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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
124/248

バベルの世界「化物」

~セータside~


一体全体、どーゆう事だ?何で…何でこんな事に

なっている?

僕達は、スラムの悪所アテゴレ地区へ出向き

ラド・バベルと言う転生者と思われる人間の討伐に

出向いた。

情報を探って行く内に剣崎と言う女性の人間と

獣人の少年に出会うと彼等はバベルの側近だと言う。

飛んで火に居るなんとやらだ。

直ぐに彼等にバベルに会わせる様に言ったが当然拒否。

女性相手に荒事はなぁ…と難色を示していると

僕の仲間のギルナが相手をする事になったのだが……。


「…ヒュウー、ヒュ…ヒュウゥ…」


そのギルナは、地面に仰向けに倒れている。

顔も腕も足もグチャグチャで地面には夥しい量の鮮血と

折れた歯や角が辺りに散乱しており生きている事が

不思議な程の大怪我を負っている。


対する剣崎と言った彼女。

不敵な笑みを見せつつゴキンッと首を鳴らしながら

今にも命が尽きそうなギルナを見下している。


くっそ!どうなってるんだよ!?

鬼人族で武術にも長け人間の何倍も力がある彼女が

此処までやられるなんて!!しかもA級冒険者だぞ!

相手の剣崎は魔力を使った気配が無かった。

て事は純粋に筋力だけの攻撃と言う事だ。

完全に化物だ。人間を卒業している。


早くギルナを助け出さないと不味い状況なのに

もう一人の獣人が邪魔で中々近づく事が出来ない。


「くっ!邪魔をするな!」


「なら早く諦めて帰りやがれ!!」


獣人の少年が僕目掛けて斬りかかってくる。

その度にガキンッガキンッと火花が散っていく。


ちっ!この獣人、剣の腕前は大した事無いけど

兎に角、剣速と手数が多い!それに獣人特有の反射神経の

良さで中々良いのが入らない。

しかもチートで無詠唱魔法を使おうとすると尽く潰して来るから

質が悪い。何で解るんだよ!?

こいつを鍛えた師匠は余程性格が悪そうだ。


『小童、剣速が落ちておるぞ!』


「解ってる!!」


そして、もう一つ厄介なのが、この狐達だ。

魔物の召喚獣みたいだが何か神々しさまである狐がマジで邪魔!

火の魔法を関係無しにぶっ放してくる。

デカイ炎の塊を飛ばしたと思ったら、小さな火球を数百個飛ばして

来たりで勘弁して欲しい!

俺、一応チート勇者で高ランクな冒険者だよ?

ラノベなら、こんな悪人サクッと倒してハッピーエンドとか

じゃないのかよ!

なのに、何で僕達が追い詰められてるんだ!?


「ハァ…ハァ…勇者の癖に中々やるじゃん」


「ハァ…勇者だからだよ!本当なら、もう少し戦ってみたかったけど

 仲間を助けないといけないんだ!次で仕留める!」


「無理だろ、つーか、勇者の癖に殺気が全然ねぇじゃん。

 今まで誰かを殺した事って無いだろ?」


獣人の少年が的確に的を得る。

そう、僕は、この世界に召喚されて3年経つが誰一人

命を奪った事は無い。

こんな魔物蠢き盗賊が闊歩する世界なのにだ。

冒険者の依頼で盗賊の討伐にも何度も参加したが殺しはしなかった。

周りからは、慈悲深いなんて言われてたが純粋に

殺す覚悟が無かっただけだと思う。

他のラノベ主人公みたいに簡単に割り切れなかった。

ラノベを読んでいる時は、そー言った主人公を甘いなぁ~

なんて楽観視していたが、いざ自分がファンタジーの世界に

行ったら中々出来ない。


相手を斬れば当然今まで見た事の無い量の血が出るし

怯えた顔や恐怖の眼差しで見られるとどうしても非情に

なれなかったんだ。

ましてや会話が出来ない魔物と違って獣人、亜人、人間は

言葉を喋る事が出来る。

そんな相手を日本で平和に暮らしていた僕が

殺せる訳無いじゃないか!


