背中の冷たい汗が止まらない。
社会の情報を効率的に手に入れると
こんな金儲けの仕方が出来るのか?
とカモメに引きずられて行く後藤…
アレヨアレヨと言う間にカシラと交渉するカモメ…
後藤は緊張で背中に冷たい汗が流れる。
交渉はスンナリ行くのか?…
果たして後藤の冷たい汗がはとまるのか?
息もつかせぬジェットコースターの様な展開が始まる。
俺とカモメのおっさんは、今カシラの上総三郎の前に立っている。
カシラの経営する
上総商事、社長室の中で…俺は緊張の為喉は乾き背中に汗がながれて居る。
『で…俺に何の用だ?』と
尋ねられたが、おっさんとの打ち合わせの通り町工場の土地と建物権利書を机の上に差し出した。
『なんだ!こりゃ?町工場の権利書か?』
『は…はい…』
『いまのご時世、土地を転がしても何の旨味もねぇ』
もっともだ…
打ち合わせじゃ…
この後上総さんにこの権利書を買い取って貰う様にお願いする様になっている。
『もしかして、この権利書を買い取れと言うのか?』
俺は震える声で…
『はい…』と返事をする事が、精一杯だった。
『おい!不動産部門の者に急いで土地の評価額を出させろ。』と
部屋の隅に立っている秘書へ手渡した。
急いで書類を手に、部屋を出て行く秘書。
長い沈黙が垂れ籠め長い時間が流れた。
『お待たせしました。』
ドアを開けて一人の男が入って来た。
不動産部門の責任者大村さんだ…
『この物件の土地評価額は、精々高く見積もっても、2000万円が良い所です。』と報告する。
『それじゃ…1500万円で買い取ろう。』
俺はあっという間に500万円の損だ。
ここで…カラスのおっさんが口を開く。
『ちょっとお待ち下さい』
『おい!後藤!
コイツは何者だ!』
緊張で言葉が出ない俺の代わりに、おっさんが…
私共は後藤さんのビジネスの手伝いをさせて戴いております…悪魔堂カモメです。』と
名刺と共に挨拶をした。
『ほう…後藤の後ろに指南役がいるのか?ならば、この書類には何らかのカラクリでも有るのか?』
『流石に切れ者と噂されるお方ですね』
微笑みながらカバンの中から書類を取り出し、上総さんへ差し出した。
暫く書類に目を通していた。上総さんが、驚きの表情を見せる。
『こりゃ!…国土交通省が自治体に発布したばかりの、
都市整備計画書じゃねぇか?』
『そうです。それはコピーですが…
原本は首長の金庫に仕舞われているはずです。
これを元にこの一帯を買い占めれば…
莫大な利益が出ます。』
『しかし…これは…最重要機密のはず』
『私共悪魔堂は、
諜報にかけては、CIAやMI6にもヒケは取らないと思います。』
『で…あんたは…
これが幾らになると践んでる?』
『私共の見積もりでは5倍にはなると思います。』
『おい!今すぐ確かめろ!』
たった今評価額を出したばかりの
大村さんが、新たな書類を手に、部屋を飛び出す。
『後藤と…カモメ?だったかな?あんたも、そこのソファーに腰をかけてくれ』
俺達は、ソファーに腰掛けて待つことにした。
秘書が紅茶を出してくれると
『これは…中々香り高い』と
感心している。
おっさん…落ち着いてやがる…
俺は今だだに…
背中の汗が止まらねぇ
随分と長い時間が過ぎた。…
カチャリ…とドアが開き大村さんか興奮気味に入って来た。
『都市整備計画書の確認は出来ませんでしたが…。
ただ…この計画書の一帯の所有権が…
首長の一族会社や
首長派の議員の一族会社の名義でこの一週間の間に書き換えられています。』
上総がため息をつく
『やっぱり議員や首長の一族で美味しい所を、持って行こうと言う魂胆か?
俺らより悪どいな…後藤…良くやった。
これでこのけんりしょの価値は一億円にはねあがる。
議会に、かけられるのは、これから…
議会の承認を得る頃には、奴等と上総商事の名義で、うめつくされてる。』
まだ上総さんは話を続ける
『後は弁護士に任せても莫大な儲けが出る。
さて…これからが…交渉だ…』
俺の背中に流れる冷たい汗の量が…
一気に増えた。…
透かさず…カモメのおっさんが…
『先ずは…上総さんの金額提示から始めて下さい。』
暫くの間カモメのおっさんの顔を見詰めて…
『3000万でどうだ。…』
俺を制しおっさんが
『妥当な所でしょうね。こちらは、土地を寝かす事無く…
弁護士への経費も掛かりません。
これで手を打ちましょう。了承して戴けますよね?後藤さん?…』
俺は頷く事しか出来なかった。…
あまりに…スンナリと交渉は成立…
都市整備計画書を廻る駆け引きに
呆気に取られ後藤は不安になる…
社会の盲点をつき
金を儲ける奴等の上を行く事ができるのか?
口先の悪魔…
カモメのお手並みに
乞う御期待…