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名前はこりすぎると、逆にカッコ悪い。
「お前…名前は?」
「え?」
いきなりすぎて、こんなに簡単な質問なのに咄嗟に答えることができなかった。
ジルが怪訝な顔をする。
「何言ってるの?アルったら。勇者様でしょう?勇者ランスロッド様」
「いえ、俺の名前は鏑木真人です」
断じてランスロッドなどというふざけた名前ではない。
「カブラギ、マサト?」
不思議そうに小首を傾げるジルは、やっぱりメチャクチャ可愛いかった。
「なんですか、それ?新しい呪いの呪文か何かですか?ものすごく不気味な響きですね。禍々しさが伝わってきます…」
あ、分かった。
この子バカなんだ!
ものすごく可愛いけど、ものすごくバカなんだ!!
「ジル。お前、馬鹿すぎて面倒臭いから、少し黙ってろ」
「ヒドいわ、アルったら。バカだなんて」
ぷう、と頬を膨らませたジルは、アルベルトに無言で睨まれて、渋々といった様子で口を閉じた。
すげーな、コイツ。
女の子を堂々とバカ呼ばわりした。
あ、さてはコイツ、典型的なモテ男だな?
もしくは究極のKY。
「いいか、ジル」
アルベルトは深々と溜め息を吐いて、
「反魂香の副作用が、コレだ」
忌々しげに俺を睨み付けた。