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異世界ファンタジーに転生出来たと思ったのに

作者: 平野とまる
掲載日:2015/01/16

「俺はさ、妹を庇って死んじゃった訳よ。

 突然車が突っ込んできてさ、何かを思うより前に大切な妹を庇えた事そのものは良かったと今でも思っているしそれは良いんだ。

 ただ、まだ俺だってこれから大学生になってエンジョイするぞって矢先だったから、勿論未練はあったさ。

 妹も助けて自分も助かるなら滅茶苦茶格好良かったのだろうけど、まぁそれは仕方ない。

 んで、目を開けてみるとどうも様子がおかしい、目も耳も無茶苦茶悪くなった上に思考も覚束無いんだからな。

 物心付くまではそりゃもう高熱ばかり出す病弱な子供だった訳よ。

 その辺りは両親に感謝だな、くっそ田舎の平凡な家庭のしかも3男なのに見捨てず育ててくれたんだから。

 んでまぁ、物心付いて時折り知恵熱みたいなのが出るけど、多少は体を動かせるようになっていろいろ知って行くと。どうもこの世界は前世で憧れたファンタジーの世界じゃないかって気付く訳よ。

 魔物はいるし魔法もあるしで。まぁ田舎だから大それたもんは見れてないけどさ。

 ただ、そんな大変な世界なのに愛情込めてくれる家族には恩返ししたいと思うじゃん?

 んで、冒険者とかは時折り立ち寄ってたから、色々話を聞いてさ。

 しかも、前世ではアニメとか小説とか好きだった訳で、これ異世界転生したんじゃねってはっするした訳よ。

 冒険者の人にも色々教えてもらう時、割りと筋が良いって言ってくれるもんだから、勘違いもした訳だよ。

 後は、俺って別に頭良くない自覚はあるからさ、前世のあれこれを活かせる気も全くしねーし。

 じゃぁ、冒険者になって稼いで皆に楽して貰おうと思った訳だよ」


「まぁ、実際筋は良かったんじゃない? 賊に襲われていた私を助けてくれた訳だし」


「それに付いては寧ろ俺のが感謝しているよ、まさか伯爵家令嬢だなんて思いもしなかったし。

 その上こうして雇ってくれて良いお給料を貰っている訳だしさ。

 実家への仕送りも出来て万々歳だから、だから寧ろ勘違いしていたんだよ。

 ここは異世界ファンタジーの世界だって!」


「残念だったわね、乙女ゲーの世界で」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ! 本当に何でこうなるんだよー!」


 呆れたように相槌を打っていてくれた雇い主の前で、元々失礼極まりない行為をしていたと言うのに叫んでしまう俺。

 いや、まぁ彼女も実は転生者だって知ったから、無礼講だと思って欲しい。

 一応この世界では俺の方が年上だし……、いや、今は混乱しているから許して欲しいが正しいな。

 ぶっちゃけ普段ならともかく、テンパってんのになれない作法を守れるかってー話だ。


「まぁ、良かったんじゃない? 気付けて」


「全然良くない!

