後戻りは、もう出来ない
競艇で儲かった大金で今では金に成りそうも無い物件を
売り付けてくる。
悪魔堂…
いよいよ引き返せないサクセスストーリーの本番開始…
如何なる手段で
契約者…
後藤をサクセスストーリーに乗せるのか?
目が離せない。
ジェットコースターの様なストーリーが始まる。
俺はドリンクバーの珈琲を飲んでいる。
向かいに座るカモメのおっさんと玉藻は、紅茶を飲んでいる。
『ファミレスの紅茶も珈琲も余り美味しいものではありませんね。』
と、苦笑いを浮かべる。
おっさんは、カバンの中から書類の束を取り出し、俺に説明を始めた。
『これは、とある町工場の土地の権利書と建物の権利書です。
今のこの時世、町工場の経営は立ちゆかなく、銀行や、町金、仕舞いには、ヤミ金、借りれる所から借りまくり、後は夜逃げ…
の状態でした。そこを私共の悪魔堂が債権者を集め、借金を肩代わり致しましたのが、
半年前の事です。利子は一切頂かずに交換条件として、この権利書を、私共が、担保として預かりました。
返済期限は半年。
もし…返済出来なければ、権利書の所有権を手放すとの契約も交わしました。
『これが…その権利書です。』
その契約書には、甲がどうとか…乙がどうとか書いてあった。
これをどうしようというのか?
潰れかけの町工場の権利書なんて金にはならねぇ。カモメのおっさん…何を考えているんだ。さっぱり読めねぇ。
『この権利書の期限は昨日でした。ですから、この町工場の所有権は本日付で私共悪魔堂に委譲されました。
融資した金額は、其処に書いてある様に、2000万円…
つきましては。
後藤さんに、この権利書を2000万円で買い取って頂きたいのです。』
怒濤の様に話すカモメのおっさんを制して、俺は尋ねる。
『町工場なんて建物は、価値なんて、ねえだろ?土地も値段が下がってるだろ!』
『そうですねぇ…確かに取得した土地などは一定の期間を置かなければ、転売出来ない様になりました。
これは、バブルが弾けた要因の一つです。
ですから今の貴方には殆んど価値はありません。
貴方の組の上の方に不動産と建築業を営んで居る方はいらっしゃいませんか?』
ヤクザも大っぴらに〇〇組なんて看板は出せない。ご時世だ何らかの形で社会に溶け込まなければいけない。
ダミーの会社であったり。表向きは商社であったりする。
うちの組長は昔堅気の方で、博徒は堅気の人に迷惑を掛けちゃならねぇ!
が、口癖の人だ。
だから…幹部の人達のシノギは真っ当だ。
その中でも一人…
切れ者と噂される人が居る。
その人なら、手広く事業を展開している。
その人は…
《上総三郎》…
カシラにまで、のし上がり徹底した能力主義者。
役に立たない奴はあっさり切り捨て、
使える奴にはどんどんシノギを回す。
『そんな人は…居るには…居るが…』
『そうですね。今から、その人に会いにいきましょう』
玉藻はカラスと合流しなさい。』
おいおい!
確かに上総さんは、事務所に居るとは思うが。
展開が早すぎやしねえか?
俺の疑問を他所に、カモメのおっさんは立ち上がり会計を済ませて居る。
まだ…俺は…権利書を、買い取る事に同意してねぇぞ…
『もう…貴方のサクセスストーリーは後戻り出来ないのですよ。』
今度は玉藻が俺の心を読んだ。
こいつら
一体何者だ!
切れ者上総と
口先の悪魔カモメとの駆け引き…
この物語の重要な鍵を握る有田雄二の登場で
後藤の運命はどうなって行くのか?
次回に乞う御期待!