美しい魂の理由
おい!おい!
それじゃ俺に美味しいだけの話しじゃないか?…
『左様で御座います。 貴方には美味しいだけの話しですよ。』
なっ!…まただ…
また俺が口に出さない疑問に答えやがった!
この世に読唇術があるとも思えない。
しかし現に俺の心を読んでやがる。
『不思議ですか?
不思議ですよね?
貴方の心に答える私が不思議ですよね?』
俺は呆気に取られた。カモメのおっさんは更に畳み込む様に言葉を続ける。『後藤さん』
『何だよ!』俺は気味の悪いこのオヤジに対して、精一杯の声で凄んだ。
『後藤公明さん…貴方が何故、今の状態が、クズだと思っているのか?
それは、貴方がお金を儲ける術を知らない事が
重要な鍵です。』
そうだ。中学を卒業して高校へ進んだがお定まりの
暴走三昧。気付けば二十歳を越えてもパシリのパシリだ。
借金を抱え何時もヒーヒー言っている債権者への取り立てばかりだ。
嫌いなんだよ。!!俺は、薬を捌いたり、弱ぇ女子供を追い込んで食い物にするのが!!
『そこです!!!』
なんだぁ、いきなり…
『ソコなんですよ。後藤公明さん。
貴方の魂が美しい理由は』
まただ…
また俺の心を読んだのか?
『貴方のその美しい魂を美しいままに、手前どもと契約を締結して戴きたいのです。貴方の住まわれる、その世界では、お金が全てなんでしょう?
少しは成功報酬を頂いた方が信用してもらえそうですね。
どうですか?純利の2%では?』
そうだ、そうなんだ…俺らの生きてるこの世界では、名誉や歴史に名を残す事が重要な事では無い。
金を掴んで人の上に立つ事が全てだ。
俺は少しこのおっさんの話を聞いても構わない気になった。