バベルの世界「化猫」
城内に爆発物を仕掛け見事爆発させた
同時期に貴族街と平民街に支部を置いている
冒険者ギルドと商業ギルドも爆炎に包まれていた。
「一体、何が起こった!?」
「いいから、火を消せ!!他の場所に燃え移っちまうぞ!」
冒険者ギルドと商業ギルドのトップ達は
慌ただしく部下に指示を出しているが
炎は一向に消える気配が無い。
それどころか燃え盛る炎に水を掛けると
更に燃え上がる。
その光景を遠目から眺めている暗殺者のリーとツヴァイ。
そして、ジャンフォレスト・キャットのノルウェ。
今回のギルド爆破事件の実行犯だ。
「にゃはは!滑稽じゃのう。水を掛ければ消えると
思うとるわい。あの人間達が、そんな優しい筈無い
じゃろうが」
まぁ、こちら側の者達が解る筈も無いわな。
リー達が使った爆弾と言う奴は、ガストラが製作した
特別製と言っておったしの。
え~と、なんじゃったかな?
確か、ナトリウムとかカリウムを何ちゃらして
混合ジェルが、どーのこーの言って少量の爆薬で
製作した、お手軽ナパームだったか?
まぁ…儂には、あの人間達が言ってる事は良く解らん。
「恐ろしい威力ですね。あれだけ大きな建物を
小包程度の爆弾で火の海にするとは…」
「…ガストラ様の爆弾怖い。しかも水を掛けると
更に燃焼するとか悪魔過ぎる」
リーとツヴァイが、ガストラから渡された
小包ナパーム爆弾の威力に顔を引き痙らせる。
そうじゃなぁ~。確かに、小娘共が引くのも
解るわい。
ガストラの奴、物凄い軽いノリで渡しとったからの。
あんなもん、途中で爆発したら儂等が丸焼きじゃ。
ガストラに限ってそんなヘマしないと思うが……。
しっかし、魔法も使用せんで辺りを火の海にするとか
末恐ろしい人間じゃわい。
あれじゃあ、魔道士の連中も検知出来んし
好きなタイミングで爆発出来るとか質が悪すぎるわ。
あんな悪魔みたいな連中に眼を付けられた国は
終わりじゃな~。
ニンマリと笑いながら燃え盛る建物を見ていると
冒険者ギルドのトップが何やら冒険者達に指示を
出している。
「お前ら!此処は我々で何とかする!お前達は
城に行って報告をしてくれ!!
さっき城の方でも大きな爆発音が聞こえたが
もしかしたら人間達の奇襲かもしれん!
くれぐれも油断するなよ!」
にゃはは!ご名答じゃ。
流石ギルドのトップを任されている者じゃのう。
じゃが…にゃふふ、その城内に入る橋が有れば
良いがのう。
「先程、京香様から連絡が有りました。
橋を落としたそうです。ふふっ、愕然と
するでしょうね。
絶望に歪んだ愚か者共の顔も見たかったですが
残念ながら見る事も無いでしょう。
あぁ…我々に消される時には見れるでしょうか?」
冷徹な笑みを浮かべながら冒険者達を見るリー。
いやぁ~、怖い小娘じゃわい。
と言いつつ実際は儂も楽しゅうて仕方無いのう。
久しぶりの狩りじゃからなぁ。
「…移動し始めた。私達も行こう」
冒険者達が移動し始めたのを見計らって
リー、ツヴァイ、ノルウェは建物の屋根から屋根に
軽快に飛び乗り追跡する。
そうして、いくつかの屋根を飛び移っていると
冒険者達は近道をしようと裏路地を通り始める。
馬鹿な連中じゃのう。
あれじゃあ、襲ってくれと言っている様なもんじゃ。
もし、儂等の追跡に気付いて誘っているなら
対した者じゃが…見た感じ気付いてる者達も
いないの。
あんな道じゃあ長物を武器にしとる者達は
使い物にならんと言うのに軽率じゃわい。
少しは、あの人間達を見習って貰いたい物じゃ。
裏路地に入った冒険者達を確認すると
リーとツヴァイは、お互いに眼を合わせた後に
飛び降りる。
「ぐへっ!?」
「ぎゃひっ!!」
リーとツヴァイは、飛び降りた自身の自重と
加速で冒険者達の脳天に刃物を突き立てる。
「て、敵襲!!」
「斬れ!斬り殺せ」
冒険者達は、いきなりの襲撃に一瞬だけ慌てたが
直ぐに剣を抜き臨戦態勢に入る。
「遅いわね」
脳天に突き刺さった刃物を直ぐに抜き取り
駆け抜ける様な勢いで冒険者達の間合いに入り
首、心臓、肺を一突きし絶命に至らしめる。
その光景を見た他の冒険者達は距離を取る。
そして、その中でも一際巨体の冒険者が前に出て
斧を構えた。
「小娘の癖に中々やるな。だが、このA級冒険者
ジョルド・バーン様に掛かれば赤子同然よ!!
