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ずっといっしょ(お題:どこかの動揺)

 突然、自分がどこにいるのか、わからなくなったらどうする?

 どこから来たのかも、どこに行こうとしていたのかも、全くわからないの。


 呆然と立ち尽くすわたし。

 心配そうにわたしを見つめる小太郎ちゃん。


「え……っと」


 わたしが戸惑う声だけでいつも察してくれる。


「いま、うちを出たところ。これから学校に行くんだよ」

「そ、そうだよね。そうだよね」


 高校の制服を着ているし、鞄も持っている。この道はたぶん通学路。


「小太郎ちゃん、いつもごめんね」


 わたしの『突発性どこにいるのか、どこに行こうとしているのかわからないで症』に救いの手を差し伸べてくれるのは幼馴染みの小太郎ちゃん。

 お隣さんで、気づいたらいつも一緒にいた。


 わたしがこんなんだから、小太郎ちゃんは目を離せなくていつもわたしたちは一緒に行動する。

 わたしはすっごく助かるんだけど、小太郎ちゃんはそれでいいのかしら。


「あのね、これ買ったの」


 鞄からインスタントカメラを出した。撮るとその場ですぐに小さいサイズの写真が出てくる。これで「どこから」を写して、どこへをメモ書きすれば、わからなくなっても大丈夫じゃない?


 あれ? 小太郎ちゃんの眉間にシワが。

 なんだか怒ってる?


「こんなのいらない。絶対いらない」

「どうして。これがあったら、1人でお出かけできるようになるよ。小太郎ちゃんにも迷惑かけない」

「迷惑じゃないし」

「迷惑じゃないの?」


 ドン! と足踏みした。


「前にも言ったよね。僕は小花ちゃんと一緒に行きたいんだよ。『突発性どこにいるのか、どこに行こうとしているのかわからないで症』なんか関係ないの。そんなのなくたって、一緒なんだからずっと! 絶対! これまでも! これからも!」


 スタスタ前を歩き始めてしまった。

 追いかけていいのかわからなくて、わたしは立ち尽くす。



「小太郎ちゃん!!」


 前を行く小太郎ちゃんの足が止まった。



「ここ、どこ!? どこに行くんだっけ!?」


 小太郎ちゃんは振り返った。走り寄ってきた。

 満面の笑みをたたえて。


「しょうがないなあ、小花ちゃんは。もう僕がいなくちゃ、どこにも行けないね」


 小太郎ちゃんはわたしを慰めるために、とびきり美味しい飴をくれた。

 この飴、美味しい。舐めると頭がポーッとするの。




文字数:991字

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