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異世界ブローカー  作者: 伍頭眼
102/248

バベルの世界「現実」

「……そん…な……」


目の前の光景に愕然とし力無く声を発する少女。


酷い状況を予想していたが王族として荒事を

知らないケイト王女の範疇を超えていた。

馬車が近づくにつれ、建物と生き物が燃える

匂いが漂い爆発の現場は正に地獄絵図と化していた。


慌ただしく動く衛兵、四肢が欠損し呻き声を

上げる獣人に下半身が吹き飛んだ我が子を

抱き締めながら絶叫している女性、黒炭に

なっている獣人、続々と神殿に運び入れられる

負傷者達。


今まで一度たりとも見た事が無い光景。

今まで一度たりとも感じた事が無い異常な雰囲気。


その空気に当てられたのか、はたまた匂いに

やられたのかケイト王女は胃液が逆流してくるのを

感じ王族としてのプライドなど考える余裕も無く

中身を吐き出した。


「うぐっ!?…うえぇ…ハァ、ハァ…ガッハッ」


「「「ケイト様!!」」」


異変に気付いたリヒト率いる騎士団は自分達の

マントでケイト王女を囲い視界を遮った。


「ご…御免なさい…リヒト。他の者達も…不甲斐ない私を

 許して下さい」


「ケイト様は、誰よりも御優しい方なのですから

 この様な光景を見れば仕方ありません」


涙目になっているケイト王女の口元を優しく

拭うリヒト。

そこに、屈強な騎士とは違う装備を装着した

男性が近づいて来た。

見た目からして軍の兵士の様だ。


「リヒト団長!探しました!私、此処の現場を

 指揮しております。

 被害の報告に参りました!」


ビシッと敬礼をする兵士にリヒトも騎士の敬礼を返す。


「それでは、御報告致します!

 現在、軍の兵士と衛兵で負傷者の搬送を続け、

 治癒療法士を総動員して手当を行っておりますが

 此れほど大規模な爆発は類を見ない為、

 人手が足りない状況です!」


「騎士の者達は?現場を見ているが

 見当たらないが」


その言葉に報告をしに来た兵士は顔を曇らせる。


「そ、それが……その、爵位を持たない方々は

 尽力的に行動しているのですが…あの…、

 爵位を持つ者や貴族の御子息方は、この状況に

 怯んでしまい救助活動を…拒否されてしまいました」


兵士の言葉に思わず自慢の耳を疑った。

確かに、騎士団には貴族出身者や高位な位の親を

持つ者達が多数居る。

その者達は、修練も録にせず女性の尻ばかり追っていたり

横暴な態度を取ったりと度々問題を起こしていた。

隊長達が咎めようとすると必ず貴族等から横槍が入り

眼を瞑るしかなかったのだが……此処まで腐っているとは…。


リヒトは、怒りと情けなさで唇を血を流す程噛み締める。


その光景に兵士は狼狽するが、リヒトに報告の続きを

指示され何とか平静を保つ。


「現在まで確認されている死者が600名を超え、

 負傷者は1000名以上です。

 行方不明者も数多く居る為、下手をすると

 この区域だけで1000名以上り犠牲書が

 出る可能性が有ります」


「ま、待って下さい!此処だけとは、どーゆう事ですか!?

 まるで他にも被害が出ている様な言い方ですが!?」


ズイっと急に出て来たケイト王女に兵士は激しく動揺し

直様、跪き頭を下げる。


「今の状況で、その様に畏まる必要は有りません!

 それよりも、他にも被害が!?」


兵士の話によれば同様の爆発は三ヶ所。

現在我々が居る貴族街と平民街の中間区域と

貴族街の中心区域、それと平民街の外れの区域で

同時に爆発したらしい。


「特に、我々が担当している区域が最も悲惨な

 状況です。一番賑わっている日中での爆発でしたので…。

 それと、貴族の方々も甚大な被害でして、

 魔道士の方々が爆発の原因を現在調査しておりますが、

 魔力を用いた戦術魔法では無いとの事です。

 それから、現場には、コレが散乱していました」


兵士がリヒトに手渡した物は、小さな鉄の玉だった。


「これは?」


「多分ですが……爆発と同時に炸裂した物かと。

 数は不明ですが至る所に散乱し建物や死者の身体に

 めり込んでいました。

 推測ですが爆発による殺傷能力を底上げしたのでは…と」


兵士の推測を聞きケイト王女もリヒトも他の団員達も

血の気が引いていく。


「こんな……こんな物まで使用するのですか…

 あの人間達は…」


酷すぎる…。

特定の者を殺める武器では無く無差別に大勢の

命を刈り取る武器。

リヒトが率いる騎士団や国軍が使用する剣や

魔法とも大きく違うのだ。


魔法以外で、あの様な爆発を何処でも起こせるとしたら?

