じゃじゃじゃ(お題:運命の音)
ジャジャジャジャーン
「ベートーベンは「運命はこのようにして扉を開く」といって交響曲第5番を作曲したらしい」
音楽教師はもっともらしく言うけれど、ジャジャジャジャーンといえば「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」だと思う。
「ならその飛び出たジャジャジャジャーンも運命からきているのだ。ジャジャジャジャーンに影響を受けていない効果音はない」
ジャジャジャジャーンが鳴り響く音楽室で、なぜ差し向かいで音楽教師と座って話をしなければいけない?
いまは放課後。みんな部活やったり家に帰ったりしてますよ、センセイ。
「おーまーえーなー! こっちも前代未聞だよ。音楽の補習なんてな! 何やっていいかもわからないんだ。バカタレ」
わたしの両頬の肉をつまんで、横にびろーーーんと伸ばすのは止めてもらえますか、センセイ。
頬肉がジャジャジャジャーンになってますよ。
センセイは手を離した。ああ、痛かった。頬をすりすり。
なんで補習を受けているかといえば、音楽の時間をほとんど休んでしまったから。
なんで休んでしまったかというと、学校でセンセイと2人になるチャンスを作りたかったから。
その他大勢と一緒になってどうして授業受けなきゃいけないのよ。
どうせ単位をもらえるのなら、補習を受けて2人きりの方が2度おいしい。
BGMにロマンチックなクラシックでも流してもらえたら。
期待していたのに、音楽室はジャジャジャジャーン。
「あんまり露骨なことすんな」
バレてました?
「バレバレだ。ヒヤヒヤするわ」
大丈夫センセイダサイから。
「俺、ダサいの?」
超ダサイ。人気教師ランキングにエントリーされないくらいダサイ。
「ああ、そう」
センセイはガックリする。
でもみんなはビックリするよ。
半年後の卒業が楽しみ。
「ね、センセイ」
高校に入学して初めての音楽の授業。
教室に入って、センセイを一目見て、わたしは運命の音がきこえたの。
ジャジャジャジャーンではなかったけどね。
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