第二話 喫茶【猫も小判も】
あれから三日、憎たらしいことに御守りはしっかりと機能している。先生が得意気に微笑んでいる気がするが、その思考はぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨てたい所存である。
初日に起こった天井を叩く音、それ以外だともう一回だけ。
昨晩、タバコを吸いにベランダに出たら、見下ろした先の路上に立っていた、黒い人影、睨まれた、ような気がした。
それくらいのことだ。
今までに比べれば全然マシだ。でも、アイツにこの御守りが期限付きってこと、地味にバレてそうな気もする。
「はぁぁあ」
この諦観は何度目になるだろうか。胡散臭いのもあるし、あの人(人間じゃない疑問あり)の言うことに従うのも癪だし、紹介先で除霊してもらうのか仕事するのかも不明だし、、、
「行きたくねぇ、、、」
しかも紹介先の【猫も小判も】って店、喫茶店じゃねーか!!
裏の顔があるとか、そういう系?どこのファンタジーだよ!ってツッコミ入れたいけど、怪談じみたファンタジーに巻き込まれてるからなんも言えねーのよな。まじで小説に出来そう。
神社もお寺も門前払い、怪しい拝み屋みたいなのも頼ったけど完全に詐欺だった。馬鹿みたいにホラーの導入じゃん!ってそういえば、あの拝み屋もやばいの抱えてそうだったんだよな、、、拝み屋やってる場合じゃねーだろ、、、
先生みたいに見えるわけじゃないけれど、なんとなく感じはするんだよね。だから一時期オカルトにもハマったけれど、いざ自分がそうなるとなぁ、、、
とか言いながら、別に死んでもいいって思ってる自分もいる。会社に行けなくなってからずっと。違うか、不安定な道を自信を持って選べなかったあの時からずっと、か。
手遅れ一歩手前の死に損ない。だっさ。
ガチャッ、ボッ
タバコに火をつけた。もう賃貸とかどうでも良くなってきた。あ、でも、灰皿どうしよう。しょうがない、ベランダ行くか。
ガラララァ
「はぁぁ」
わかってたけど、もう夕暮れ。まだ間に合うかな。営業時間は気にしないでおこう。とりあえず、この一服を終えてから。
陽射しが煙を照らして色付いた白さを見せる。
「別に死んでもいいけど、殺されんも癪なんだよなぁ」
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空を見た限り、陽はまだ落ち切っていないからセーフだろう。時計を見たら負けだと思う。
場所は歩いて行ける距離だったのが幸いだった。
なんとなくでいつも持ち歩いてるスケッチ用具とデジカメ、そして最近ハマってる日本酒が入ったリュックを背負って家を出た。
アイツに付き纏われてからずっと、外出する時は両耳にイヤホンをつけて音楽を鳴らして歩いてる。
嫌がらせみたいに異常にはっきりと聞こえてくる足音がいつも後ろからするから。
御守りがあったところで不安は簡単に消えやしない。
出来るだけ明るい道を選んで歩いてようやく、辿り着いたのは閑静な住宅街。そこにポツンと明かりが灯ったお店があった。
近づいてみれば看板までしっかりと見える。
喫茶【猫も小判も】
少し古い民家を改装した感じの小洒落た雰囲気のお店。扉には営業中の文字があった。
間に合ったみたいだ。
ガチャ、ギィーーッ。カランカラン。
「いらっしゃいませ」
白髪混じりのオールバックで、スーツにエプロンをつけた壮年の男性がカウンターから柔らかい声をかけてくれた。
案外、普通
怪異の対処をしてくれるという情報のせいで少し身構えてた自分にとっては、取り越し苦労だったようだ。
「こんばんは、あのー、、、
カウンターの方へ向かって足を運びつつ、要件を話そうとしたその時だった。
「来たな!!!!」
上から女性のものと思える大声が響いた。
「偉く遅ぇな、、、クソみたいな理由だったらぶっ飛ばしてあげようかしら?そうだ、、、アレを見せてやろうかな」




