第4話 「お姉さんってその服、どこで買ってるの?」
「お姉さんってその服、どこで買ってるの?」
ついに、彼――香久耶兀斗からその言葉が発せられたのは、私たちが出会って丁度一ヶ月経った頃だった。
兀斗は少し首を傾げその細い指先を顎につけて、いたって真面目そうに問う。
「こないだはニューヨークって書かれたトレーナーだったよね? なに、今日はホーチミン? なに、ホーチミンって。人の名前? いやここにきて都市当てクイズ? 俺への挑戦状?」
喋るわ喋るわ。私が突っ込む暇さえもくれない。
「それなら受けて立つよ。確かニューヨークの前はベルジャンだったよね。いや、てかベルジャンってなんだし。ベルジャンの前はカナダだったから、国名? てかニューヨークは都市名なのにカナダは国名なんだ。え、てなるとなんだ。ニューヨークから都市名になったってこと。それともベルジャンから都市名?」
…………。
「まあいっか」
いいんかい。
「ニューヨークが都市名だからホーチミンも都市名と考えるのが普通かな。どう? ここまでの推理あってる? お姉さん」
私は黙ってこくりと頷く。今の独り言が推理と呼べるものなのかはいささか怪しいが。
「都市名かぁ。ホーチミンねぇ。聞き慣れない音からして英語ではないよね。東南アジアか、ロシア系か…。よし、わかった。人名だ!」
「なんでそうなる?!」
私は思わず声に出して突っ込んだ。
しまった…。と時がついた時にはもう遅かった。目の前にいる少年はその妙に赤い唇をニヤリと歪める。完全に兀斗のペースにのせられてしまっていた。
「今回も俺の勝ち」
そう言って子供らしくガッツポーズする兀斗の正面で私は項垂れた。
地方にある某市立病院。小児外科から救命救急、ドクターヘリまで備えついている病院だ。地方にしては都内と比べて衰えないほど施設が充実していることで有名だが、その歴史は大正まで遡る。当時は小さな療養所だったらしいが、それがどうにかこうにか発展し市立病院まで大きくなった。個人的にその発展に興味はないので説明は省く。
しかしまあ市立であって私立ではないので、建物自体はまあまあ古い。いまだに駐車場の精算機は壊れているし、誰でも簡単に屋上へ行けてしまう。(鍵が壊れている)いいのかそれでと思うのだが、やはり私には関係ないので興味はない。
たとえ事故が起ころうが…。
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