕も行こう!友達は、ほっとけなくてね」


「私も行くよ!!」


「ははっ…全く。よし、なら手分けして…」


そう言葉を発した瞬間、校門前で怒りが篭った

叫び声が聞こえた。

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