明日、養子縁組します(お題:男の家事)
「男だからって家事が苦手なんて理由にならないわよね」
「そうよ。女だって外で働いているんだから、男だって家のことをやってもらわないと」
午後二時。出先の喫茶店で女性の会話を耳にした。それはもう、もっともなご意見で。
ただ、今の世の中、取り立てて家事なんて必要だろうか。
古くは炊飯器に始まり
冷めた料理に電子レンジ
汚れた食器は食洗機
みじん切りが苦手ならばフードプロセッサー
ガスもIHも火加減調整もしてくれる
洗濯機は乾燥まで全自動
掃除機まで勝手に動くようになった
残った家事といえば。ああ、風呂掃除は面倒くさいな。掃除はまだまだ発展途上か。
その日は少しだけ残業して帰宅した。
「ただいま」
「おかえり。ご飯できてるよ。お風呂先に入るなら沸かそうか」
そうだった、湯を沸かすのも全自動だな。
うちは共働きでありながら、家事は妻がほぼやってくれている。
実は籍はいれていない内縁の妻だ。
「今日、『男の家事』について盛り上がってる会話をきいたよ」
「そんなの出来る方がやればいいのに。うちみたいに」
「俺だって家事くらいできるよ」
「言い方間違えた。気を悪くしないで『やりたい方がやればいい』」
「てっちゃんの好きなご飯たくさんだよ」
「あっちゃん、ありがとう。風呂はいってくる」
俺、てつやは、あつしからタオルを受け取って風呂場にむかった。
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