痛いの(お題:傷だらけの洞窟)
僕の田舎は本当に田舎だ。
親の実家という意味ではなく、山があって森があって暗い。
一人では絶対に行くなとお父さんにもお母さんにも言われていた。
でも田舎にいったってナニもなくてつまらない。
ゲームは通信できないからダメだし。
大人達がお話に夢中になっているから、僕はこっそり家を出た。
木がたくさんあって暗い。
歩くとサクサク音がなる。
そして僕は穴に落ちたのだと思う。
気がついたら周りは真っ暗で上を見上げると空が見えたから。
どうしよう。
段々と周りが見えてきた。ぺたぺたと触るとひっかき傷のようなものがいくつか。
「なんだろう」
その傷に触れてみた。
「痛いっ触らないで」
「誰!?」
女の子の声が聞こえた。
というか僕の目の前に女の子がいた。
僕と同じくらいの女の子。暗いからよくわからないけど、なんとなくボロボロっぽい雰囲気。
僕にのばしてきた腕には傷があった。
「みんな引っ掻くんだもん」
「ヒドイ傷。君も落ちちゃったの?」
女の子は返事をしなかった。
僕はナニももっていなくて、なにもできないから、ただ手を握った。
「痛かった? 大丈夫?」
何度きいても返事をしてくれなかったけど、僕は何度も話しかけた。
気がついたら僕は田舎の家の中にいた。
大人達が怒っている。
「心配させて!!」
僕はどうやって出てこられたんだろう。
「穴に落ちたんだ」
それを聞いて大人達はびっくりした。
あの穴は洞窟に繋がっていて、一度落ちたら出られないらしい。
もがいてもがいても。ひっかいても。
僕は穴の横で寝ていたから、大人達は僕が穴には落ちなかったと思っていたらしい。
僕は助かった。僕は女の子の傷を思い出していた。
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