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愛のためのチェーンソー 中編

 前回のあらすじ

 日下はおっぱいがデカかった。そして後輩の純はおっぱいフェチなので揉みしだいた。




 最近の僕は端的に言って幸福だった。


 何故って? それは彼女――翼ちゃんのおかげさ!


 マジストライクど真ん中な容姿を持つ、翼ちゃん。

 体型もスラっとしていて、極めて僕好み。

 そんな彼女が、毎週日曜日、僕の家に、やってくる! ヤァ! ヤァ! ヤァ!

 そして、君は僕から生えているこの長いモノを口に運ぶんだ……。


――そう、この長い、ヒゲをね!


 ムシャムシャ……

 

 ふふ。実に美味しそうに食べている。


 どういう理屈なのかは知らないけれど、彼女にとって、ヒゲは剃ったあとの単体よりも、直に生えている方が美味しく感じるらしい。

 まあ、食べ物って基本的に採れたてが1番だよねってことで無理やり納得したよ。

 だからこうやって、直接僕の顎から食べさせてあげることにしたんだ。


 え、痛くないのかって?


 それが、彼女の歯はヒゲを食すのに適した形へと変化していたんだよ。

 カミソリっぽく鋭利に尖っているんだ。

 因みに、最初に喰われた時に血が出てしまったのは、一度に無理やり引きちぎられたからだ。

 つまり今みたいにゆっくりと少しずつ食べてもらえば、全然痛くないってわけさ。

 あと、舌噛んだらエライことになりそうだな、と思ったけど、なんか舌は舌で異様に頑丈に変化しているんだって。

 これも『悪魔』の仕業なんだろうね。全く、酷いことをする。最低だ。


 ペロッペロッ


 彼女が既にツルツルになった僕の顎を舐め始めた。


「おいおい。くすぐったいよ」

「――! ご、ごめんなさい。私ったら、はしたない真似を……」


 はは。耳まで赤くなっているよ。よっぽど美味しかったんだね。可愛いなぁ。

 前言撤回だ。『悪魔』は最高の仕事をしてくれたよ!


「……ご馳走様でした。仙人さん」

「お粗末さまでした。このあとどうしようか」

「帰るわ」


 即答ですか。

 

 二人の関係が始まって一ヶ月ほど経つけど、未だ彼女はイマイチ僕に心を開いてくれない。

 あの時は泣いてお礼を言っていたのになぁ。

 う~ん、僕ってひょっとして、信用できない雰囲気を醸しだしていたりするのだろうか。

 こんなに紳士的だというのに。


「そう……また、来週の日曜でいいのかい?」

「ええ。週一ペースだと何とか暴走せずに済むことが分かったしね」


 もちろん、今の関係も十分過ぎるほど幸福なんだけども。

 そろそろ、もう少し距離を縮めたいな。

 でも下手にデートとかに誘ったりしたら、弱みにつけ込んでいる感じになりそうで怖い。

 まあ、焦る必要もないんだけどね。


――だって、いずれは僕のモノになる運命なのだからさ。


 ピンポーン


 唐突に、玄関のチャイムが鳴り響いた。

 僕の住むボロアパートを尋ねる人間なんて、宗教の勧誘か新聞の売り込みかN○Kと相場が決まっている。

 ここは無視の一択だ。


「あ、お客さんかしら。調度良かった。じゃあ、私はこれで失礼するわ」

「え、あ、ちょっと……」


 翼ちゃんは既に帰り支度を済ませて、靴を履いていた。

 彼女って、いちいち行動が早いんだよなぁ。

 ああ、そんなこと考えているうちに、もう扉を開けてしまった。


「……あれ? ここ、仙人さんの家じゃないんスか?」

「……ええ。そうだけど」


 どうやら相手は女性らしい。宗教か。

 っていや、待て待ておかしいぞ。

 何で僕のアダ名を知っている?


「ああ、良かった。てっきり間違えちゃったかと。あれ、じゃあ、あなたはひょっとして……」

「彼女、ではないわよ。そうね……只の友人」

「……怪しい」

「は? ちょ、何なのよあなた?」

「失礼しまっス」


 強引に部屋に入ってきたのは、小柄で貧相な体つきをした女だった。

 高校生? いや中学生かな。何だか妙に大きなリュックサックを背負っているし。

 そして、こんな知り合いはいない。


「……西高1年。白江純。日下愛さんの中学時代の後輩っス」

「日下の?」


 ああ、そういえば以前、「今でも付き合いのある可愛い後輩がいる」って言ってた気がする。

 

「そう、まさしくその後輩っス」


 可愛いと言われたせいか、何だか誇らしげな顔だ。

……あれ? 今僕、口に出したっけ?


「まあいいや。で、その後輩が僕に何の用だい?」

「その前に。この女性はあんたとどういう関係なんスか?」


 そう言って白江は、どうやら帰るタイミングを逃したらしい翼ちゃんを指さした。


「だから、さっき言ったわよね。只の友人……」

「白江は、このモジャ男に聞いているっスよ!……って、生えてないし! ああ、そういや月曜にはツルツルになってるってヒノ先輩言ってたな……」


 何だよ、モジャ男って。日下がそう呼んでいるのか?

 あいつ、今度説教だな。


「白江が勝手に呼んでるだけっスよ。つーかさ、あんた、何でそんな上からなんスか」

「……君、何で僕が考えていることが分かるんだ?」

「あんた、この翼って女と身体の関係あるんスか」

「は、はあ?」


 まあ『身体の関係』と言えなくもないけど……ってそうじゃなくて


「さっきから、君おかしいぞ。それより今の質問に……」

「許さないっス」

「は?」

「こんな奴にヒノ先輩は……」

「なんだよ、日下がどうしたっていうんだよ!」


 それには答えずに、白江は背負っていたリュックサックのチャックを背中越しに開き、中からなにかを取り出した。


「な……んだ、よ、それ」


 彼女が手にした『それ』は


 小型のチェーンソーだった。

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