 と言うか、何なんだよ戦う乙女ゲーって」


「男であるあんたは知らないかもだけど、流行ったのよ。

 普通に育成RPGとして面白い上に恋愛パートだって面白かったんだから」


「知るわけねーよ!」


 俺の叫びはさぞ悲痛な物になっている事だろう。

 雇い主の少女はやれやれと言ったように苦笑いを浮かべて口を開く。


「まっ、別にあんたの事情なんてどうでもいいわ。

 とにかく、助かったわ」


「あ、その件はちゃんと報酬頂戴。

 家族に仕送りするからさ」


「……その切り替えの早さも冒険者と護衛を兼業するコツなのかしらねぇ」


 そりゃメインは冒険者のつもりだからさ。と言うのは流石に飲み込む。

 どうも暫くは護衛としてずっと一緒にいなくちゃならないようだからな。


「それはそれとしてだ。

 姫の役割が悪役令嬢で超嫌味な役で、しかもゲーム内での扱いも悲惨なのも理解した。

 ってか、姫とか前世の記憶あんのに恥ずかしくねーの?」


「うっさい! この世界ではそれが当たり前だったの!」


「あ、ごめん」


「謝るくらいなら言うな!」


 どうやら怒らせてしまったらしい。

 次からは気を付けよう。


「まぁ、そう言う意味では流石俺の妹だな。ヒロインだもん」


「はぁ、本当にシスコンよね」


「そりゃ見た目が完全に変わってんのに、雰囲気だけであいつと気付けるほどにはさ。

 それでも、流石に妹に求婚されりゃ戸惑うし、しかもあいつ攻略キャラ達に対して着々とフラグ立てて誰にするか悩んでたとか。

 俺マジでどうすんだよ? 王太子含めた国の有力貴族の跡取り達敵に回すとか、普通に死ねるんだけど」


 がっくりと項垂れる俺に、はぁっと深い溜め息を吐き出す雇い主。

 なんだよ、感じ悪いな。


「そこが分かんないのよね。

 逃げ出す状況が揃ってるじゃない。

 原作ヒロインの子はとても大切に思っているけど、あくまでも妹としてで現在の家族と同位置。

 国から睨まれようと冒険者だから、この国を去ってある程度離れた国に行けば普通に生きていける。

 仕送りだって冒険者ギルドを通じれば出来るでしょ? 今も利用しているみたいだし」


「あ? おりゃぁ恩知らずになるつもりはないんだが?」


「何それ?」


 本当に不思議そうな顔をする雇い主。

 おいおい、まじか。


「あのなー、姫がこれから通う事になる学園での護衛引き受けただろうが」


「あー、別に事情が事情だし、逃げ出したとしても怒らないわよ。

 私は私で何とかするつもりだし」


 あ、今本気で言ってんな。

 そう気付いたら、なんか腹が立ってきた。


「だから、恩知らずになるつもりはないんだって。

 拾ってくれて俺は心から感謝してんだぜ? ちゃんとお返しさせてくれよ。

 それに、俺が居なくなったら姫に矛先が行くのが目に見えているじゃないか。

 俺を取られたとかで、優奈ゆうなだってなんか怒ってたし」


「そりゃぁ、ただでさえ警戒していた相手だって言うのに、愛しの相手を独占していたら怒りもするでしょ。

 ただ、あんたの話を聞く限り話の通じそうな子だから、其の辺は上手くやるわ。

 自分の不幸フラグを折る為に伊達に努力してきた訳じゃないんだから」


 あーもー、こいつ分かってねー!


「だから、そこを心配してんだよ。

 恩人の可愛い女の子が苦労するとか、少なくとも俺には見過ごせないね」


 はっきり言い切ってやると、ピタッと固まる雇い主。

 どうした? そんなに意外だったか?


「……可愛い女の子?」


「そりゃ姫だって自分の見た目自覚あるだろ?

 えっ、それとも前世の頃からそんな美人だったのか?」


「だ、黙りなさい!」


「んだよ、事実を言っただけなのにそんなに顔真っ赤にして怒らなくとも良いじゃんか」


 ギロリと俺を睨む雇い主に、これはさっさと話を切り上げて退散した方が吉と判断する。


「まっ、俺も出来る限り守るからさ、姫は学園生活を満喫してくれ」


「年下に言われたくない!」


「ははは、今は俺の方が5つも上じゃねーか。

 さっ、それじゃ失礼します」


 とりあえず、雇い主が落ち着いたら改めて話そうと考えつつ部屋を出る為に移動する。

 と、雇い主から声を掛けられ振り返れば、何やら躊躇を見せる雇い主。

 いつもガツンガツン言いたい事を言うのに、珍しい。


「その……ありがとう。宜しくね」


「ああ、任せとけ」


 しおらしい雇い主にそう応える。

 いやー、たまにこう言う風に素直に礼を言えるのは良い事だな。

 そりゃ、普段多少きつくとも愛されるってもんだ。

 俺だって、雇い主――姫の事は心から大切に思っているから。

 だから、次は絶対に勝手に死んで負い目を持たせたり何かしない。

 そのせいで優奈だって自棄になっていたみたいだし。

 俺も姫も守り切ってみせるよ。その為にも、もっと鍛えなきゃな。

 まだまだ俺より実力が上の冒険者達も多いし、彼彼女らから知識や技を今のうちに盗んどかないと。

 優奈の事だって心配だし。それに、必死になっとかないと俺自身の命も危ないだろう。

 さて、いっちょ頑張りますか。

 姫も優奈も俺の妹みたいなもんなんだし、お兄ちゃん頑張るぜ!

 ご閲覧誠にありがとうございました。

 悪役令嬢物でこの2人のどちらかを主人公で長編で書こうかと思っていた設定ですが、多分書く事はないので短編だけでもと書いてみました。

 少しでも楽しんで頂けたのでしたら幸いです。


 タグについてですが、それだけでネタバレになってしまうので、入れるか非常に悩みました。

 ただ、ブームもあり悪役令嬢や乙女ゲーが食傷気味な方も多いと思いまして、回避したい方の為に入れました。

 ご了承頂ければ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] この後どうなるのか気になります。 姫のこれまでの努力も今後の展開もよくある乙女ゲー的に気になりますし 主人公のこれまでの勘違い人生の紆余曲折も転生もの・冒険もの的に楽しそうです。 妹の自棄や…
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