僕が、そう思っている事を察知したのか解らないが

獣人の少年が口を開く。


「あー…別に責めてる訳じゃねぇぞ。殺しが出来ねぇなんて

 まともな神経してりゃ当然だからな。

 俺は、立派だと思うぜ」


何か敵で有る獣人から慰められてるんだが…。


「ただ、それじゃあ尚更、バベル達に会わねぇ方が良い。

 仲間の俺が、こんな事言うのは変かもしんねぇけど…

 あいつ等は全員化物だ。

 殺すと言う事に対し何の躊躇もしない。

 敵対すれば、息をするのと同等で殺して来るぞ。

 アテゴレに住んでいる住人なら誰でも知っている事だ」


…おいおい…はっちゃけ過ぎだろ?

本当に同郷の人間なのか?何か地獄から這い上がって来た

人間とかじゃねぇの?

でも、それだけ恐怖政治みたいな事してたら住民の不満だって

溜まっていくし、そもそも王都の騎士団や兵士が黙って無いだろ?

しかも人間の地位が最底辺の世界じゃあ後ろから刺されても

不思議じゃないのに。


「バベルは徹底的だ。

 敵対する者達は老若男女皆殺し。子供だろうが関係無い。

 騎士や兵士も何百単位で殺してる。

 そんな相手に敵対すると思うか?

 質が悪い事に、バベルは協力者に対しては相当甘くてよ。

 スラムの餓鬼だろうが年老いた老人だろうが

 協力すれば相談に乗ってやったり改善したりすんだよ。

 人間、亜人、獣人分け隔て無くな。

 少なくともスラムの連中は、国の連中より

 バベル達を信用している。おっかねぇのは確かだがな」


飴と鞭を使い分けているのか…確かに、それはスラムでは

有効だと思う。

実際、平民や貴族達からはスラム出身ってだけで

中傷の的だし今まで国がスラムを放置し何も改善策を

出さなかったせいだろう。


ファルシア大国の国王は立派な国王だと思っている。

スラムに暮らす者達からは税を軽くしようとしたり

食料の配給なども行ったりしていた。


しかし、金に目が眩んだ馬鹿貴族や国王の部下が報告書を

偽造し税を多く徴収したり払えない者は肉体労働の強要、

食料は横領され転売されていた。

まぁ…後々発覚し事件に関わった者達は解雇の末、鉱山禁固刑。

重い処罰の奴らは斬首されたっけ。

因みに、俺が解決したんだけどね。


当然、こんな事が明るみに出ればスラムの人達は国を信用しない。

そんな時に、恐ろしく強い仲間を引き連れた転移者が

現れれば依存するのは無理ないよなぁ。


だが、そんな事を言った所で今の状況は変わらない。

ギルナは瀕死で他の仲間達も傷だらけだ。僕が何とかしないと!


そう思いながら自分の愛剣に徐々に魔力を込めていく。

殺しはしない。殺しはしないが2~3ヶ月はベットの上で

療養してもらう。


どんどんと魔力が濃くなり始め、獣人の少年も

ふぅーっと息を吐き臨戦態勢を取る。そして、いざ!っと思い

お互いが動こうとした瞬間、何処からともなく声が聞こえた。


「何してる?」


一言…たった一言だった。

その一言で、その場の空気の温度が一気に下がり

今まで感じた事の無い程の重圧が僕達を襲う。

反射的に声がした方向に剣を向けると2人の男が立っていた。


1人は体中傷だらけで眼帯をしている歴戦の兵士の様な

鋭い眼付きをした男。

もう一人は横の髪を刈り上げ白いスーツで黒のワイシャツを

着ている片目が空洞になっている男だ。

その2人を見た瞬間、全身から一気に血の気が引くのが解る。

こんな事、ドラゴンと対峙した時ですら無かった。


獣人として召喚された為なのだろうか。

生存本能が物凄い勢いで警報を鳴らし素人の僕ですら

絶対に関わっちゃいけない人種だと解る。


それは他のスラムの住人達も解っているのだろう。

一癖も二癖もありそうな柄の悪いゴロツキや露店商、

女も子供達も一斉に、その人物に頭を下げる。

そんな光景を見れば馬鹿な僕でも解る。

この男がラド・バベルだと。


「京香、そいつ等が例の勇者か?」


「そうみたい。バベルを捕まえに来たんだって」


それを聞いたバベルは一層鋭い眼付きで勇者を睨む。


「勇者って事は、同郷だろ?俺が言っている意味解るよな?

