真剣と書いて、マジと読む。
「言っておくが、全部テメーのせいだからな」
「え?え?どゆこと??なんで私?」
ジルは慌てたようにアルベルトに詰め寄った。
頭の天辺でアルベルトの頬をぐいぐいと押しながら、なんでどうしてと繰り返す。
「ヤメロ」
アルベルトはジルの頭を鷲掴みにして、ウザったそうに押し返した。
ジルは負けじとその手を押し返す。
「ねえ、アル。私のせいってどういうこと?ちゃんと教えて!」
「…………」
「ねえねえねえ!教えてったら!!」
しばらく黙ってジルの頭を押し返していたアルベルトだったが、やがて我慢も限界に達したのだろう。
「ていっ」
軽い掛け声と共に、ポイッとジルを投げ飛ばした。
「みゃッッ!」
コンコロリンと、まるで子猫のように床に転がったジルは、大きな瞳をキョトンと瞬かせた。
一瞬の出来事すぎて、何が起こったのか、さっぱり分かっていない様子だ。
てゆーか……。
投げるか?
フツー、女の子を。
「めんどくせーな」
アルベルトはぼそりと呟いた。
「最初からテメーがちゃんと生き返らせてりゃ、こんなややこしいことにはならなかったんだろーが」
「それは十分によく分かったわよぅ。だからやり直すって言ってるんじゃない」
ジルは可愛らしく頬を膨らませた。
アルベルトは静かに首を横に振る。
「残念だが、やり直しはできない」
「え?」
ジルはポカンと口を開けて、間の抜けた表情を晒した。
やや、間を置いて。
「う…ウソでしょう?ジョーダンよね?」
不自然に媚びるような笑顔は、きっと、冗談だと言ってもらいたいからに違いない。
だからジルは、
「嘘でも冗談でもない。一旦他人の魂が器に入っちまったら、元々の魂は昇天するしかねーんだよ。今更そいつを殺したところで、もう二度とアイツは返ってこない」
淡々と説明されて、今にも泣きそうな顔をした。
「そっ、そんなのっ、やってみなくちゃ分からないじゃない!」
諦めきれないと必死に食い下がるジルに、アルベルトは出来の悪い生徒を見る先生のような目を向けた。
「この馬鹿女が。過去にそういう事例があるから言ってんだろ。
今までに誰も犯したことのない失敗だとでも思ったか?残念だったな」
「うそ……」
今度こそジルは、はっきりと絶望の色をその可愛らしい顔に浮かべた。
「気持ちは分かるが、受け入れろ。アイツはもう…どこにもいないんだよ」
「……イヤよ…そんなの……」
「………」
「ねえ、お願い!!ウソだって言って…?」
すがりつくジルをどうすることもできず、アルベルトは険しい顔で俯いた。
空気、重ッッ!!!!!
うをー…なんかいたたまれないんですけどー…。
お、俺は悪くねーぞ?
なんか気が付いたらワケの分からない事に巻き込まれていただけで、俺には何の非もない。てゆーかむしろ被害者だ。
なぁ、そうだろ?
誰かそうだと言ってくれ!