ガハハハハハ、ガハァッ!?」
口上を述べている最中だと言うのに、急に地面や
路地壁から鋭く太い針が何十本も突き出し冒険者を
串刺しにする。
「あれは、ノルウェ様の攻撃魔法…」
のそりとリーとツヴァイの前に姿を表すノルウェ。
「にゃはは!地針の威力は、どうじゃ?小童共。
しっかし…イカンなぁ、娘達よ。
お主等は既に5人狩ったのじゃ。これ以上、狩られると
儂の取り分が無くなるでな。
ちと、見とれ」
そう言うとノルウェの身体が赤黒く光、周囲の魔力濃度が
濃くなって行く。
「お、おい!あれって希少種の!?」
「ジャンフォレスト・キャット!!何で、こんな所に!?」
ノルウェの姿を見た冒険者達は激しく狼狽する。
しかし、当然だろう。
A級冒険者を瞬殺したのだ。明らかに格上の魔物なのだから。
「我が主、剣崎嬢に歯向かう奴等は消し炭じゃ。
稲妻!!」
ノルウェの身体が一瞬光ったと同時に目も眩む様な
閃光が走る。
ドカンッ!ズカンッバリィ!!と轟音が鳴ったと
同時に身体が消し炭になって倒れる冒険者達。
「にゃはは!歯応えが無いのう。これなら、主に付いていった方が
良かったかもしれんわい!」
その余りの破壊力に呆然とするリーとツヴァイ。
「出鱈目過ぎるわね……」
「……うん。そもそも、私達の周りが変。
強い者達が多すぎて私達が普通に見えてくる」
2人は、ハァ…と溜息を吐く。
にゃはは!そんな事無いと思うがのぉ。
この娘達だって冒険者で例えるならA級相当じゃ。
ただ、周りの連中が異質過ぎて目立ちはせんがな。
特に、主を含めた人間達は明らかに異常な存在じゃなぁ。
初めて主の剣崎に会った時は心底驚いたからの。
深淵の森で見かけた人間の女。
この世界で人間など恐れるどころか餌にしかならぬ存在。
じゃが、剣崎嬢は違った。
あの者と眼が合った瞬間、本能なのか頭の中で
警笛が鳴りっぱなしじゃった。
戦闘に成れば間違い無く儂が勝つのにじゃ。
こんな経験は初めてじゃったのぉ。
最初は付かず離れず牽制しとったが何やかんやで
バベル達の元に付いて行ったが……。
あの時、剣崎嬢を襲わなくて良かったと心底思ったわい。
そこに居た人間達は儂が知っている人間では無かった。
悪意と混沌。そして異常な狂気に満ちた人間達じゃった。
あれは、イカン!
本能で絶対に逆らうな!襲うな!と警告されたわ。
もし、襲ったら、この人間達はどんな手段を用いても
儂を殺す。
儂だけじゃなく近くにいる生物全てを巻き添えにしてでもな。
特に、バベルと言う男……あれは、ヤバ過ぎる。
戦いが強いとかでは無い。じゃが危険なのは解る。
今まで、散々儂を討伐しようとした者達を見てきたが
比べ物にならん程の重圧を放っておった。
そして、あの人間達と共に行動する様になって
こやつ等の狂気と悪意が本物だと解った。
小国を滅ぼした儂が言うのも可笑しいかもしれんが
儂自身が優しいと思ってしまう程、この人間達は
質が悪いし残酷じゃ。
何故なら儂は死も解放だと思っとるからじゃ。
死は全てを解き放ってくれる一種の自由。
じゃから儂は小国を滅ぼしても自由にしてやったと
考えている。
まぁ…滅ぼした国は儂を討とうとしたからってのもあるがの。
しかし、バベル達は生かさず殺さず搾取する。
勿論、敵は殺すがの。
じゃが、そうで無い者達は殆ど操り人形じゃ。
あれだけ相手の心を弄ぶ事が出来るなんて悪魔でも中々
出来る物じゃないわい。
そんな人間を見たら…にゃはは!どうにも
楽しくなって来てのぉ~。
この人間になら操られても良いと思った程じゃわい!
新しい驚き!血湧き肉躍る戦い!
こやつ等と居れば退屈する事無く楽しめると思ったのじゃよ!!
ましてや、この大国に喧嘩を売るなど最高に狂っとる!
じゃが、それが良い!!
心地良いのじゃ!!
この世界を引っ掻き回してくれる最高の人間達!!
儂は楽しみで仕方無いのじゃ!!
にゃふふ…と笑う化猫ノルウェ。
「ノルウェ様、機嫌が良いですね」
「にゃはは!これからを想像すると自然に笑みが
溢れてしもうてな。お主等もじゃろ?」
リーとツヴァイは、コクりっと笑みを浮かべ
頷く。
にゃははは!良いのう!良いのう!
儂同様に毒されておるようじゃなぁ~。
不敵な笑みを浮かべている2人と一匹は、
静かに闇に消えて行った。