 つか、何で獣人になってんだ?お前」


「そ…それは、僕も…解らない…です」


バベルは、ふ~んと気にもしない感じで煙草を取り出し

火を付ける。


「お前、俺わ捕まえに来たんだって?何故だ?」


バベルが不思議そうに僕に聞いてくる。

何故って…そりゃあ、こんだけ悪事に手を染めてるんだから

当たり前じゃないか!何言ってんだ!?


「召喚勇者って事は何らかの能力があんだろ?

 なら、もっと自由気ままに欲望に忠実に動けば良くないか?

 何を好き好んで馬鹿正直に悪人退治なんて馬鹿な真似してると

 聞いてるんだよ」


「だ、だって…僕は勇者として召喚されたから…」


うぅ…怖すぎる…。この男と喋っていると喉元に刃物を

突きつけられているみたいな錯覚に陥る。

魔力感知も試みたけど、バベル達は一切魔力を感じない。

そんな事って有るか?人間の子供ですら微量ながら魔力を

持ってるんだぞ!?

なのに、この連中は、それが一切無い!

一切無い状態で此処まで伸し上がってるなんて次元が違い過ぎだろ!


バベルは、ふぅ~と煙草の煙を吐きながら瀕死の状態の

ギルナを見た後に口を開く。


「で、この様か?」


そう言われ僕は何も言えなくなった。

バベルに会う前の僕は、チート能力で調子に乗っている転生者を

懲らしめてやろう程度でしか思って無かった。

周りにチヤホヤされて可愛い仲間達に囲まれて……。


調子に乗っていたのは僕の方だった。

殺す覚悟も無くチート能力を手に入れて有頂天になっていた。

その結果がコレだ。


「努力もせず犠牲を払わず手に入れた巨大な力で

 勘違いしてたか?

 俺は強くなったんだって」


「でも…銃…。銃だってチート武器じゃないか!

 こんな異世界で剣と弓ぐらいしか武器が無い人達を

 相手にしてさ!アンタだって充分、勘違いだろ!!」


ついカッとなって言ってしまった。

でも事実じゃないか!この世界で銃なんて卑怯だろ!


「確かに、そうだな。だが、俺達は元の世界でも

 これで戦い生き延びて来た。

 お前みたいに、この世界でいきなり力を授かった訳じゃない。

 銃だって素人じゃ当たらん。整備だって訓練をする。

 俺の部下達は、全てを犠牲にして来たんだ」


バベルは徐々に語気が強くなる。

そんな状態なんて殆ど無かったのか近くに居る

獣人の少年が驚愕の表情に変わっていく。


「銃がチートだと?巫山戯るな!

 この世界が、どれだけ恵まれていると思ってる!

 魔法で傷が回復するし振りかければ瀕死の怪我でも

 アッという間に完治する。

 俺達の世界じゃ、そんな物は存在しない!

 硝煙と血肉が腐った匂いが充満し爆撃が雨の様に降って来る

 戦場を血塗れになりながら仲間の屍を踏み越えて

 戦い生き延びて来たんだ!!

 貴様の発言は俺の部下を侮辱する発言だ」


「ヒッ!?」


余りの剣幕に、声が漏れ出し膝がガクガクと震える。


ヤバイ…ヤバイ!ヤバイ!!

何とかしないと!このままじゃ間違い無くギルナは

殺される。

くっそ!俺の馬鹿!!何で、あんな状況で馬鹿な事を

言うんだよ!!

こうなりゃヤケクソだ!どうせ、このままじゃヤバイんだ!


「スキル【瞬間転移】!!」


セータの姿が一瞬で消え倒れているギルナの前に現れる。

それに気付いた剣崎が一瞬で拳銃を抜くが、もう遅い!


そのままギルナを抱き抱え直ぐに転移して仲間の所に戻る。

よし!上手くいった!後は、仲間達と一緒に転移して撤退だ。


「…セー……タ…」


か細い声が僕の耳に届く。


「大丈夫だ!ギルナ、絶対に僕が助け…」


ダァーーーーーーーーーーーーーンッ!!


そう口に出そうとした瞬間、一発の銃声が鳴り響く。

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