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サンタの罪

作者: 木上冷

今年もまた、クリスマスがやって来る。ここでひとつ僕の昔話を聞いて貰いたい。


白く美しい水の結晶が、ネオンで彩られた、眠らない繁華街へと降りしきる。街では、若い男女が、聖夜の一瞬を過ごす。

決して彼らはイエス・キリストの生誕を祝らない。ただ彼らはクリスマスという甘い幻想に浸っている。

僕は、ただこの空から、あくまでも商業的なこの時期を迎えるこの国にとって、全くありふれた光景を、ただ眺めていた。

ただ祈りを捧げて過ごすクリスマスを過ごせないこの国を、哀しく思った。


その街の中央に・・・マンションが大きくそびえ立つ。僕の今日の役目は、そこに住む子供達に、贈り物することだ。

マンションに近づく、近づく、近づく・・・。いまどき煙突から入る昔気質のサンタクロースは流行らない。そもそも煙突がない。

加えて、僕等のサンタクロース業界は、新規参入の規制緩和が始まってからというものの、値下げ競争に巻き込まれている。

僕の会社は、結構な老舗のサンタクロース代行業をやっていたが、価格競争に負けて、大幅人員削減。給与もカットされて、大変厳しい。

それに加え、僕等の日本支社は、少子化が拍車をかけていて、顧客が減少。だから煙突から入るような古くさい事をしていたら、時代の波に乗れないのだ。しかしながら、サンタクロースは波乗りが下手である。


それはそうと、僕はすぐさまソリから工具箱を取り出した。ちなみにソリはプラスチック製。量販店で\980。

工具箱の中には、ピッキングに使うような細かな工具が入っている。それを使って窓をこじ開けるのだ。さながら泥棒。

決定的に違うのは、物を盗るのではなく、おいていく事だけかもしれない。


その間わずか1分半。僕の手にかかれば、たやすいことだ。そのまま家の中に入らせて頂く。居間では、クリスマスパーティーを開催したのだろうか、にぎやかな飾り付けとともに、食器が残っていて、そこには楽しかったであろうクリスマスの空気が、少なからず残っていた。

外の、年々煩雑となるクリスマスの一方で、こんな穏やかなクリスマスを過ごす家庭もあることに、僕は、少しの安堵を感じるのである。

僕はそんな家庭に育つ子供には、うんとプレゼントをあげようと、子供部屋へと進入した。そこにはすやすやと眠りの世界にいる、女の子がいた。

僕は、大きな白いバックの中から、プレゼントを取り出した。そんな君には特大のぬいぐるみを進ぜよう。僕は彼女の枕元へと、忍び寄った。

ところがその時、彼女が目を覚ましそうになる。これは危機的状況だ。サンタは姿を見られてはいけないのだ。


「う〜ん。・・・うわ、なんだこのおじさん。ママ〜変な人がいるよ〜!」


「きゃっ!乃笛子ちゃん、こっちへ早く来なさい!」

彼女のママはすぐに警報機を鳴らした。今はやりのセコムか何かだろう。俺はどうすることもなく、狼狽し、立ちつくした。


ジリリリリリリリリ・・・・・




翌朝の新聞の一面は、俺の事で埋め尽くされた。


 サンタクロースに扮した男、住居不法侵入


昨日25日午前0時頃、○○市○○町のマンションに、男が侵入しました。

住居侵入の罪で逮捕されたのは、住所不定、自称サンタ業の、三中(みなか) 里予(さとやす) 容疑者(32)。三中容疑者は・・・・



サンタを信じられなくなったこの社会の中で、今年もまたクリスマスがやって来る。

あなたはこのクリスマス、どう過ごすだろうか。




くだらなくて申し訳ございません。

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