魔力を用いらない為、探知は不可能。

そんな攻撃が、また仕掛けられたら?


そう思った瞬間、背筋が凍る。 


「…リヒト」


「はい」


ケイトは鉄球を握り締めながら爆発現場を

真っ直ぐ見つめる。


「この国は…今まで人間達を奴隷とし酷使してきました…。

 人間と言うだけで見下し、嘲笑い…娯楽の為に……

 命を奪う様な事まで、まかり通って来ましたね」


「……はい」


「私は、どうして此処まで人間達を迫害するのか

 解りませんでした…。出来る事なら救いたい…

 そう思っていましたが私には出来なかったのです。

 …そんな力も無くただ傍観し知らないふりを

 して来ました。

 スラムに住んでいる民達の事も……あんなに

 酷い環境で暮らしてるなんて知らなかった。

 これは……報いなのかも知れないですね……」


この国は、本当に人間達に酷い事をしてきた。

それは、この国に住む獣人や亜人なら誰でも

知っている現実だ。


「今まで、私は人間を怖いと思った事など有りません。

 非力で弱い存在。守らなければ壊れてしまう者達だと

 思って来ました。

 でも……今日、初めて…怖いと思いました。

 心底恐怖したんです。

 あのバベルと言う人間達に会って初めて奴隷の

 人間達の気持ちが解りました。

 いつ殺されてしまうか解らない恐怖…。

 こんなに怯えながら生きていたんですね……人間達は」


まさか人間に怯える日が来るなんて夢にも思わなかった。

いえ……思わなかった時点で私は平和ボケしていたのかも

しれませんね。

あれだけ酷い事をしていて何も無かった事の方が

不思議なのです。


「人間達の気持ちは解ります…。ですが!

 この様な暴挙は到底、許されない!!

 私は、バベル達の討伐を父に要請します!

 そうなれば、多くの兵や騎士達が傷つく事になる。

 リヒトは……許してくれますか?」


ケイトは、リヒト団長に振り向き真っ直ぐ眼を見る。

そして騎士団とケイトの言葉を聞いていた兵士達が

跪く。


「「「「我々は、国の盾で有り剣で有り全てを捧げます!」」」」


その言葉を聞き決心したかの様に城に向かうケイトであった。




◇◇

◇◇◇




一方その頃、ガル達はと言うと主要メンバーを

集め今までの経緯と今後の話し合いをしていた。


「と言う訳で戦争だ」


何が、と言う訳で戦争だ、なんだよーーー!!

いや、俺の事を助けてくれたのは感謝してるけど

街を吹っ飛ばすなんて聞いてねぇ!!

もーーーーーう!!マジかよ!!


「いやいや!!バベル!戦争って相手は数万にも及ぶ

 軍勢だぜ!?

 なのに、俺達は全部引っ括めても700ぐらいだぞ!

 しかも殆ど魔物で構成されてる!

 いくら個人が強くても数には敵わねぇよ!」


だって、そうだろ?

いくらボス達や魔物達が強くても数万の相手なんか

出来っこねぇじゃん!!


「ははっ!確かに数では敵わない。だがな、

 お前の周りに居る連中は普通の兵士か?」


周りを見渡すと、ボス、ガストラ、京香を筆頭に

戦闘訓練を積んできた閻魔に山王。

それに、リー、ツヴァイに魔法特化のノルウェが居る。


「前にも言ったと思うがボス達は元特殊部隊出身だ。

 特殊部隊ってのは少数精鋭。

 何も正面切って戦争する訳じゃないんだぜ。

 戦争ってのは時代と共に変化する。

 偵察・ゲリラ・破壊工作・暗殺に陽動……

 やり方なんて、いくらでも存在する。

 そもそも、特殊部隊ってのは多勢に対抗する兵士だ。

 そんな戦争のプロが、お前の前に3人も居るんだぞ?

 実際、お前だって助け出せたろ?」


むむむっ!確かに、そうだけど!そうなんだけども!!


うーんと唸っているガルに溜息を吐きながら

バベルが声を発する。


「まぁ…作戦内容を聞け。どの道、避けて通れねぇんだ。

 ボス、説明を」


そう言うとボスが説明し始める。

その内容は、余りにも恐ろしい内容だった。

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